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再評価されるVWゴルフIIの価値

photo:Koichi Shinohara(篠原晃一)

クルマの価格の変動は実に興味深い。

【画像】懐かしのディテール 取材した2代目VWゴルフ【実写】 全41枚

かつてWRCを席巻し、マニアの憧れを煽ったランチアストラトスだが、80年代の終わり頃になると、かつてのスーパースターには誰も見向きもせず、タダ同然の価格で雨ざらしになっていた個体もあるという。

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無塗装のバンパーグリルサイドミラーがベーシック・グレードらしさを醸し出すゴルフ。角ばったシルエットの中で丸いヘッドランプが柔和な表情を作り出す。

だが誕生から50年近くが経過しようとしている昨今、ストラトスはコレクターズアイテムとしてもてはやされ、4000万円以上の値が付く。

ストラトスよりはるかに平凡なVWゴルフIIはバブルの頃、巷に溢れていた。BMWの3シリーズが「六本木のカローラ」であるならば、ゴルフIIはさしずめ渋谷のスターレットか?

ともあれ、一時は中古車店よりも解体屋で見かけることの方が多く、全く魅力を感じなかったゴルフIIだが、近頃街で見かけると「あ、いいな」なんて思ってしまう。

そして中古車価格を見て驚かされることになる。

ゴルフIIの専門店、相模原のスピニングガレージで現在最も高額な個体は199.8万円。ゴルフIIの新車当時が210万円~だったことを考えればこれはすごいことかもしれない。

オーナーの小野真太郎さんが6年ほど前にこのお店で購入したという今回の撮影車輛、1989年式、2ドア、マニュアルのCiというゴルフIIの中ではかなりマニアックな1台といえるだろう。

ゴルフボールのシフトノブ、唯一のシャレ

ゴルフIIを毎日のアシにしているという小野さん。このクルマを選んだきっかけは、彼が子どもの頃、両親が乗っていたことがあるからだという。

価格もそうだが、人の世代的なものも昨今はグルリと一周巡っているのである。

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理路整然とスイッチやメーター類が並ぶダッシュパネル。2スポークのステアリングホイールのセンターパッドはエアバッグが入りそうなほど大きいが、メーターの視認性は高い。

オドメーターに刻まれた走行距離は10万7800km。31年という車齢を考えればこれは驚くほど少ない距離といえる。

黒い樹脂パーツとグレーの布が組み合わさった室内はいかにもドイツらしい機能一辺倒といった感じ。そういえば’80年代から90年代前半のドイツ車はみんなこんな感じだった。

唯一アソビ心が感じられるのはゴルフボールを模したシフトノブで、これはゴルフIの時代から受け継がれた意匠。

ゴルフという車名はスポーツのゴルフではなく、海流の名前に由来していると言われているが、それをVW自身が敢えてもじっているのである。

キーをひとひねりするだけで1.8L 4気筒SOHCエンジンが目を覚ます。少しアイドリングの振動が古さを感じさせるが、あとはシフトもクラッチも加速も排気音も、いい意味で普通。

これで夏場にちゃんとエアコンが効くのだから、現代のアシとして通用しないはずはない。

この時代ゴルフのオートマは3速なので、少しもたつくのかもしれないが、5速MTなら全く問題はない。

蘇るコンディション、再燃する人気

90年頃のVWゴルフはベーシックなCi、装備をアップグレードしたCLi、スポーティなGTi、ディーゼルディーゼルターボ、そしてカブリオというラインナップが揃っていた。

今回試乗できたCiのエンジンパワーは90psだが、車重は930kg程度と軽く、タウンユースならば全く不満を感じないだろう。

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4ドアと2ドアでホイールベースは同じだが、2ドアの方がシルエットはすっきり。また個体数においてもレアといえる。オリジナルの鉄ホイールも時代を感じさせる造形。

スロットルのオンオフで横置きエンジン特有の揺れが少しだけ感じられた。だがこれだけボディがしっかりとしていれば、ダンパーマウント類の交換で、新車時代を彷彿とさせるシャキッとした走りが蘇るに違いない。

デザインはイタリアドライバビリティのユーモアはイギリス車に分がある。その点ユーズドドイツ車の楽しみは、現役当時の高性能がメンテナンスでちゃんと蘇る、という部分にあるのだと思う。

もうじきデビューする8代目VWゴルフの全長はゴルフIIより30cm近くも長く、幅も12.4cm広い。ベーシックカーという立ち位置こそ新旧で変わりはないが、日本の路上で扱いやすいのはやっぱり5ナンバー枠の車幅(1700mm以内)なのである。

近頃ゴルフIIの人気が再燃しているのは、少し古めの趣味車という側面に高い実用性がプラスされるからなのだと感じた。


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