現在放送中のドラマ『知らなくていいコト』で主人公の週刊誌記者・真壁ケイトを演じる女優の吉高由里子。2017年の『東京タラレバ娘』から『正義のセ』、『わたし、定時で帰ります。』に続き、4年連続での連続ドラマ主演となる。どの作品でも吉高は共感を呼ぶキャラクターを好演し、評価を得ている。充実した現在の活躍ぶりだが、そこには吉高の仕事に対する心境の変化が大きく影響しているようだ。

【写真】透き通るような美しさ…吉高由里子撮り下ろしフォト

■ 地下駐車場で張り込み3日間…衝撃受けた雑誌記者の世界

 吉高が演じるケイトは、自身の出生の秘密に不安を抱きながらも、「週刊イースト」の特集班記者として、政治家の不正から芸能人のスキャンダルまでスクープを狙いバリバリ働く敏腕記者だ。吉高は「先日、地下駐車場に3日間も張り込むシーンの撮影をしたのですが、こんなに待つのか…と驚きました」とあっけらかんと笑う。

 精神的にもタフさを要求される仕事だと感じたようで「ある意味で理性や正義感、使命感などいろいろなことを考えるとぐちゃぐちゃになってしまう。感覚を麻痺(まひ)させないとできない仕事かも」と心境を語る。

■ 「試されている」 オリジナル脚本への期待と不安

 作品は脚本家・大石静による完全オリジナルだ。しかもケイトのキャラクターは、吉高に当て書きしたという。吉高は「当て書きほど怖いものってないんですよ」と苦笑いを浮かべると「いやあ、結構(重岡大毅演じる野中)春樹への当たりが強かったり、急に女々しくなったりと、感情のふり幅が大きくて…。大石さんは、私のことどう思っているんだろう」とつぶやく。

 続けて吉高は「これは試されているのかな…とかいろいろ考えながらやっています。でもオリジナルだけに、オンエアが進むにつれて生まれてくるものもあるだろうし、反響によって新しい話ができるような、視聴者と一緒に連動していくモノづくりができるのは楽しみですね」と連続ドラマならではの期待に胸を膨らませる。

■ 仕事に向き合う気力がなくなり…休養を経て心境に変化

 前述したように本作で4年連続ゴールデン・プライム枠での連続ドラマ主演を果たした。演じたキャラクターも『東京タラレバ娘』ではイマイチ売れない脚本家、『正義のセ』では2年目の若手検事、『わたし、定時で帰ります。』ではバランス感覚に優れたウェブディレクター、そして本作では週刊誌記者とバラエティに富んでいる。吉高は「今はちゃんと作品に対して向き合う時間や準備する時間を作ってもらえる環境のなかで仕事ができています」と充実感をにじませる

 そこには“女優業”に対する思いの変化もあるようだ。「朝ドラ(2014年放送の『花子とアン』)が終わったとき、どうしても仕事に向き合う気力がなくなって『少し仕事を休みたい』って話をしたんです。そのとき、所属事務所が『1年間休んでいいよ』と快諾してくれて。海外に一人で行ったり、自由に過ごしたりしていたんです。でも冷静に考えると、働き盛りの26~27歳ぐらいの人間が休みたいなんて言っても『いいよ』なんて許してくれる会社ってないですよね。いい会社だなと思って『やっぱり働きます』って…。タイミングもあって2年ぐらい間が空いてしまったのですが、そこから今のようなペースで仕事ができるようになりました。すごくありがたい環境でやらせてもらっています」。

■ 記者という役柄を通じて“価値観の多様性”を痛感

 本作で記者という仕事に向き合い、物事に対する感度も変わったという。「この話をいただいたときから、家に帰ると夜の10~11時にやっているニュースを見るようになりましたし、世の中でなにが起きているのかということにも、自然とアンテナを張るようになっています」と日常の変化も明かした。

 「ネットの記事を見ていても、1を5や10にするのはまだしも、ゼロを1にしているようなものも見受けられます」とフェイクニュースを嘆くと「こういう役柄を演じることで、正義感や信念ってなんだろうとか、価値観の多様性を痛感します」と語った吉高。自分にとってなにが必要で、なにが不必要なのか。タイトルになっている「知らなくていいコト」と「知るべきコト」について考えさせられる物語の今後が楽しみだ。(取材・文:磯部正和 撮影:松林満美)

 ドラマ『知らなくていいコト』は日本テレビ系にて毎週水曜22時放送。

ドラマ『知らなくていいコト』吉高由里子インタビューカット  クランクイン!