スコットランド女王メアリ・スチュアートと、イングランド女王エリザベス一世。このふたりの女王の歴史的な対立を描いた舞台『メアリ・スチュアート』が、本日1月27日から2月16日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演される。

舞台は16世紀末。政変により国を追われたスコットランド女王メアリは、遠縁にあたるイングランド女王エリザベスのもとに身を寄せる。だがエリザベスは、イングランドの正当な王位継承権を持つメアリの存在を恐れ、彼女を19年間、幽閉する。やがて、エリザベス暗殺計画に関わった嫌疑により、メアリは裁判で死刑判決を下され……。

18世紀ドイツの劇作家フリードリヒ・シラーが史実を基に描いたこの人間ドラマは、日本でもそうそうたる俳優たちによって演じてられてきた。これまでは、イタリアの作家ダーチャ・マライーニが翻案した二人芝居版の上演が多かったが、今回はイギリスの詩人スティーブン・スペンダーによる台本で、20人を越える登場人物たちによる群像劇が繰り広げられる。

演出を手がけるのは、現在の日本演劇界を代表する演出家のひとりとして話題作を発表し続ける森新太郎。森は「史実によれば、エリザベスメアリの死刑執行命令に署名したことを、生涯、後悔し続けたそうです。何がかかる悲劇を招いたのか。シラーは彼女たちの心の内における“理性”と“感情”の葛藤を微細に活写するとともに、世論の脅威や宗教間の確執、国家間の覇権争いがふたりの運命を押し流していく様を巨視的なスケールで描き切りました。このスリリングで無情な人間ドラマを、現代にも通じる政治劇としてよみがえらせたい」とコメント。歴史劇ジャンルを得意とする彼が、今作をどのように立ち上げるのか。また、今回は客席中央に花道を通す特殊形状が設けられるというから注目だ。

キャストも、森が「贅沢な配役」と太鼓判を押す顔ぶれが揃った。タイトルロールのメアリを演じるのは、久々の舞台出演となる長谷川京子。その姿を一目見、その声を聴けば、誰もが心を許したくなるという魅惑の女王役で新境地を開く姿に期待したい。エリザベスには、ミュージカルでの活躍が印象的なシルビア・グラブ。栄華の頂点を極める立場にありながら、権力者の悲哀を一身にまとう女王をどのような存在感で見せるか。さらに、エリザベスと愛人関係にあったことでも知られるレスター伯に吉田栄作。そして、シラーによって創作されたキャラクターで、メアリに恋心を抱く青年モーティマーに三浦涼介。ほか、鷲尾真知子、山崎一、藤木孝らが出演する。

文:伊藤由紀子

『メアリ・スチュアート』