はーこのSTAGEプラスVol.74は、あの傑作ミュージカルの映画版「キャッツ」。

【写真を見る】人間に捨てられた若く臆病な子猫:ヴィクトリア

ものすごく期待していた、『キャッツ』映画版。劇団四季が85年、旧国鉄の西梅田コンテナヤード跡地にテント式の“キャッツ・シアター”を建て大阪に初登場した時から、92年、01年、16年の全4回公演を観てきた。四季の『キャッツ』は昨年、日本上演36周年、通算公演回数10000回を突破し、現在もロングラン公演中だ。

近年、『ライオンキング』などディズニーミュージカルの映画化も多く、『キャッツ』と同じアンドリューロイド=ウェバーの楽曲による『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』など、映画版ミュージカルを成功させた制作陣が手掛けた。技術革新は日進月歩。ついに『キャッツ』も! が、始まってすぐに「え……」。

人面猫的な造形のリアルさに驚くと同時に違和感を覚えた。舞台版の猫メイクアップで見ても、猫動作も、猫に近づくための演技に違和感を覚えたことはなかったから。そのショックに慣れるのはかなりかかった。ファンタジーの世界に浸りきれない。この印象については多くの人が書くだろうから、これ以上は触らない。ただ、映画版『キャッツ』は、それを知ってから観るべき、と伝えておく。舞台との違いを盛り込みつつ、映画を紹介しよう。

STORY

満月が輝く夜。1930年代ロンドン。ゴミ捨て場に捨てられた白い子猫のヴィクトリアは、“ジェリクルキャッツ”たちと出会う。今宵は、新たな人生を生きることを許される、たった一匹の猫が選ばれる特別な夜。集まった猫たちが、それぞれの人生を歌い踊ってアピールする一夜だけの舞踏会が始まる…。

【登場する猫たち】

舞台は各70分の2部構成で、20分の休憩を入れ2時間40分の上演時間。映画は110分。なので、登場する猫は絞られるものの、ヴィクトリアを導くマンカストラップ、甘い歌声のモテ猫ラム・タム・タガーなど、おなじみの猫たちが登場する。

最も純粋なジェリクルキャッツを選ぶ長老猫のオールドデュトロノミーは、舞台では男優が演じるが、映画ではイギリスの名女優ジュディ・デンチ。劇場の大スターだった役者猫ガス(舞台名:アスパラガス)がかつて演じた当たり役の荒くれ猫グロールタイガーは、別キャラとして登場。ガスの回想シーンはあるが、ピンクの悪女猫グリドルボーンは出てこない。

また、おたずね者の悪猫マキャヴィティは魔術を使う。気弱なマジシャン猫のミストフェリーズは別な活躍の場が与えられている。空中ブランコを披露するギルバートシャム猫のタントミール、ダンスの得意な三毛猫のカーバケッティとかは、きっとどこかにいるのだろう。

ただ、私の知る『キャッツ』は劇団四季バージョン。世界ツアーの猫キャラ基準は、違っていることもあるようだ。

キャストの技術力】

ジュディ・デンチの存在感は猫になっても納得。汽車を愛する鉄道猫スキンブルシャンクスは、私の好きなキャラ。彼が歌い踊る時、舞台のように他の猫たちがゴミ捨て場のゴミを使って汽車を作るシーンはないけれど、多彩なカメラワークで町へと繰り出し、線路の上で見せるタップダンスは極上だ。

もちろん、名曲メモリーを歌う孤独な娼婦猫グリザベラ役のジェニファー・ハドソンの歌も素晴らしい。グリザベラの存在をスポット的に扱わず、ヴィクトリアと絡ませて物語に印象的に組み込んでいる。映画の主人公ヴィクトリアは、ロイヤルバレエプリンシパル、フランチェスカ・ヘイワード。めっちゃかわいい。素顔で?バレエ見たい。舞台のヴィクトリアは、満月を背にしてソロダンスを披露する。キッラキラでなんて美しい、と思うんだけど、物語ではそんなに活躍しないんだよね。

【追加された楽曲】

 映画では、ヴィクトリア目線で物語が進行する。なので、おなじみの楽曲と共に、ロイド=ウェバーが「ヴィクトリアのための曲を」と、テイラー・スウィフト(妖艶な雌猫ボンバルリーナを演じている)と共に映画版に用意したのが“ビューティフルゴースト”。この曲がいい。ヴィクトリアの自分の心情を歌う曲だが、これは『キャッツ』のテーマ曲とも言えるのでは。劇中でヴィクトリアが歌い、歌詞を書いたスウィフトがエンドソングとして歌う。これは舞台でも聞いてみたいぐらい。

【キャッツワールド】 

『キャッツ』は、T・S・エリオットの詞がベースになっている。舞台では次々と繰り出される猫たちの歌とダンスに引き込まれるが、テーマは深い。それが映画ではヴィクトリアを主人公に、わかりやすく描かれている。

私が舞台の『キャッツ』で一番好きなのは、その世界観だ。劇場に1歩入るとそこはゴミ捨て場。猫サイズの大きさで作られたリアルな舞台美術に圧倒される。映画ではそのサイズ感があまり感じられなかった。もちろん、ロンドンの町の俯瞰シーンなどは、映像でしか見られない。撮影はさぞ大変だっただろう。が、映像ならではのクローズアップの手法が猫世界のサイズ感を薄めたように思う。逆に劇場では、その閉鎖空間が効果をあげている。

さらに言えば、全国を巡演する時に“ご当地ゴミ”まで作られる。関西では、たこ焼き器や阪神タイガースグッズ、関西ウォーカーも捨てられた(飾られた)。これをいくつ探せるかも楽しくて。今、舞台の『キャッツ』は東京・大井町のキャッツ・シアターで上演中(劇団四季 問合せ:0570・008・110)。映画と見比べて観るのもおもしろい。

MOVIE「キャッツ」

TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマTOHO シネマなんば他で上映中

監督:トム・フーパ

脚本:リー・ホール、トム・フーパ

原作・原案:T・S・エリオットアンドリューロイド=ウェバー

出演:ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、ジェイソン・デルーロ、イドリス・エルバジェニファー・ハドソンイアン・マッケラン、テイラー・スウィフトレベルウィルソンフランチェスカ・ヘイワードほか

HP:cats-movie.jp(関西ウォーカー・高橋晴代・はーこ)

マンゴジェリーとランペルティーザのコソ泥カップル猫と踊るヴィクトリア