液体のりの主成分が、がんの放射線治療の効果を大幅に向上させることを東京工業大学が発表した。同主成分の液体のりとして朝日新聞に掲載された「アラビックヤマト」が注目を集め、Twitterには液体のり自体を飲むなどの投稿もみられる。これを受けて「アラビックヤマト」を製造・販売するヤマトは、「本来の目的以外の誤ったご使用はおやめください」と呼びかけている。


東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の野本貴大助教と西山伸宏教授の研究グループは、液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)を、放射線療法の一種である中性子捕捉療法用のホウ素化合物に加えるだけで、治療効果が大幅に向上することを発見。マウスの皮下腫瘍をほぼ消失させることに成功した。従来の方法では治療困難ながんに対する革新的治療法として応用が期待されるとしている。


このPVAが主成分の液体のりとして「アラビックヤマト」を朝日新聞が掲載。Twitterでは、身近な文房具が医療分野でも応用が期待されることに驚きや称賛の声が相次いでいる。中には「のりだけ飲んだり塗ったりする人出そうだな」「『液体のり療法』が出てくるのも時間の問題」「好奇心アラビックヤマト200ml飲んだ」といった投稿もみられる。


これを受けてヤマトは23日、ホームページにコメントを掲載。「医療分野への可能性が液体のりの主成分PVAにあることに大変驚いているとともに、明るいニュースに大変喜ばしい限り」としつつも、Twitterに投稿されているような「アラビックヤマト」の利用法などについては、「一般消費者の方の本来の目的以外の誤ったご使用はおやめくださいますようお願いいたします」と呼びかけた。


PVAを用いた研究としては、白血病などの治療で重要な造血幹細胞の増幅に成功したことが東京大学と日本医療研究開発機構によって2019年5月に発表されている。この時も、細胞を培養できた液体のりとして「アラビックヤマト」が取り上げられ注目を集めた。

アラビックヤマト