ガンダムシリーズがこれほど長きにわたって愛されているのは、『0080 ポケットの中の戦争』や『0083 STARDUST MEMORY』といったOVA作品や、『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』といったゲームオリジナルの外伝ストーリー、また模型誌で展開された「ガンダム・センチネル」などがガンダムワールドに“多様性”を持ち込んだ点も大きい。そして、ガンプラを愛するモデラーたちはこうした作品を“拡大解釈”した模型を創作し、世に送り出してきた。今回、「ガンダム・センチネル」とスマホゲームガンダムブレイカーモバイル」に触発され、ゼク・ツヴァイ(XEKU-ZWEI)(制作:直井浩司)とB/Dライダー(制作:あに)を制作した2人のトップモデラーを紹介する。

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■キット化されていないMSは情報のない箇所の“辻褄合わせ”が楽しい(直井浩司)

 直井氏は人気模型誌『月刊ホビージャパン』のガンプラコンテスト「全日本オラザク選手権」で金賞を獲得している。そんな直井氏のガンプラ体験の原風景は、小学生の時の第1次ガンプラブームだったそう。そして一番好きなガンダムシリーズについては、「アニメ作品ではありませんが、1987年から1990年まで模型雑誌『モデルグラフィックス』に連載された『ガンダム・センチネル』です」と即答した。当連載ではアニメには登場しない架空兵器がジオラマなどで再現されていて、「見たことのないMSの活躍に毎回興奮させられましたし、アニメシリーズの空白期間を埋める独自設定に創造力を掻き立てられました」と、笑顔で当時を回想してくれた。

 実際、「オラザク選手権」にガンダム・センチネルに登場した架空MSのRMS-142「ゼク・ツヴァイ(XEKU-ZWEI)」で参加。キット化されていないMSのため「形にする事自体がテーマ」だったという。そして「1/100ケールで前後幅が50cm弱あるので、形はもちろん強度の面も課題となりました」と語ってくれた。

 制作の際に使用したキットについて聞くと、ゼク・ツヴァイは腕が3対あるため、その腕部のみキットを流用していたという。「ボディ側からMGギャンの腕、MG AGE-2の脚部フレーム、MGトールギスの脚部フレームとなっています。それ以外の頭部から脚部、装備に至ってはプラ板やパテ類、各社オプションパーツ類で制作しました」

 ここ数年はキット化されていなMSを作る事が多く、制作に関しては“技術的な壁”を感じることも多いそう。しかし、「設定画から立体に起こしていく際、見えない、描かれていない箇所が出てきます。それをどう辻褄を合わせるのかが“壁”であり楽しみでもあります」と、ガンプラの魅力をアピール。そして、壁を乗り越えるための秘訣を以下のように語った。

 「壁を超えるには、目の前の“問題”について考えるのを止めない事でしょうか。シャカリキに考えるのではなくて頭の片隅に置いておく感じです。そのうち、飲み会帰り道や仕事の途中、お風呂に浸かってボンヤリしている時にフッとアイデアが浮かんでくる事も多いです。それと、やはり失敗しないと“壁”は抜けられないかもしれません。手を動かし続けるのも壁を抜けるコツかもしれませんね」

機動戦士ガンダムの魅力は外伝を含めた多様性(あに)

 スマホゲームガンダムブレイカーモバイル』に登場するB/Dライダーをミキシングで再現した理由についてあに氏は、「スマホゲームガンダムブレイカーモバイル(以下、ガンブレ)』のオープニングムービーを見て、巨大なグレネードランチャーを撃つ青い機体がとても恰好良かったので」と教えてくれた。ただし、「『ガンブレ』のオープニングを見るまではB/Dライダーについての知識はほとんどなくて…」と、制作秘話も明かした。

 事実、以前の“ガンダムファン”はアニメプラモから入る人がほとんどだったが、最近はスマホゲームプレイして、そこで『ガンダムシリーズの魅力を知る人も多いようだ。

 今回制作したB/Dライダーの元となったペイルライダーは外伝に登場する機体だが、あに氏にとってOVAゲームで描かれる“外伝シリーズ”は思い入れが強いのだそう。

 特に、『0080 ポケットの中の戦争(以下、ポケ戦)』、『0083 STARDUST MEMORY(以下、0083)』、『第08MS小隊(以下、08小隊)』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト(以下、サンダーボルト)』が好きだと語るあに氏。自然と言葉にも熱を帯びてきた。

 「『ポケ戦』はメカデザインが好みでした。物語もラストがせつなくてとても印象に残っています。『0083』は、核攻撃を主目的として開発されたガンダムという設定がとにかく衝撃的で。『08小隊』はミリタリー色が強い世界観が好きです。ジャングルでの戦闘シーンも多く、ジオラマの題材に最適だと思います」

 そして、ガンダムの魅力は外伝を含めた“多様性”だと強調した。『機動戦士ガンダム』は単なる勧善懲悪ロボットアニメとは違い、戦争に関わる人々のバックボーンや人間ドラマがしっかり描かれている。また、練り込まれたSF設定や多彩なモビルスーツにも説得力があると説明する同氏。こうした“ストーリーの軸”がしっかりしているからこそ、“外伝”も魅力的なのだという。

 「その後の世界はどうなっているのか? あの後シャアアムロはどうなったのか? 何がきっかけで1年戦争が起こったのか?など…最初の物語が良ければ良いほど、そこでは描かれていない“余白”の部分が見たくなるんだと思います」

(C)創通・サンライズ

【左】「ガンダム・センチネル」のゼク・ツヴァイ(制作:直井浩司)【右】「ガンダムブレイカーモバイル」のB/Dライダー(制作:あに)(C)創通・サンライズ