1月23日、ユタ州パークシティでサンダンス映画祭が開幕した。昨年、映画祭の創設者であるロバート・レッドフォードが映画祭からの引退を表明。“顔”としての活動はなくなったが、今年も開幕に際しコメントを寄せている。レッドフォードは、「脚本家も監督も俳優も批評家ボランティアスタッフスポンサーも、ここサンダンス映画祭ではいち個人として劇場に存在する。それぞれ日々の生活や世界情勢に汲々となっているなか、劇場の明かりが消え、話し声が途切れ、携帯の明かりを落とし、劇場の幕が上がると魔法のような瞬間が訪れる。目の前のスクリーンに映像が映し出されると、妥協のないクリエイターたちがそれぞれの人生の歩みから得たビジョンを初めて体験することになる。これらの示唆に富んだ作品を世界に届ける手助けができることを光栄に思います」と綴っている。

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ここ数年のサンダンス映画祭は、配信事業者の台頭によって活気付くインディペンデント映画市場を反映しているかのような盛り上がりを見せている。昨年サンダンスで上映された映画は賞レースでも頭角を表し、オバマ大統領Netflixが配給した『アメリカン・ファクトリー』(19)と、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したAmazonの『アポロ11』(19)はアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされている。また、サンダンスでの受賞はなかったが各社が争奪戦を繰り広げたルル・ワン監督の『フェアウェル』(19)は劇場公開でも好成績を残し、主演のオークワフィナはゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞した。

今年のオープニング作品は、すでにオバマ大統領の映画会社Higher GroundとNetflixが配給権を取得しているジム・レブレットニコールニューマン監督の『Crip Camp』(20)。70年代に行われていた障害者たちのキャンプを記録したドキュメンタリー作品だ。また、同じくNetflix1月31日より配信予定のテイラー・スウィフトドキュメンタリー、ラナ・ウィルソン監督の『ミス・アメリカーナ』(19)もプレミア上映され、スウィフトの登場にパークシティは大盛り上がりをみせた。日本からは、ショートフィルムプログラムに冠木佐和子監督の「Takoyaki Story / たこやきストーリー」が選出されている。そのほか、北朝鮮金正男暗殺事件の謎を追うドキュメンタリーライアンホワイト監督の『Assassins』(20)や、リューベン・オストルンド監督の『フレンチアルプスで起きたこと』(14)の英語リメイクである、ジム・ナッシュ&ナット・ファクソン監督の『Downhil』(20)、イーサン・ホークニコラテスラを演じるマイケル・アルメレイダ監督の『Tesla』(20)、ヒラリー・クリントン上院議員のドキュメンタリー、ナネットバーンスタイン監督の『Hillary』(20)など、今年のインディペンデント映画界を賑わせそうな作品が並ぶ。

サンダンス映画祭は“インクルージョン”を基本概念に掲げており、映画祭会期中上映される作品244本のうち、約44%の作品に女性クリエイターが、37%の作品に有色人種のクリエイターが、19%の作品にLGBTQ+Iのクリエイターが関わっているとの統計を出している。昨年人気を博した作品も女性監督やマイノリティのクリエイターが関わる作品が多く、映画を通して世界の包摂性を高めていこうという気概が感じられる。映画祭は2月2日まで行われ、最終日には観客賞や優秀作品が発表される。(Movie Walker・文/平井伊都子)

プレミア上映に登場したテイラーとラナ・ウィルソン監督