(尾藤 克之:コラムニスト明治大学サービス創新研究所研究員)

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 小泉進次郎環境相は15日、環境省で開いた会議で「育児休業」を取得する考えを表明しました。月内に予定している第1子の誕生後の3カ月間で職員の勤務時間の2週間分を育児にあてます。しかし、「国会議員にはノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)があるので休むべきではない」とする意見や、「国会議員は国民の代表として高い報酬をもらっているのだからおかしい」という意見もあり、世論は割れています。いや、むしろ「炎上」していると言った方がよいかも知れません。

 多くの批判の中で国会議員の議員報酬が引き合いに出されていますが、この扱いは各メディアにおいてかなりバラつきがあり正確な報道がなされていません。この機会に整理してみます。

国会議員の歳費の内訳を理解していますか

 以前、テレビ東京の某番組「永田町特集」に出演する機会がありました。番組では「永田町界隈で暗躍する政治家・秘書・官僚・政治評論家 ココだけの話大暴露」と題して、政治家や、官僚にまつわる暴露話が飛び交いました。出演者は、杉村太蔵氏(元国会議員)、岸博幸氏(元官僚)、伊藤惇夫氏(政治評論家)、筆者の4名でした。

 番組内では、杉村氏が、「手取りが月70~80万円、また、手取りの他に、文書通信交通滞在費というものが毎月100万円支給される。毎月の手取りが70万円として、文書通信交通滞在費100万円を合わせると、年間で2040万円の収入を得ることとなる。任期が6年ある参議院議員の場合は、1億2240万円の収入が、何もしなくても懐に入ってくる」とコメントをしていました。

 杉村氏のコメントは議員としての肌感覚だと思うのですが、分かりやすく解説してみたいと思います。まず現在の議員報酬は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(平成二六年六月二七日法律第八六号)により規定されています。それによれば、各議院の議長は217万円を、副議長は158万4000円を、議員は129万4000円を歳費月額として受けるとされています。つまり、1回生の国会議員でも129万4000円(月額)が歳費として支払われるわけです。

 国会議員は歳費以外に手当てを受けることになります。文書通信費が毎月100万円、期末手当(賞与)が年額635万円、立法事務費などの必要経費が月額65万円、JR特殊乗車券・国内定期航空券の交付や、3人分の公設秘書給与や委員会で必要な旅費、経費、手当て、弔慰金などが支払われます。また、政党交付金の一部が、各議員に支給されます。

 では、1人あたりいくら掛かるのか計算してみましょう。

○基本給1552万8000円(月額129万4000円)
○期末手当635万円
○文書通信費1200万円(月額100万円)
○立法事務費780万円(月額65万円)
○JR特殊乗車券、国内定期航空券(飛行機月4往復迄。例えば北海道選出の議員であれば、東京⇔北海道4往復として4万6000円×往復×4回=36万8000円×12ヶ月=441万6000円/年間)
○秘書給与2100万円(政策秘書900万円、第一秘書700万円、第二秘書500万円と仮定)
○政党からの支給 0~1000万円程度。
合計:67,094,000~77,094,000円と予測(年間)

 当選したばかりの1回生議員でも、この程度の金額を得ることが可能です。さらに、党内の役職によっては公用車も支給され、企業献金や政治資金パーティによる収入が加算されます。詳細は省きますが、小泉進次郎環境相の場合は閣僚ですので、もう少し給与額は増えることになります。

果たしてもらいすぎなのでしょうか

 現行法では公設秘書は3名ですが、多くの事務所では3名では足りないので自費で私設秘書を雇うことになります。私設秘書の人数は異なるものの仮に5名と仮定しましょう。経費を1人あたり400万円と試算して5名と考えても2000万円が固定費としてかかります。交通費や活動費等の経費を考えれば、給与分の2倍(約4000万円)が消えることになります。

 私設秘書の経費は全て国会議員の自腹ですから大変な出費になります。私設秘書の人数が多くなれば更に多くの経費がかかります。さらに、次の選挙に立候補するお金もプールしなくてはいけません。人件費、会議費、選挙事務所費、光熱費、通信費、選挙運動用ポスターなどの印刷費や雑費など、ざっと数千万円~数億円は必要になります。

 スキャンダルが発覚すると、歳費を返納する旨を示唆する議員が出てきます。ところが歳費の国庫返納は、国への寄付行為にあたり公職選挙法に抵触するため認められません。過去において歳費の返納が認められたケースはないはずです。

 国会議員の歳費を減らせ(報酬を減らせ)という意見があります。国会法では「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」と規定されています(国会法第35条)。つまり、勝手に下げることができないのです。

 ただ、議員報酬については、多くの有権者は歳費の額を問題にしているのではなく、歳費に見合った仕事をして国家に尽くしてもらいたいと考えているのではないかと思います。そう考えれば、小泉進次郎環境相の育休取得に際しても仕事としてのアウトプットが出てくれば問題はないと考えられます。また、報酬議論については正しい報道がなされることを期待します。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  議員在職50年 小沢一郎「出世とキャリア」〈1〉

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2019年12月19日、都内で会見した小泉進次郎環境相(写真:Natsuki Sakai/アフロ)