かつて憧れたピッチで、セレス・ネグロスの一員として小田原貴はAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)のプレーオフを戦った。風雨の影響でコンディションは最悪。しかも、本戦出場を懸けて戦った相手は、昨シーズンのJリーグを2位で終えたFC東京

ピッチから見上げたファン・サポーターの姿は素晴らしいなあって思った。ここで見て育ったんだなって、過去の思い出が過ったりもした。ここでプレーできる選手は幸せだなあって思いました」

 0-2で敗れて見上げた景色を、小田原はそう表現した。

 ところどころに水溜まりが出来、水を多く含んだ芝生の上ではボールは走らない。「やることはお互いに限られているので、ボールをつなぐことは不可能ですし、なるべくシンプルに正確なボールをサイドに蹴って、そこでセカンドボールを拾って、という形が一番の理想だった」と小田原。多くの選手がボールコントロールに苦しみ、本来のサッカーができる状況ではなかった。

 それでも「FC東京のほうが精度が高かったし、アダイウトンとかレアンドロを含めて一人でいける選手の質の違いもあったと思う」と実力の差を感じた。

 80分にFC東京の原大智が一発レッドで退場処分を受けたが、それが小田原の頭に原のひじが入ったシーンだった。「幅はそんなにないけど、深く切れているみたいで。ひじが入ったのは分かって、痛みもすぐに来た。周りも騒いでいたので、これは切れてるなって分かった」とカットした左目上部のガーゼにはうっすら血が滲んでいるのが分かった。

 小田原の今シーズンのACLへのチャレンジは終わった。しかし、「ここが最終目標ではない」と言い切る。「ここで一つの大会が終わってしまったけど、気持ちがここで途切れることはない。与えられた環境の中で、次の試合に向けて準備していく」と力強く語った。

セレス・ネグロスの一員として憧れのピッチに立った小田原貴(背番号9) [写真]=兼子愼一郎