約40万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したとみられるネアンデルタール人だが、最近の研究によりその秘密が徐々に明らかになりつつある。これまで考えられているよりずっと高度なスキルを持っていたようだ。
その立ち姿は私たちとそれほど変わらず、直立して歩いたことも分かっている。それどころか、ヨーロッパではしばしば海に潜ったりもしていたという。
イタリアにあるネアンデルタール人の遺跡で発見された171点の貝殻を分析したところ、海底で手に入れた貝を道具として利用していたらしいことわかった。それは現生人類(ホモ・サピエンス)がこの地に到着し、漁業を始めるずっと以前のことである。
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洞窟で発見された7万年以上前の貝殻製の道具
貝殻が発見されたのは「Grotta dei Moscerini」という洞窟だ。ここが初めて調査されたのは1949年のことで、発見された遺物は7万年以上前――すなわち現生人類がまだヨーロッパ全土に定着していない時期のものだった。
残念ながらこの洞窟に入ることはもはやできない。しかし、これまで発見された171点の貝殻からは、ネアンデルタール人がこれまで考えられていた以上に有能であったことが明らかになっている。
貝殻は道具として利用されていたばかりか、その4分の1までが海底から採取されたものであるらしいのだ。
海底から採取された生きた二枚貝
どれも地中海で見られるヨーロッパワスレ(学名 Callista chione)という二枚貝で、研究グループは、縁の形状・光沢・付着したフジツボなどの特徴から、海岸で採取されたすでに死んだ状態だったものと、海底から生きたまま採取されたものとを区別してみた。
たとえば、「海で生きていた貝殻には光沢がある」のに対して、嵐や海流で浜に打ち上げられたものは、「日光や砂のためにくすんで、光沢がない」と米コロラド大学の考古学者パオラ・ヴィラ氏は説明する。
また薄く、鋭い貝殻の多くは叩いた痕跡であるという。つまり、その中身を食べていたかどうかははっきりしないにしても、ネアンデルタール人がそれを道具として利用していたらしいことが窺えるのだ。
ネアンデルタール人は泳ぎ、釣りをしていた?
今回の発見を含め、ネアンデルタール人が貝を求めてただ水の中に入ったわけではないことを示す科学的知見はますます増えている。同様の遺跡や解剖学的な研究からは、彼らが日頃から2~4メートルほどの浅瀬で素潜りをしていたらしいことが示唆されている。
たとえば昨年発表された研究は、ネアンデルタール人の外耳道に極端な骨増殖の跡が発見されたと伝えている。これは少なくともヒトにおいては、冷水にさらされたときにしばしば見られる現象だ。
またフランスでは彼らが淡水で釣りをしていたらしい科学的証拠すら発見されている。
なぜわざわざ海に潜ったのか?
潮干狩りと比べると、海底に埋もれた貝を採取するには時間もエネルギーもかかる。ネアンデルタール人があえてそのようなことをした理由として、研究グループは、海底の貝は浜に打ち上げられたものよりも厚みがある点を指摘する。
そうした特徴は、道具として利用するには都合がいいものだ。ゆえにネアンデルタール人が求めていたのは、ただの二枚貝ではなかったのだと推測できる。
また今回の研究では、洞窟の遺物の中からおそらく道具を磨くために利用したと思われる軽石まで初めて発見された。これは付近の火山からナポリ湾まで流れ着いたものであるようだ。
こうした手がかりを勘案すると、ネアンデルタール人の中には水産資源を手に入れるために海に潜っていたらしいと推測できるのだという。
References:sciencealert / theguardianなど/ written by hiroching / edited by parumo
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