世界50カ国以上を一人旅した筆者が、世界で出会い心に残った食べ物をご紹介。今回は“北フランス料理”です。フランス北部に位置する「Lille(リール)」。その郊外にある「ESTAMINET LE TERRIER」は北フランスの料理を出す小食堂「ESTAMINET(エスタミネ)」です。この小さいレストランで体験できる地元ならではのグルメをご紹介します。


ベルギーとの国境都市リールの北フランス料理って?
フランス料理といえば、朝ごはんならハムとチーズをはさんでベシャメルソースで仕上げる「クロックムッシュ」とか、野菜や肉を煮込んだ「ポトフ」、アヒルやガチョウの肝臓「フォアグラ」を使ったもの、地中海の魚介をふんだんに使った「ブイヤベース」など、様々な食材と料理法が思い浮かびます。さて、ベルギーと国境を接するリールには、どんなグルメがあるのでしょうか。
リールはユーロスターの分岐点

フランス北部ノール県の県庁所在地であるリール。ロンドンとパリ、ブリュッセル間を結ぶユーロスターの分岐点です。そう、フランスの北の玄関口ということになります。

旧市街にある「グランプラス」という重厚な建物に囲まれた広場を中心に、ヨーロッパらしい町並みが広がります。フランスで4番目に人口が多く、芸術と歴史に彩られた街です。

パリからなら列車で1時間、ロンドンからなら1時間30分ほど。そしてブリュッセルなら35分ほど。そして、「ESTAMINET LE TERRIER」は、グランプラスから約10㎞ちょっとの郊外にあるHallennes-lez-Haubourdinというコミューン(自治体)にあります。
「うさぎの巣穴小食堂」という名の一軒家レストランを発見

高い建物と言えば、すぐそばの教会くらいという、のんびりした風景の中にポツンと建つのがこのレストラン。夕方の黄昏時に、温かい灯りが灯っていました。

「TERRIER」はうさぎの巣穴という意味なので、お店の名前は「うさぎの巣穴小食堂」ということになります。そのトレードマークはウサギの後ろ姿です。
アントレ(前菜)に牛の「Os à moelle」骨髄をいただく

おすすめの前菜を聞いてみると、「これだ!」と自信たっぷりに答えてくれたのが牛の骨髄。日本のレストランではほぼお目にかからない食材ですが、ヨーロッパではよく食べられています。それにしても運ばれてきた骨髄はドーンと20㎝ほどの大きさ。圧倒されます。


それをスプーンですくって、パンに塗って食べます。プルプルとしているというよりは、ちょっとザラっとしていますが、口の中で溶ける食感は確かにコラーゲン。丁寧に茹でられているのでなんの臭みもなく、赤ワインによく合いました。こちら、税抜きで9ユーロ(日本円で1100円位)です。
プラ(メイン)は豚の内臓の「アンドゥイエット」を

「Andouillette(アンドゥイエット)」は豚肉を使ったソーセージフランスの地方によって使う肉や調味料が異なるアンドゥイエットがあります。北フランスのものは豚の内臓のみを使います。内臓と言うとどうかなと思いましたが、これは「正統派アンドゥイエット愛好家友好協会(A.A.A.A.A)という団体が、伝統製法を積極的に保護する伝統料理。協会が認定したものにはA.A.A.A.A.と記載されます。

もちろん、「ESTAMINET LE ERRIER」のものもきっちり認定されたもの。味はなるほど、内臓肉のしっかりとした肉質と、旨味が詰まっています。マスタードのソースがよく合います。ブイヨンでしっかり煮こんでから玉ねぎと香辛料と共に腸詰にされるので、こちらもクセのないおいしさでした。税抜きで15ユーロ(1800円位)です。
地ビールベルギービールが楽しめるバーも

入り口から入って一番奥のテーブルでは、女性たちが食事をしながら盛り上がっていました。そして壁にはビールのブランドパネルがびっしり。実は入り口脇にはバーカウンターがあって、バラエティー豊かな地ビールベルギービールも揃っています。北フランスはワインはもちろん、ビール醸造も盛んです。
フランス料理を一人でも気軽に楽しめる
リールの中心部からタクシーで20分位でアクセスできる、かなりローカルな一軒家レストラン。「うさぎの巣穴小食堂」というかわいい名前ですが、北フランスならではの、この地域で誰もが食べてきた伝統料理が本格的で絶品なお店でした。スタッフもフレンドリーなので、一人でも楽しめると思います。

 
ESTAMINET LE TERRIER
住所:43 rue Pasteur 59320 Hallennes-lez-Haubourdin,
電話:33 (0)3 74 11 64 16
営業:【火〜木】11:00~23:00、【金・土】11:00~0:00
定休日:月曜日
HP:https://www.estaminet-leterrier.fr/
[All photos by Atsushi Ishiguro]