■カブレースの出場が「校則違反」として活動自粛を言い渡されたが…

●署名数は3156人に拡大した

静岡県伊豆市の総合高校にある「原動機研究部」の存続について、その後の様子がわかった。同部は年間計画にないレース参加の責任などを問われ、事実上の廃部を宣告されたまま、新年度を迎えようとしている。今年度中に処分が撤回されない限り、新入部員の募集もできずに名実共に廃部になってしまう。

そこで部員たちは継続を願い、『私たちが正式に部活動として活動することについての請願』署名活動を開始した。地元の商店街や東京オートサロンなどで1月17日までに集めた署名は1894人分。それが1月21日には3156人分に増えた。

詳細画像はこちら 東京オートサロン2020で行われた署名活動

署名は学校の指導だった。自分たちの活動が支持されると思うなら賛同者の署名を集めるべきだ、少なくともその数は生徒数と同じでなければだめだ、という趣旨だった。17日に部員たちは集めた署名を持参したが、「人事異動などで忙しく時間がとれない」と、学校が受け取りを拒んだことで、さらに多くの署名が集まることになった。

学内での部活を制限され、学外で活動せざるを得なかった部員が、いかに学外で力強い支援を受けていた、ということになる。実際、部員は分解整備などで使う作業着や軍手の供与や車両の提供、必要な専門知識を複数の企業から受けていた。

●卒業生がサポートするから部活継続を

1月20日16時、再び署名を携えて部員の姿は校長室にあった。傍らには3156人分の署名と2019年度の活動報告があった。年間の活動報告を、モータースポーツで作成するのは珍しいことではない。プロ・スポーツが基本なのでシーズン中の自分の活動を公表することは、むしろ当然なのだ。ただそれも、まず聞いてもらえなければ役に立たない。

詳細画像はこちら 署名が学校に提出された

校長室には学校長ら管理職と部員、保護者に加えて、伊豆市の市会議員が立ち会ったという。議員が部活の存続に立ち会うのは、それだけ教師と生徒の意思疎通に注目する人たちがいるということだ。

学校はその期待に応えた。原動機研究部の活動について生徒の話を、学校長が長時間耳を傾けることは初めてだった。話し合いは約2時間に及んだという。部員は19年度の年間活動状況を写真を添えたレポートにまとめて、日頃の活動でどうやって技術を向上させてきたかについて語った。また、8月のエコレースになぜビジネスバイクで出場することになったかなどの経緯を説明した。この8月のレース出場が、バイクの運転を禁じた校則に触れるため部活として参加することはできない。個人として参加しても結果は同じ、と言い渡されていたからだ。

ほかにも原動機研究部の活動継続には、多くの解決しなければならない問題がある。部活を継続させるためには、専門的な知識を持つ外部顧問の採用が必要だ。生徒の安全を保った活動が継続できるという確信が得られないと、再開は難しい。この外部協力がどこまで得られるかだ。

部員は部活を認められたい一心で、2020年度の年間活動計画も持参した。そこには卒業したOBも参加してサポートすることが表明されていたという。

学校長の話し合いに臨んだ関係者の1人は
「すべてが解決したわけではないが、活動について学校長は興味を持って聞いてくれた」と、語った。

卒業シーズンを目前に控えて部活は復活できるのか。学校と部員の話し合いは始まったばかりだ。

(中島みなみ)

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