チリ領のイースター島(ラパ・ヌイ)には、人面を模した石造彫刻が海に面した高台に並んでいる。これらはモアイと呼ばれており、建造中に放置されたものも含めると約900体もある。
何百年もの間、島の風景を見つめ続けてきたモアイ像は、これらを作ったポリネシア社会の習慣や崩壊を含め、長い間、研究者たちの関心を惹きつけてきた。
これほど大量のモアイ像はいったい何のために作られたのか?像が象徴しているものは何か?様々な説が提唱されるも、その謎は完全に解明されていない。
だが、今回の新たなる発見は、モアイ像に関する理解を大きく変えることになるかもしれない。
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モアイ像の採石場の土壌を分析
モアイ像の90%以上は、ラノ・ララクとにある採石場で作られた。ここは島全体の1%にも満たない凝灰岩でできた火山の噴火口だが、巨大なモアイ像を作るための大量の石はすべてここからのみ採られている。
ここの土壌を分析したテネシー州サウス大学の地質考古学者、サラ・シャーウッドは、ラノ・ララクにあるのは、石だけでないと言う。
ここの土は、意外にもカルシウムやリンがかなり豊富であることがわかりました。つまり、ここの土壌には、植物の成長やその収穫量を高めるために、化学成分的に重要な要素がそろっていることということなのです
モアイ像の採石場そのものが神聖な場所だった
これまでは、この採石場一帯は、モアイ像の生産現場であり、それを島のあちらこちらに運ぶための一時的な置き場だったというのが定説だった。
しかし、この採石場に残された400体近いモアイ像のいくつかは土に埋められ、砦のようながっしりした岩の構造物で支えられている。
これらのモアイ像はもともとここに設置されていたものなのだ。採石場自体が島民にとって神聖な場所であったということを示しているという。
島のほかの場所の土は、急速に疲弊・衰退して、植物に必要な栄養素がなくなってしまっていました。でも、この採石場では、採石作業の過程で出る基岩の小さなかけらが常に入り込むため、水分や自然の肥料、栄養素がフィードバックされるシステムができあがっているのです
豊かな土壌を持つ採石場は農業の聖地
土壌の豊かさもさることながら、採取サンプルの中にバナナ、タロイモ、サツマイモ、カジノキなどの古代の作物の痕跡が見つかった。
これらの証拠はすべて、ラノ・ララクの採石場がモアイの生産地だっただけでなく、当時のラパ・ヌイ社会が必要な食物を育てるためにここの豊かな土壌を活用した、少ない労働力で生産性の高い耕作地だったことを示している。
こうしたデータや、ラノ・ララクの儀式性、巨石の一大原料地であることを考えると、大胆な新説が出てきます。ここの土壌・堆積物自体が、守らなくてはならない貴重な必需品で、生産性の向上を必要とする土地を豊かにするために、ラノ・ララクからが土が運ばれていた可能性があるということです
モアイ像は採石場を見守っていた
それでは、なぜ、モアイも作られた場所である砦の穴に建てられたのだろう?
モアイ像は、祭祀目的で立てられ、豊穣の儀式と関係していているという説があるが、今回の研究者たちの現地調査が、科学に基づいた証拠を提供しているという。
砦のような穴が掘られていたのは言うまでもなく、モアイ像がこの緑豊かな楽園を見守るために建てられた可能性が高いことを示している。
「今回の研究結果は、ラノ・ララクにある像がすべて、石切り場から運び出されるのを待っていたという説を劇的に変えます」UCLAの考古学者ジョー・アンネ・ファン・ティルブルフは言う。
ラノ・ララクに置かれているモアイ像は、採石場そのものの神聖な性質を確実なものにするために、ここにそのまま置かれたのでしょう。モアイは豊穣という考えの中心になるもので、ラパ・ヌイでは、モアイがここにあれば農作物の生産にいい影響があると信じられていたのです
この研究論文は、『Journal of Archaeological Science』に発表された。
References:foxnews / sciencealert.など/ written by konohazuku / edited by parumo
追記:(2020/1/20)本文を一部訂正して再送します。
http://karapaia.com/archives/52286834.html
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