冬の味覚を代表する食材の一つが「カニ」ですが、ネット上で「福井県民はカニの食べ方を学校で習う」という投稿が話題になっています。福井のカニといえば、ズワイガニの高級ブランド「越前ガニ」。SNS上では「福井すごすぎる、食べたい」「給食で出るの?」「カニアレルギーの人はどうするんだろう」などさまざまな声が上がっています。県の担当者に話を聞くとともに、他県の“豪華給食”の例も調べてみました。

地元食材知ってもらい、郷土愛育む

 福井県農林水産部水産課の担当者に聞きました。

Q.「福井県ではカニの食べ方を学校で習う」という情報があるのですが、事実でしょうか。給食の献立ですか。

担当者「カニの食べ方を県内の全中学校で、3年生を対象に教えているのは事実です。ただ、給食ではありません。授業の一つであり、『総合的な学習の時間』で実施している学校が多いと思います。2010年から毎年、主に11月に行っており、1人1杯ずつカニを食べられます」

Q.なぜ、カニの食べ方の授業があるのでしょうか。

担当者「福井県は海が近く、水産業が盛んな県ですが、最近の子どもたちは魚をあまり食べません。魚離れを防ぐため、『地元にこんなおいしい水産物がある』と知ってもらいたいと授業を始めました。

越前ガニは、福井県の『県の魚』にも指定されている特産物です。地元の特産物である越前ガニを食べてもらい、知ってもらおう、ひいては『福井はいいところ』と郷土愛を育むところまでいけたらいいな、ということで始めました」

Q.カニは高級食材と思いますが、1杯いくらくらいのもので、費用はどのようにしているのでしょうか。

担当者「福井県漁業協同組合連合会さんから購入しています。予算上は1杯500円ですが、その都度協議しています。総額四百数十万円になりますが、県予算で計上しています。

ちなみに、授業で出しているのは『セイコガニ』と呼ばれるメスの越前ガニです。オスは価格が圧倒的に高いので、さすがに全員分は無理です(笑)現実的に可能な範囲で提供しています」

Q.授業の流れを教えてください。

担当者「教えるのは、甲羅をお皿代わりにして、ほぐした身全部を盛り付け、それから食べる、という食べ方です。まず、食べ方を収録したDVDを見てもらい、その後、ゆでたカニを自分たちでさばいて実際に食べてもらいます。

講師の派遣を要請された学校には県職員が行くこともありますが、スケジュールが合えば漁協の女性部、いわゆる『浜のおばちゃん』に来てもらいます。教壇に立ってカニをさばいてみせてもらい、それを見ながら、生徒は同じようにさばいていきます」

Q.カニはアレルギーのある人もいます。その場合はどうするのでしょうか。

担当者「アレルギーのある生徒には、カニの代わりに県内の業者が製造している高級サバ缶を提供します。サバも福井県に根付いた魚ですから」

Q.子どもたちの反応は。

担当者「福井県の子どもでも、カニを自分でほぐしたことがない子は多く、最初は手順が分からないことも多いようです。ただ、手取り足取り教えて、手間暇かけて皿に盛り付けた後は、とても喜んで食べています。さばいている間は静かですが、食べているときは『おいしい』と言いながら、ワイワイガヤガヤと楽しんでくれているようです」

松阪牛」が給食に出る地域も

 1月24日~30日は「全国学校給食週間」ですが、この時期に合わせて、地元の高級食材を給食に採用する地域もあります。三重県松阪市教育委員会給食管理課の上山孝一課長に聞きました。

Q.松阪市では、学校給食に松阪牛を使ったメニューが出ていると聞いたのですが…。

上山さん「市内の全小中学校で、2007年度から年1回実施しています。全国学校給食週間の時期に合わせているので、初回は2008年1月でした。毎年、『松阪牛のすき煮』という、すき焼きを給食風にアレンジした料理を出しています」

Q.なぜ、松阪牛を出しているのでしょうか。

上山さん「全国的、世界的にも有名なブランドである松阪牛ですが、高価な食材でもあり、地元に住んでいてもなかなか口にすることが少ないのが実情です。『子どもたちに地場産品を食べてもらいたい』という思いから始まりました。一部の学校で、総合的な学習の時間に松阪牛のことを学び、『給食で松阪牛食べてみたい』という声が上がったこともきっかけの一つでした」

Q.松阪牛は高級食材です。近年の食材価格高騰で給食費の維持が厳しい市町村が多いようですが、松阪牛の使用でほかの日の献立が少なくなるなど、影響することはないのでしょうか。

上山さん「影響が出ないようにしています。給食費は月額いくらでご負担いただいており、確かに松阪牛を使うとその費用はかかりますが、月間、あるいは年間を通して予算内に収まるように献立を工夫しています。松阪牛の提供によって、ほかの日の献立が寂しくなることはありません」

Q.子どもたちの反応は。

上山さん「年1回のことですので、特に高学年は毎年楽しみにしているお子さんが多いと聞きます。毎月、学校を通じて給食の献立表を配布していますが、1月の献立表を見て楽しみに待っている子もいるようです」

Q.今後も継続していく予定でしょうか。

上山さん「今のところ、継続できる限り継続していきたいと思います。地元の食材を知ってもらい、食育や地産地消の推進にもつなげていきたいと思います」

オトナンサー編集部

福井では、カニの食べ方を学校で…?