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ベーシックカーの基盤となった初代ゴルフ

photo:Koichi Shinohara(篠原晃一)

セダンの起源をはっきりと特定することは難しいが、今日まで続くハッチバック車の雛形となった1台ははっきりとしている。

【画像】懐かしのディテール 取材した2代目VWゴルフ【実写】 全37枚

1974年5月に発表された初代フォルクスワーゲン(VW)ゴルフがそれである。

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直線的な造形によってすっきりした見た目と実用性を両立したゴルフI。FF/2ボックスというゴルフのスタンダードは初代で確立され、歴代のモデルに受け継がれている。

60年代の終わりごろ、大衆車メーカーは将来の小型車の基盤を模索していた。

イギリスBLMCはミニの後継を模索していたが、これといった決定打がなかった。フィアットはリアエンドに置いていた横置きのパワートレインがそのままミドシップやFF車に転用できる可能性に気づきはじめていた。

一方戦前からビートルことタイプ1を作り続けてきたVWは、いよいよリアエンジン・レイアウトにも、空冷水平対向というエンジン形式にも限界を感じ、水冷エンジン縦置きFFのK70とパサートをデビューさせ、その後横置きの新型車に活路を見出す。

横置きFF車の代表と言えば70年代でもミニの存在感が大きかった。だがミニとゴルフにはトランクスルーの荷室以外にも違いがあった。

究極のミニマムを追求したミニに対し、ジウジアーロがパッケージング全体を手掛けたゴルフは、4ドアを許容し、新時代のベーシックカーに必要とされる十分なスペースを持ったCセグメント・ハッチとして作り込まれていたのである。

時代の勢いに乗った2代目VWゴルフ

ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが手掛け、コンパクトカーと呼ばれる新たなクラスを作り上げたVWゴルフ。

新時代のFF/2ボックス車はビートルの後継として受け入れられ、デビューから2年以内に50万台以上の大ヒットを記録した。

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ゴルフ2の最強グレードであるGTi。ゴルフ2ではツインカムエンジンを搭載した。グリル周りに赤いラインを入れる伝統は7代目ゴルフでも健在だった。

市場にはゴルフに当て込んだライバルたちが次々と登場していたこともあって、1983年に行われたゴルフ自身の代替わりは当たり前のようにキープコンセプトが貫かれていた。

2代目のキャッチコピーは「Von Golf zu Golf”(ゴルフからゴルフへ)」。ゴルフIIのスタイリングはVW社内のデザイン部門が手掛けたもので、全長が250mm、全幅が50mm、ホイールベースが70mmほど拡大された他、空力実験の結果を受けて全体的に丸みを帯びたものになっていた。

高度成長の波に乗り、再び大成功を収めたゴルフII。このクルマのトピックは時代に先んじた生産設備にもあった。

VWのウォルフスブルグ工場に新設されたゴルフIIの製造ラインはことごとく機械化されており、ロボットをコンピューターが管理し、それをわずかな人数で監視するという今日の自動車製造にも通じるスタイルがとられていたのだった。

クオリティを高め、利益率を上げる努力もそこには含まれていたのである。

ジェッタやシロッコ 幅広いラインナップに

ゴルフを起点としてVWがとったモデルラインナップの拡充も、今日よく使われている「モジュラー化」をよく現わしている。

2ボックス・スタイルのゴルフをそのままノッチバック化した4ドアセダン、ジェッタIはゴルフと同時期に開発されていたし、ゴルフのボディを少し低め、スポーティに仕立てたシロッコもゴルフIの時代からの派生モデルだ。

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ゴルフIIと同じタイミングで開発されたノッチバックモデルのジェッタ。四角いヘッドランプが特徴となっている。6代目、7代目のジェッタは北米市場で販売されている。

またスポーティ・モデルのGTiは、初代ではシングルカムだったが、この2代目ではDOHCエンジンが与えられ、より完成度が高まっていた。

変わり種としてビスカスカップリングのセンターデフを備えたフルタイム4WDモデル、ゴルフ・シンクロもラインナップされている。シンクロは今日に続くクロスオーバーSUVの先駆けともいえる存在だ。

一方、オープンモデルのゴルフ・カブリオは、初代と同じボディのままゴルフIIの生産終了(1992年)まで作り続けられた。

これは製造がVWではなくカルマン社が受託していたこと、そしてかなり大掛かりなボディ補強を施すなどオープンボディ化にコストが掛かっていたからである。

90年代のゴルフ・カブリオはそのクラシカルな雰囲気と相まって、わが国でも人気が高かった。

もうすぐ8代目がデビューするゴルフ。これを基幹モデルとするVWの世界観は、IIの時代にはほぼ確立されていたのである。


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