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 戦争は国家の威信をかけた戦いである。勝者になるか敗者になるかでその後の明暗が大きく分かれることとなる。

 そのため、戦場で有利に立つために、お金に糸目をつけず、新兵器の開発に全力を注ぐのだ。だが時としてそれは大きな賭けとなる。

 大きな戦果を挙げてきた優れた兵器の影には、日の目を見ない兵器も開発されていたのだ。ここでは実践投入寸前までいったけど、実際には使用されることのなかった10の兵器をその理由とともに見ていこう。

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10. パックルガン(イギリス)


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 イギリス弁護士ジェームズ・パックルが1718年までに発明し特許を取得した、記録に残るものとしては世界初の機関銃だ。精度や射程を損なうことなく、単発式の銃の3倍の速度で弾を撃つことができた。

 苦痛を最大化するために四角い銃弾を射出することも可能とされ、もし有力な軍隊がこれを採用していれば、半世紀後のガトリング砲のように、戦場の風景を一変させていたことだろう。

 しかしパックル砲には、信頼性に欠け、高価という欠点があった。また、いくつもの複雑なパーツで構成されていたことが仇となり、大量生産もできなかった。

 最悪だったのは、当時の戦術にあまりマッチしていなかったことだ。大型兵器ではないが、固定する必要があり、別の場所に移動させるには分解して、再度組み立てねばならなかった。

 こうした欠点ゆえに、結局大きな軍隊での採用は見送られてしまった。

9. ハト誘導ミサイル(アメリカ)


Pigeon Guided Missiles・The Science of Everything

 第二世界大戦期に研究されたミサイルで、ノーズコーンの部分に3羽のハトが入れるような設計だった。

 ハトの前にはスクリーンがあり、そこにターゲットが映し出される。ハトが中央を突けばミサイルは真っ直ぐに飛ぶ。中央から外れたところを突けば、軌道を修正する。こうしてミサイルはハトよってターゲットまで誘導される。

 冗談のような話だが、ハトの訓練はうまくいったらしい。ミサイルの考案者で、ラットの行動実験で有名なハーバード大学心理学者バラス・スキナーは、ハトの物覚えの良さに感銘を受け、二度とラットを使わないと述べたほどだ。

 だが採用されなかった。それはなぜか? レーダー誘導式のミサイルが登場してしまったからだ。

8. コウモリ爆弾(アメリカ)


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 64キロの範囲に同時に無数の炎を降り注がせる爆弾。そんな危険な兵器を思いついたのが、米ペンシルバニア州の歯科医で、ルーズベルト大統領夫人の友人でもあったライル・S・アダムスだ。

 彼は洞窟探検が大好きで、そこに潜むコウモリに強く感銘を受けていた。真珠湾攻撃ニュースを耳にしたアダムスは、ナパーム弾を取り付けた無数のコウモリケースに閉じ込め、それを投下させたのちに飛散させるというアイデアを考案。

 これをホワイトハウスに提出すると、最終的にルーズベルト大統領に承認され、200万ドルの開発予算が付けられた。

 しかし軍はより強力な兵器を求めていた。結局、優先して開発されることになったのは、コウモリ爆弾ではなく、原爆であった。

7. パンジャンドラム(イギリス)


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 直径3メートルほどの車輪を2つ連結した糸車のような兵器で、第二次世界大戦中にイギリス軍が開発。ここに大量に爆薬を搭載した上で、車輪に仕込まれたロケットで加速させて敵陣に突っ込ませる。

 海岸であっても自動車並みの速度で疾走し、ドイツ軍の防衛網をズタズタに切り裂くはずだったが、なかなか思うような方向に転がってくれないという困った欠点があった。

 1944年1月、さほど性能が改善されないまま軍上層部にお披露目をすることに。滑り出しは良好で、芝の上を真っ直ぐに颯爽と加速してくれたが、いよいよ高速に達しようとしたその瞬間、車輪からロケットが外れてあちこちに飛びまくった。

 危うく大惨事になりかけ、戦場を走る自走車輪の夢は潰えた。

6. ハジャイル(イギリス)


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 パンジャンドラムと似たような発想のイギリス軍による実験兵器。飛行機から投下する物資を、パラシュートの代わりにロケットで安全に降下させるようというのが狙いだ。

 レトロロケットのようでいて、火星探査機キュリオシティはこの方法で火星に着地したので、最新技術にも通じるかもしれない。

 ハジャイル(Hajile)という名称は、神への祈りで天から火を降らした預言者エリヤ(Elijah)を逆に綴ったもの。

 初期の実験はコンクリートブロックロケットを取り付けて行われた。最初は散々で、2度の実験でコンクリートブロックの降下速度はまったく低下せず、3度目は燃料を積みすぎて逆に上昇してしまった。

 その後も実験は続けられ、やがては実際の状況に近づけるためにアメリカ軍から2台のジープが寄付されるくらいまで進展した。

 ちなみにその1台は時速48キロで地上に激突したが、もう1台は最小限のダメージで着地することができた――ただし上下逆さまにである。

5. カルチベーター No.6(イギリス)


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 時代遅れの問題を解決するために考案された、最初から失敗が運命づけられていた兵器。塹壕を掘りながら移動するモグラのような装甲車で、鉱山機械や除雪車を参考にしたと言われている。

 味方の兵士や戦車はその塹壕を進めば、危険をおかすことなく敵陣まで進軍できるのがウリだったが、ドイツ軍が展開した戦術は飛行機と地上部隊を連携させた電撃戦であり、塹壕はすでに時代遅れな代物だった。

 当時海軍大臣だったウィンストン・チャーチルが熱心に押し進めたプロジェクトだったが、1943年に破棄された。「責任はあるが、後悔はない」とはチャーチルの弁だ。

4. マウス(ドイツ)


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 ヒトラーもまた奇妙な兵器のアイデアを考案した1人だ。彼が望んだのは、絶対に破壊不可能な超重力級戦車である。こうしてフェルディナントポルシェによって、重量200トンという超巨大戦車が設計された。

 しかしせっかくの新型戦車も、特にドライブシャフトの故障が多いという欠点があった。強力なダイムラーベンツエンジンを搭載していたにもかかわらず、重量が災いして、最高速度はたったの時速19キロしか出ない。

 また厚さ23センチという装甲はいいにしても、接近戦で利用できる機関銃をまったく搭載していないことが問題視された。ナチス上層部はこれを懸念しており、案の定、戦場ではしばしば接近戦に巻き込まれた。 

 当初の計画では150台の製造が予定されていたが、結局2台のプロトタイプしか完成していない。なお、巨体のわりに、その名称は「ネズミ」である。

3. C450 コレオプテール(フランス)


SNECMA C 450 01 Coleoptere
 「甲虫」を意味するコレオプテールは、機体を巻くようにリング状の翼を取り付けた、航空機の歴史に残るような印象的なデザインが特徴。垂直離着陸が可能で、一度飛び立てば音速で飛行できるVTOL機として開発が進められた。

 しかしホバリングの試験では、高度の制御がほとんど不可能であることが判明。その時のパイロットは、エンジンの音を頼りに高度を割り出していたという。またその後の実験機には、縦にスピンするという恐ろしいクセまであった。

 唯一、水平方向の飛行に成功したのは偶然によるものだ。最後となる9回目のテストフライトで、下降の最中に機体が激しく揺らぎ、次いでつかの間だけ水平方向に加速。パイロットは脱出し、機体は大破した。

2. ブルーピーコック(イギリス)


A brief History of: Project Blue Peacock
 イギリス軍がソ連の侵攻から西ドイツを守るために考案した、核地雷の開発コードネームである。

 ライン川区域の地下深くに設置するという前提だったが、困ったことに、地下の低温環境では寒すぎて核爆発を起こすための起爆装置が作動しない恐れがあった。

 そこでケースの中に生きたニワトリを餌と一緒に入れておくという手段が採用された。その体温で起爆装置の作動を確保するのだ。餌は1週間分で、ブルーピーコックの最大寿命も1週間なので、それで十分という判断だ。

 この冗談のような発想のおかげで計画は中断された――のではない。本当の理由は、放射性降下物のリスクと、同盟国に核兵器を隠すという政治的リスクが高すぎたせいだ。

1. オカマ爆弾(アメリカ)


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EvgeniyShkolenko

 強力な催淫剤を散布することで、敵兵士に同性愛行為を促し、混乱させる悪魔の兵器。情報公開法に基づく情報開示請求によって、開発計画が明らかになった。

 計画がまとめられたのは1994年のことで、当時アメリカ、オハイオ州の空軍研究所は750万ドル(約7億5000万円)という催淫性非殺傷兵器開発の予算を申請した。

 その科学的な根拠はまったく乏しい。化学物質によって人間の性的嗜好が劇的に変わるようなメカニズムは知られていないし、人体にはっきり計測できるほど強い催淫効果をもたらす化学物質も知られていないのだ。

 そもそも同性愛行為によって敵軍が混乱するかどうかについての科学的知見もない。それどころか、同性愛であっても優秀な兵士が存在するという証拠ならいくつもある。

  結局、予算はおりず、悪魔の兵器がコンセプトの域を超えることはなかった。なお、オカマ爆弾を研究した空軍研究所には、2007年10月イグノーベル平和賞が贈られている。

written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52286622.html
 

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