■ 流れるように回す姿はもはや名人の域。円熟味が増した活躍を楽しみにしたい

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ダウンタウンの松ちゃんこと、松本人志がメインを務める「ワイドナショー」(カンテレ系)。この番組での松本の発言がネットニュースに上がることが近年多い。メディアも彼の発言を「待っている」ようにも見えるが、大きな功労者は東野幸治だろう。東野の卓越した「回し」(進行)があればこそ、松本は自らのコメントに集中できている。

2018年10月、イオンモール京都桂川で開催された「大家さんと僕」作品展示会に足を運んだ。「大家さん~」が、 カラテカの矢部太郎の大ヒット漫画であることの説明は不要だろう。その日同時に企画されていたのが、矢部と東野のスペシャル対談だった。

シャイなことで知られる矢部は、想像通り多くの言葉を語ることはなかったが、東野がそれを補って余りあるほどの力を発揮した。スタッフから渡された「情報」の書かれたペーパーにほとんど目を落とすことなく、当日の主役である矢部をしっかり立てた。本の素晴らしさを語り、時に矢部に突っ込んで笑いを増幅させ、とっておきの話を引き出し、一度も噛むことなく30分ほどの対談をこなした。鮮やかだった。正直これまで大きく意識してこなかった東野幸治の存在感が一気に膨らんだ。矢部の、東野に大きな感謝を寄せる気持ちがその表情から読み取れた。

関西局発信の番組においても、司会者として大活躍の続く東野幸治。2006年から続く「お笑いワイドショー マルコポロリ!」(カンテレ)もそのひとつだ。ひな壇に並んだ、いわゆるアクの強い芸人たちの良さをきちんと前に出してやりつつ、流れるように回す姿はもはや名人の域でさえある。

大切なことを最後に。最近の東野には「品」が漂ってきた。少し場が下品な展開になったとしても、そこに埋もれることがない。円熟味が増した活躍を今年も楽しみにしたい。

【著者プロフィール】影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 メディア創造学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、ABCラジオ番組審議会委員長、上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事。著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」(実業之日本社)、「テレビのゆくえ」(世界思想社)など。(関西ウォーカー

元毎日放送プロデューサーの影山教授