病院に行くのは面倒だから、市販の風邪薬で済ませる――。そんな人は確定申告をして還付金を受け取れるかもしれない。元東京国税局職員であり『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』の著者である小林義崇氏は、「『セルフメディケーション税制』を利用すれば、ドラッグストアで購入した風邪薬の費用も控除の対象になる」と語る。セルフメディケーション税制の仕組みや注意点について、小林氏が解説する。(以下、寄稿)

◆年間1万2000円を超える支払いがあれば、節税できる

 セルフメディケーション税制は、従来からある「医療費控除」の特例として設けられました。医療費控除は、1年間に自己負担した医療費の合計額が「10万円」を超えた場合、超えた金額に応じて所得税や住民税が減額されるという制度です。

 この「10万円」というボーダーは、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%まで下がりますが、まずは「医療費が10万円を超えたら、医療費控除を使える」とイメージしておくといいでしょう。

 ただ、「医療費を年間10万円超負担する」というのは、なかなかハードルが高いものです。私自身、これまでに妻の出産のタイミング以外に医療費控除を使う機会はありませんでした。

 しかし、2017年に「セルフメディケーション税制」がスタートしたことで状況が変わりました。その理由を説明したいと思います。

 医療費控除とセルフメディケーション税制は、いずれか一方を選択して利用するものですが、利用できる条件に差が設けられています。前述のとおり、医療費控除は、10万円という金額基準がある上、基本的に病院や薬局に支払った治療費しか対象にならないので、利用できる場面が限られます。

 一方、セルフメディケーション税制の場合、ドラッグストアなどで購入した特定の医薬品が対象で、しかも年間1万2000円以上購入すれば控除を利用することができます。つまり、病院になかなか行く機会がない現役世代にとっては、セルフメディケーション税制のほうが使い勝手がいいのです。

 なお、セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は「スイッチOTC医薬品」と呼ばれており、その数は現在、1768品目に上っています。風邪薬鎮痛剤といったものから、軟膏や湿布、点眼薬など幅広い品目が対象になっており、年間1万2000円というハードルクリアすることは、そこまで難しくはありません。

 スイッチOTC医薬品パッケージの多くには共通識別マークが印刷され、レシートでも明記されているので、できるだけスイッチOTC医薬品に該当するかを確認して購入するようにしましょう。

◆「セルフメディケーション税制」と「医療費控除」の選択方法

 ここからは、さらに細かくセルフメディケーション税制を利用する際の注意点について解説します。まず注意すべきは、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」でなければセルフメディケーション税制を利用できないという点です。

 難しい言い回しですが、要するに、次に挙げたいずれかの健康診断などを受けている必要があります。

1 特定健康診査(メタボ健診)または特定保健指導
2 予防接種(定期接種、インフルエンザの予防接種)
3 勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)
4 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
5 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
6 市区町村が健康増進事業として実施する健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)


 一般的に3に該当する方が多いと考えられますが、フリーランスなど、勤務先の健康診断を受けられない方は、インフルエンザの予防接種などを受けて、条件を満たすようにしてください。そして、健康診断の結果通知書や予防接種の領収書などを証明書類として確定申告の際に提出・提示する必要があります。

 また、セルフメディケーション税制を利用するには、スイッチOTC医薬品を購入した際のレシートを保存しておかなくてはなりません。レシートは原本で保存する必要があり、インターネットから購入した場合、注文履歴の印刷では認められず、領収書を保存すべきという点も注意しましょう。

 最後に「通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方の条件を満たす場合、どちらを選ぶべきか」という点について触れておきます。

 前述のとおり、セルフメディケーション税制のほうが通常の医療費控除よりもハードルは低いのですが、どちらも使える場合は、控除額の大きなほうを選んだほうが有利。その意味で覚えておきたいのが、セルフメディケーション税制の上限額は8万8000円であるのに対し、医療費控除の上限額は200万円ということです。

 つまり、大きな病気や怪我をせず、ドラッグストアだけで済んだ年はセルフメディケーション税制を使い、入院など多額の医療費がかかった年には通常の医療費控除を使うといった考えが合理的です。まずは1月1日から12月31日までの1年間に支払ったドラッグストアのレシートや医療費の領収書を集計して、どちらの控除を利用するべきかを比較してみましょう。