亀山早苗の不倫時評


 次々と報道される有名人の“不倫”。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)


仲良し夫婦でも、不倫はよくある話



ごちそうさんメモリアルブック (NHKウイークリーステラ臨時増刊4月29日号)



 女優の杏さん(33歳)と俳優の東出昌大さん(31歳)が別居しているという報道が出た。原因は、東出さんの女性問題。結婚して5年、3人の子どもたちを協力しながら育て、「理想の夫婦ランキング」では常に上位だった。


 あんなに仲の良さそうな夫婦に見えたのに、一方が不倫をしていたという事実は大きな衝撃として受け止められている。


 だが、周囲からは仲がいいと認められながらも、一方が不倫をしているのはときどき巷でも見かける光景だ。



左から唐田えりか東出昌大 <写真撮影/望月ふみ>



◆妻への感情と、恋人への気持ちは違う
「僕は同い年の妻を尊敬しているし、一緒に家庭を築いていけるのはこの人しかいないと結婚して10年たつ今も思っています。実際、家族と過ごす時間は楽しいですしね」


 マコトさん(38歳)はそう言うが、彼はこの10年間で、何度か浮気をしているという。そしてこの2年間は、10歳年下の女性と親密な関係を育んでいる。


 マコトさん夫婦はずっと共働きだ。収入は妻のほうが多い。だがそれは会社の給与体系の問題であり、彼も妻も気にしたことはない。


「僕のほうはシフト制の仕事なので、夜勤が入ると妻は大変なんです。だから昼間、僕が家にいる時間があれば、できる限りの家事はしておく。妻は満面の笑みで、『ありがとう』と言ってくれる。あれ以上の妻はいないと思います」



写真はイメージです(以下同じ)



 それなのに、なぜ外で恋をするのか。これについてはマコトさんもどうしても口が重くなる。世間の常識からいえば「してはいけないこと」だとわかっているから。


「ただ、してはいけないことをするのが楽しいという部分はありますよね。それと、相手を好きになってしまったら気持ちを止めることができない。


 僕、自分からそんなに激しく口説いたりはしませんよ。だけど好きだと相手にも伝わるでしょう。そこからプライベートな会話が始まり、また会いたくなって……」


◆「彼女の部屋にいるとき、いちばん深く睡眠がとれるんです」
 今の年下彼女とは、彼女のひとり暮らしの部屋に彼が月に数回、立ち寄るという。ときには彼女の自宅近くの居酒屋に行ったり、映画を観に行ったりすることもある。


「彼女といるときの気持ちは、家族とは違う。彼女は僕を、誰かの夫とか父親とか見ているわけではなく、“ただのひとりの男”として好きでいてくれる。僕も彼女のそばにいるとときめくし、一方で何の責任もなくリラックスできる。彼女の部屋にいるとき、いちばん深く睡眠がとれるんです」


 愛情の質が違うのだ、と彼は言う。家族としての愛と、恋愛感情とは確かに質は違うのかもしれない。


「結婚したら他の誰かを好きになってはいけないのかな、とときどき思うんですよね。僕、ときどき妻や娘に花を買って帰るんです。ふたりとも喜んでくれる。その笑顔を見るとうれしい。


 ただ、妻や娘に花を贈るのと、彼女に花を贈るのとではやはり心構えが違うんですよね。喜ばせたいという気持ちは同じなのに」



 妻や娘には週に一度は花を買う。季節の花、華やかではなくても味のある花を買うことが多い。だが彼女にはバラやスイートピーなど華やかなものをつい選んでしまう。それは「ときめく」彼自身の心を表現したいから。


 結婚すれば男女の関係は変わる。子どもができればなおさらだ。家族の重みを受け止めつつ、彼は恋をやめられない。


「ただ、もちろん、絶対に家族にはバレないようにしています。それがうまくできなければ、恋なんてしてはいけないと思っているから」


 続いては、帰る場所があるから不倫ができるという8歳年下の既婚男性とダブル不倫をしている女性の場合です。



◆帰る場所があるから不倫ができる
 結婚して18年、家族とは仲良しだと携帯の待ち受け画面を見せてくれたのは、トモカさん(44歳)。学生時代からつきあっていた同い年の彼との間に子どもができたのをきっかけに結婚した。


「彼は本当に器の大きな人。私はいつも迷ってばかりいるけど、彼のおかげで楽しく生活してこられたと思っています」


 ひとり息子は大学1年生子どものころは体が弱くて、トモカさんは何度も仕事を辞めようと思った。だがそんなとき支えてくれたのが夫だ。


「私、就職した会社で、何度も転機を迎えているんです。入って2年くらいでいきなり産休と育休をとり、周りの目が厳しい時期もありました。だけどその会社の中でやりたいことが明確にあったので、育休明けから希望の部署に異動できるよう働きかけて……。


 実際、希望の部署に配属されてからは残業も厭わなかった。それができたのは夫が、家事育児を率先してやってくれたから。夫だって全力で仕事をしているのに」



 夫はいつでも自分の味方、そして家族を全力で守ってくれる。トモカさんはそう信じて疑わない。


「家ではけっこう夫にベタベタしているんですよ、今でも。息子が『いいかげんにして』と言うくらい。でも私、夫のことが大好きだから」


 それなのに、トモカさんには今、つきあっている男性がいる。相手は8歳年下の既婚者だ。


「仕事関係で知り合って,いつの間にか仲良くなっちゃって」


◆恋することをやめられない。そこにいろいろな言い訳はついてくる
 トモカさんは、かなり天然である。家族にもよくそう言われると笑う。罪悪感などまったく感じさせない口調なのだ。


「私には幸せな家庭がある。彼もそれなりに大変だけど家庭を壊す気はない。でも、私と彼、恋に落ちてしまったんですよね。お互い、帰るところがあるから恋愛も輝く。そんな気がするんです。もちろん、いいことだなんて思っていないけど、でも恋って楽しいじゃないですか」



 正直な人なのだ。続けて彼女は、「家族には家族がもっている私のイメージがあると思う」と言った。


「私は,普通の妻とか母親からは少しはずれているかもしれないけど、夫と息子がもっている私のイメージはあると思うんですね。


 でもそのイメージが、私という人間すべてではないような気がします。私の中には家族の知らない私がいる、というか。そこを引き出してくれるのが恋人の存在じゃないかしら」


 それゆえ、恋をすると人間の幅が広がるというのがトモカさんの意見。頷(うなず)けるところもあるように思う。


「家庭が平和だから外で恋をする。そういう人間も少なからずいると思います。家庭が幸せでなければ恋も楽しいものではなくなるから」


 世間的な善悪は別として、「恋をしやすい人」は、いくつになってもどういう状況にあっても、恋することをやめられないのかもしれない。そこにいろいろな言い訳はついてくるものである。


<文/亀山早苗>


【亀山早苗】フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数



左から唐田えりか、東出昌大 <写真撮影/望月ふみ>