photo by El Taller del Bit via flickr(CC BY-SA 2.0)

Windows 7サポートが終わった
 2020年1月14日に、Windows 7 のサポートが終了した。1月15日以降は、サポート終了を案内する全画面での通知が表示されるようになる。

 Windows 7 の登場は2009年だ(参照:ITmedia NEWS)。登場から10年以上経っている。入れ替わりの速いIT業界では、非常に古い OS だと言える。

 2009年といえば、スマートフォンAndroid が日本に上陸した年である(参照:ケータイWatch)。それからの世界の変化を考えれば、Windows 7 の登場時期がいかに昔なのかがよく分かると思う。

 このサポート終了は突然決まったわけではない。日本マイクロソフトでは、以前から周知をおこなっている。この1年だけでも、サポート終了まで1年サポート終了まで半年サポート終了まで3週間と、情報公開を続けてきた。

 IPA(情報処理推進機構)でも2年前から、サポート終了に合わせた計画的な移行を促している。また、サポート終了にともない、各ニュースメディアが、こぞってニュースを流している。

 OS のサポート終了はなぜ重要なのか。新しい OS への移行はなぜ必要なのか。購入したパソコンは、なぜ壊れるまで使えないのか。そうしたことを話そうと思う。

◆OSの世代交代
 私たちは、Widows などの OS を日々利用している。この OS は、オペレーティングシステムOperating System)の略である。OS は、コンピューターシステム全体を管理して、各種アプリケーションの共通基盤を提供するための、基本プログラムだ(参照:コトバンク)。Windows は、そうした OS のひとつで、時代に合わせて、何度も世代交代してきた。

 Windows は、Windows 10 までは、数年に一度、新しいものが登場していた。なぜ、基本的なプログラムを新しい物に置き換えるのか。それはこれまで、コンピューターネットワークの世界が、めまぐるしく変わってきたからだ。

 初期の頃、最も大きかったのは、パーソナルコンピューターの基本性能の大幅な進化だろう。「ムーアの法則」と呼ばれる半導体業界の経験則がある。この法則は、インテル社創設者のひとりであるゴードンムーア博士が1965年に提唱したもので、半導体の集積密度が約18ヶ月で倍増するというものだ(参照:コトバンク)。

 この法則に従えば、5年で10倍、10年で100倍の進化を遂げる。そうした時代に、数年前の環境に合わせて作った OS が、最新のマシンで最大の能力を発揮できるだろうか。ハードウェアの進化に合わせて OS も進化させるべきだろう。

 CPU の速度が上がり、メモリの量が増えれば、プログラムの内容や書き方は大きく変わる。より効率よく、高速なプログラムを書くことができる。これは、火事が起きた時に、小さなバケツで火を消すのか、大量に水をまけるホースで消すのかの違いに似ている。道具の性能が変われば、やり方が根本的に変わる。プログラムでもそうしたことが起きる。

 昔と今の環境を比較してみよう。昔の非力なマシンでは、640ドット×480ドットの画面に、ウィンドウを2、3個出せば限界だったかもしれない。それが、高解像度ディスプレイに、数十のウィンドウを出して、全てのウインドウでアニメーションをおこなうことが可能になっている。前者の OS を作っていた頃に、後者の OS の使い方を想定するのは難しい。そのため作り直しが必要になる。

 また、ネットワークの進化も、OS の作り直しの重要な要素になっている。電話回線を使い、ダイヤルアップ接続でデータをやり取りしていた時代と、太い回線で常時接続をしている時代では想定すべきことがまるで違う。前者の時代に、光ケーブルでの接続が前提のネットワーク機能を開発するのは難しい。そうした意味でも、OS は作り直さなければならない。

 これほど情報技術が進化しなければ、OS の置き換えも頻繁には発生しなかっただろう。しかし現実の世界では、10年経てば世界が激変するほど、コンピューターの環境は変わり続けている。

◆OSの乗り換えの必要性
 今述べたように、古い OS は、現在の環境に合わせて作られていない。だから、時代に合わせて置き換えが必要になる。

 そうは言っても、「古いマシンで使うから、OS の移行なんて必要ない」と考える人も多いだろう。その意見も一理ある。ネットワークにつながず孤立して使うのなら、古くて使い難いという点を除けば、大きな不都合は生じないだろう。

 しかし問題は、現在のコンピューターは、ネットワークにつながることが前提になっていることだ。コンピューターを使って、インターネットを見ない人はいないだろう。メールも使うだろう。最近のアプリケーションは、自動でアップデートしたり、クラウド上にデータを置いていたりする。多くの場合で、ネットワークと常時接続していることが前提になっている。そうした環境で、インターネットにつながず、孤立させてパソコンを使うことは現実的ではない。

 ネットワークにつないでいると何が起きるのか。悪意のある攻撃にさらされる。OS やアプリケーションは完璧ではない。多くの脆弱性がある。これは、それらのプログラムが欠陥品だということではない。作られた時には予期しなかった抜け穴が発見される。犯罪者が考えた最新の方法で攻撃される。そうしたことが常に起きる。

 そこで OS やアプリケーションは、脆弱性が発見されるたびにアップデートをおこなう。利用者が多い OS やアプリケーションほど、抜け穴を探す人や、攻撃方法を考案する人が多い。Windows などのOS。Google Chrome のようなWebブラウザ。そうした利用者の多い OS やアプリケーションは、絶えず脅威にさらされている。そのため、OS やアプリケーションの提供側は、頻繁なアップデートをおこなう。

 これは、城塞都市を守るのと同じだ。そこに多くの富が蓄積されていれば、隣国や盗賊からの襲撃にさらされる。アップデートは、それらを守る衛兵の増員や、警備体制の見直しのようなものである。

 城塞都市の警備が無料でできるわけがない。そこには当然コストが掛かる。OSの販売価格。アプリケーションから得られる収益。そうしたものを利用して、コストを捻出して警備を続ける。しかし、OS や アプリケーションシステム自体が古くなれば、コストが増大する。どこかでリセットして、最新のものにしなくてはならなくなる。これは、老朽化した城壁を建設し直すようなものである。

 Windows では、最新の Windows 10 にリソースを集中している。10年以上前に出た Windows 7アップデートを続けるのは非効率なので終了する。これは当然の選択だろう。その結果、何が起きるのか。警備兵の補充がない城塞都市が残される。それが2020年1月15日移行の Windows 7 の状態だ。

 しばらくは、これまでのアップデートで攻撃を防げるだろう。しかし、新しい攻撃手法が開発されても、それを防ぐ方法は導入されない。攻撃され放題になってしまう。いずれ Windows 7 という城塞都市は落とされてしまうだろう。

 それでも、Windows 7 のままでよいという人もいるだろう。「わざわざ自分が攻撃されるはずがない」そう思っているかもしれない。しかし、その考えは極めて危険だ

 インターネット社会になって以降、犯罪の仕方は大きく変わった。他人とつながるコストが大幅に低下した。

 ネット時代以前は、犯罪の被害者を個別に探して、犯行におよばなければならなかった。しかし、ネット時代以降は違う。処理を自動化して、警備体制に穴がある場所を見つけたら、プログラムに攻撃させる。そうしたことが可能になった。

 こうした仕組みを現実世界の犯罪に当てはめてみよう。プログラムが無差別に電話をかけて、その電話がつながったら、自動でロボットが送り込まれて、家のなかの貴重品を盗むようなものだ。

 現実社会ではありえないが、コンピューターの世界なら起こりうる。そうした攻撃を専門にする犯罪集団が世界に多数ある。サポートが切れた OS やアプリケーションを使い続けると、そうした悪意ある攻撃者たちの到来を、ノーガードで待つことになる

Windows 7シェア、移行の難しさ
 サポートの切れた OS を使い続けることの危険性を書いた。しかし、現実問題として、OS の移行は難しい。現在の Windows 7シェアはどのぐらいなのか。2019年の数字を見てみよう(参照:Operating system market share)。

 2019年1月の時点で37%、12月の時点で26%となっている。約1/4のコンピューターが、まだ Windows 7 だ。1月に大幅に数字が変わらなければ、世の中の 1/4 のコンピューター犯罪者たちの脅威にさらされることになる。

 古い OS を使っている人がこれほどいる状況を、Microsoft も無視できないでいる。一部のWindows 7 ユーザーに、セキュリティアップデートを提供するという発表もしている。条件を満たすユーザーは1年間無料、その後は有償で徐々に金額が上がっていく(参照:TechCrunch Japan)。

 しかし原則は、新OSへの移行である。この機会に最新の OS に変えた方がよい(参照:Windows 10 のダウンロード)。また、あまりにも性能が低いパソコンを使っている場合は、Windows 10 が快適に動くパソコンに買い換えるべきだろう。

 どちらにしろ、ノーガードパソコンを使い続けるのは危険だ。早めに手を打つに越したことはない。

<文/柳井政和>

【柳井政和】
やない まさかず。クロノスクラウン合同会社の代表社員。ゲームアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社レトロゲームファクトリー』。2019年12月Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。

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