「大学」版の「桜を見る会」、すなわちサクラ疑獄のアカデミック・バージョンのような事態が「しものせき」の地において現在進行形で展開していることが、今年9月11日付の毎日新聞https://mainichi.jp/articles/20190911/k00/00m/040/069000c)ならびに山口県の地元マスコミhttps://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/13192)によって報道されています。

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 言わば下関版「9.11」大学テロ事件といった様相を呈している様子です。

 実態は「下関市立大学」における、大学の定款を逸脱した「専攻科」の設置と、教員3人の人事の勝手な強行に対して、専任教員の実に9割以上が反対しているという、どこから見てもただ事ではない状況が発生しているというのですが・・・。

 この「下関」という立地は、サクラをいろいろバラエティに富んだ人々と一緒に見る内閣総理大臣のお膝元にほかなりません。

 さらに、市立大学の設置者、下関市の「市長」は現総理の運転手などを務め、「長年支持していた代議士トップになり、応援してきた功績で新宿御苑に呼ばれて何が悪い? この国は民主主義・・・」という、悪い冗談にもならないコメントを発した人物です。

 その市長自らがごり押ししているという。

 公職に就くうえで基本的な法規に関する学習理解を欠く人物が、悪い冗談みたいですが、大学のつくりを壊している・・・などとなると、これは穏やかではありません。

 この市長氏、長崎大学水産学部で学んだということから、フィッシュは勉強してもファッショを防止する勉学はトンとしなかった様子と、すでに本連載でも記しましたが・・・。

サクラ疑獄」が将棋の盤面で「詰んでいる」ことを明示した郷原信郎弁護士は「安倍首相のお膝元で進む元秘書市長主導の<大学破壊>」と断じています。

 一体何が起きているのでしょう?

 まず出来事を追うところから始めてみたいと思います。

経済大学にいきなり「特別支援教育」

 まず大前提として、下関市立大学は「経済学部」だけで構成される単科大学、いわゆる「カレッジ」であることを確認しておきましょう。

 戦後高度成長前期の1956年昭和31年、公立「下関商業短期大学」が設立されます。設置者は下関市、地元で商業教育に重点をおいた短大として作られたのが、この大学の原点になります。

 それが1962年昭和37年に4年生の単科大学に発展的に改組されたのは「来るべきベビーブーマーたちの地元大学進学」を念頭に置いたものと思われます。

 短大時代の定員は1学年120人で全240人、高等学校より小さいかもしれない規模でした。

 しかし、最新の入試データによると一般入試310人、推薦入試130人、特別入試10人の450人、さらに第3年次編入で12人を採用しており、短大時代に比べると1学年あたり4倍に近く、在学生全体では8倍と、著しい規模拡大が見て取れます。

 そして、これらの学生すべてが「経済学部」に学んでいる。

 学科は「経済学科」「国際商学科」「公共マネジメント学科」の3つに分かれていますが、いずれも経済学ならびにその基礎となる教養課程を教授する指導陣が、60年近い大学の歴史を通じて一貫して指導してきたことが分かります

 さて、ここに突然、青天の霹靂のように現れたのが「市長の意向」によって突然設置が決まった「特別支援教育」の専攻課程だというのです。

 経済学とは何のかかわりもない、教育学部あるいは福祉関係の学部に設置されるような特設課程が、大学内のルールと無関係にねじ込まれてきたというのです。

琉球大学から講座まるごと移殖
属人的な人事経緯

「特別支援教育」は様々な意味で難しい専門分野のように思われます。

 小中学校の特別支援学級を担当する教員養成コースは、教育学部の中でも、かなりデリケートな専門と考えることができるでしょう。

 琉球大学には「特別支援教育特別専攻科」のコースが設置されていましたが、定員割れのため平成30年度をもって廃止されたとのこと。

 現在は教育学部特別支援教育特別課程(www.edu.u-ryukyu.ac.jp/faculty/tokusi)に再編されているようで、それをそのまま丸ごとスタッフ3人、山口県に移植しようというのが、今回下関市立大学で発生している事態であるというのです。

 下関市議会でのやり取り(https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/13192)によると、

「In-Childインチャイルド)インクルーシブ教育を熱心に行っている、琉球大学の韓昌完(ハンチャンワン)教授を市長が紹介され」

「この方はすごくいいな」と下関市長が思い

 元副市長の市立大学理事長に「会って話をしてみませんか」と紹介したところ

「市長の意向」として、下関市立大学に現職教授会などと無関係に「トップダウン」の「決定」が進み

「現役の教員や大学を卒業した教員免許状を取得している者を対象にした」専攻科を

 市の総務部が「資格取得も視野に入れた社会人が求める教育の提供がこれからは求められていると考え」、市立大学教授会はもとより、市役所の他の部局とも無関係に

「総務部のなかで検討して市として判断をしたところだ」(今井弘文下関市総務部長)というのです。

 下関市長は2年ほど前に「発達障害に関心のある一般市民の女性の方」から紹介を受け、韓昌完教授と知り合い、その後2、3度程度会っただけで、市長の意向として琉球大学の講座丸ごと3人分の人事を含む、既存の経済学部とは全く無関係な「特別支援教育専修科」設置を画策、

「定款に違反しているではないか?!」との指摘から、市立大学の定款そのものを全面的に書き替えてしまおう、という話になっており、保存されているはずの公文書が次々と破棄されたことになっているサクラ疑獄同様「大学版<桜を見る会>」の様相を呈していると指摘されているわけです。

背後に実態不明の財団?

 この事件の周辺を追って行くと、公開情報の範囲だけでも、相当不可思議な構図が浮かび上がってきます。

 市立大学の人事が起案されたのは2019年6月とのことですが、これに半年以上先立つ2018年10月1日時点で山口県認可の「一般財団法人HAN研究財団」なるものが設立されています。

 HANはご丁寧に「Human-services Action for the Next innovation」だそうですが、舌を噛みそうなHSAFNI財団ではなく「HAN」と略され、琉球大学の韓教授をスピーカーとするセミナーなどを主催しているので、人ありき、で作られたものとみられても仕方ないと思われます。

 どうしたことか、財団ホームページは開店休業(https://www.han-rf.com/)になっていますが、この「HAN財団」の理事を務めていた人物が、下関市立大学の経営審議会のメンバーとして、韓教授らの人事を含む「新専攻科設立」を決定する場に関わっていたというのですから、穏やかではありません。

 もし事実であれば、すこぶるつきの「利益相反」で、官費の執行、公金の支出にあたって正当な手続きとは到底認められないでしょう。

 問題の「HAN財団元理事」は、経営審議会が開催された6月26日の2日後、6月28日になって「3月1日付で理事辞任」と登記されていたとのことで、まさに「桜を見る会」の名簿やシュレッダーをめぐるどうしようもないやり取りと同じようなことを、性懲りもなく下関でも繰り返していることがバレている。

 このほかHAN財団には、市長も所属していた市議会会派の議員が複数、理事や評議員として名を連ねていることが判明しており、いろいろでき試合で仕込まれた話であるのは間違いないようです。

公金の私物化
サクラ疑獄と同様の構図

下関市立大学」は特別支援教育専攻科を無理やりつくるために、定款から改めて、既存の教員と無関係の新部署を無理やり作ろうとしています。

 しかし、これは「来るべき総合大学化」に向けて、「市長の意向」で勝手にイニシアティブをとっていく、前哨戦に過ぎないらしいことが経緯から透けて見えます。

 もしこれが、地方のお金持ちが私立大学を率いて、自分の構想に沿った大学を作るのだ・・・というのなら、まだ分からない話ではない。

 例えば加計学園。私立です。

「世界のトップ水準大学を作り、海外からも留学生を呼び込んで活性化」という特区の設置趣旨が、いつのまにか「地元の悲願」に置き換わり、そういう本末転倒を全く意に介さない公金使途の付け替えは、派手でないためか、マスコミも特に注目しません。

 世界のトップを謳いながら、獣医学に貢献して日本人ノーベル賞も出ていますが、そういう理研、もとい「利権」と無関係なあたりはトンと無関係。

 私は偏差値というものをおよそ信用しませんが、岡山理科大学獣医学部に関して検索してみると偏差値35-55という数字が出てくるのは目にしました。

 世界最高水準で各国から留学生を呼び込んでいるのかどうかは、よく分かりません。

 一度できてしまえば、後は惰性で回ってしまうということか。

 しかし岡山理科大、つまり加計学園は「私立大学」、これに対して「下関市立大学」は市立大学で、市が設置者といっても、市長は単に首長であって、大学は学生の納める授業料と、市民の納める税金で回っている。

 人事を私してよいというような代物では全くありません。

 ことが大学だから、物事が分かりにくくなっているわけで、市長が誰かの紹介で1、2度会った人を気に入り、自派の自民党議員などと営業組織も準備して、「この人はいい」と市役所に採用して経理出納など扱わせると考えれば、どれくらい無茶苦茶なことをやっているか、すぐに分かるかと思います。

 実際、下関市で起きている出来事を調べてみると、市長派議員、特に市議会議長や元市長の「飲み会からの帰路」に市のタクシー券が使い放題とか(https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/13102)出てくるわ出てくるわ、公私混同、腐敗のオンパレード状態であることが分かります

「教授会メンバーのほぼ全員を敵にして、3人だけ雇用して、あの狭い大学の中でまともにやっていけるのか・・・」という地元の声は、その通りと思います。

 教員もそうですし、たった10人採用される学生の履修もまともに進むのか。

 1人年間27万円の学費で10人なら270万円の歳入に対して、人件費は新規雇用の教員3人プラス事務スタッフなど、1講座分数千万、ざっくり1億円はかかると思います。

 つまり、1億円から授業料の270万円を引いた9730万円ほどは、「市長の意向」で税金を投入することを意味するわけです。

 桜を見る会の5千万円など大したことではないと豪語する馬脚、もとい背景の根拠が丸見えとなった一幕でもあるようです。

 子は親を見て育つと言います。

 子分もまた、親分の背を見て育ってしまったのでしょう。

「桜を見る会」で「地元で首相の選挙に貢献した人が新宿御苑に招待されて、何が悪い」という、あり得ない発言が放置されているのを不思議に思っていました。

 しかし、実はそれどころではないフィッシュ、もとい“ファッショナブル”な市立大学乗っ取りなど、とんでもないお膝元の実情であることが改めて全国に知れ渡ったわけで、今後の推移が注目されるところと思います。

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