教習車に使うための車種が減っている
自動車の運転免許を取得する際に誰もが必ずお世話になる教習車。
【画像】専用仕様に萌える? 各メーカーの教習車モデル【ディテール】 全28枚
教習所ではもちろん、試験場で一発取得を目指した人でも現地で必ず乗ったはずだ。
筆者のようにアラフォー世代のドライバーであれば、教習車と言えば古臭いカクカクしたセダンというイメージがあるのではないだろうか?
確かに運転に不慣れな教習生からしてみれば見切りのよい角ばったセダンは運転もしやすく、基本的な運転方法を学ぶにはもってこいと言えた。
しかし、最近では角ばったセダンはすでに絶滅し、空力を重視した流線形のデザインが一般的となっており、それに伴って教習車のラインナップも変化している。
教習所によっては輸入車をラインナップしたり、SUVタイプの車両を導入したりと、各教習所ごとに特色を打ち出したりもしているが、実は教習車とするためには当然ながら規格が決まっている。
とはいえその基準は厳しいものではなく、「乗車定員5人以上の専ら人を運搬する構造の普通自動車で、長さが4400mm以上、幅が1690mm以上、軸距が2500mm以上、輪距が1300mm以上のもの」となっているだけ。
そのため、一般的なセダンからハイブリッドカー、SUVまでOKで、なかには時代の流れを鑑みてミニバンタイプの車両を導入しているところもあるほどなのだ。
実は各メーカーに「教習車仕様」があった
教習車として使うことができる条件については前述した通りであるが、それ以外に教習車として使用するにあたって必要な装備を取り付けることが求められる。その代表格と言えるのが、助手席に座る教官用に用意される「補助ブレーキ」というものだろう。
運転に不慣れな教習生が危険な目に会わないように、万が一のときのために教官が助手席側からもブレーキをかけることができるというものだが、当然これは追加で装着しなければならないもの。
こういった教習車専用の装備を追加していくと、コストはもちろん時間もかかってしまうため、実は自動車メーカーは「教習車仕様」という、そういった必要装備をあらかじめ装備した車両を用意している。
以前は大手国産車メーカーだけではなく、輸入車であるメルセデスベンツ190クラスや、サーブ900シリーズにも教習車仕様が設定されていたことがあり、ある意味まとまった台数を受注することができる大切な顧客のひとつだったのである。
しかし、2020年現在で教習車用に車両をリリースしているメーカーはトヨタ、マツダ、ホンダの3メーカーのみ。過去に教習車仕様を設定していた日産やスバルはすでに撤退してしまっているのだ。果たしてこれにはどういった理由があるのだろうか?
メーカーにとって顧客=教習所が減少傾向
第一に挙げられる理由が、少子化の影響によって新規に免許を取得しようとするユーザーが減少しているということ。
その影響を受けて廃業する教習所も増加しており、教習車を必要とする顧客自体が減少してしまったということが挙げられる。
また、ベース車となる車両にMT車を用意するモデルが少なくなっているのに対し、教習車仕様と謳うにあたってMT車がないというわけにはいかないため、わざわざMT車を用意する必要がある。
現在教習車仕様が存在するトヨタ教習車、マツダ教習車、ホンダ・グレイス教習車の3車種のうち、ベース車にMTが存在するのはトヨタ教習車(ベースは先代カローラ・アクシオ)のみであり、マツダ教習車はタイで販売し、日本では一般販売していないマツダ2セダン(旧名デミオ・セダン)をベースに、ホンダ・グレイス教習車は日本国外で販売されているシティに設定されている5速MTがベースとなっているのだ。
つまり、台数が見込めない割に手間は民生用以上にかかってしまう。
しかし、価格が重要な基準となる教習車だけに他社の教習車と同等の価格にしなければならないということでビジネスとして考えると非常に厳しいと言わざるを得ないのである。
とはいえ、モータリゼーションの根幹を支える教習車だけに、おろそかにすることもできないというのもまた事実。
現在教習車をリリースしているメーカーには引き続きがんばってもらいたいものである。
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