「せめて週1日は休みたい」。開業する医師や歯科医たちから、そんな切実な声が上がった。神奈川県保険医協会が1月29日、東京・霞が関厚労省で会見し、「この働き方を次の世代の医師に引き継がせたくない」と訴えた。

協会はほとんどが開業医師と開業歯科医で構成される。病院の勤務医の働き方改革が進む中、開業医の劣悪な労働環境が置き去りにされることに危機感をもち、2019年1月に「開業医の4人に1人が週60時間超労働」という調査結果を発表。

その後、1年間の議論を経て「開業医の働き方改革・提言」をまとめ、会見では提言をもとに、過酷な労働環境を明らかにした。

●開業医の2割が「辞めたい」

診療報酬が減少する中、開業医は夜間診療に対応するなど患者数を増やして経営を維持しようとしているという。スタッフや看護師を雇う余裕もない中、診療だけでなく書類作業など事務作業に追われ、ストレスを抱える医師が増加。

同協会の副理事長で医師の桑島政臣さんは「開業医・歯科医の2割が辞めてしまおうと考えている」と話す。

議論を重ねた開業医らは「望ましい開業医の働き方」の意見をまとめた。「週60時間以内の労働時間」、「週休0日や1日未満の解消のため、週休完全1日の努力義務化」、「やりたい放題の夜間診療の時間、頻度の限度指標の設定」などが示されている。実はなおざりにされていた「開業医の健康診断」も「最低年1回の義務」とした。

●開業医の働き方改革達成には、患者側の働き方改革も

これら「望ましい働き方」を踏まえた働き方改革の具体的な提言として、「診療報酬の改善」、「医師作成文書の簡素化」、「患者数・労働時間の指標の明示」、「労働法制の改定」などがあげられた。

このうち「労働法制の改定」は、開業医の体と心の健康管理も対象とするが、実は患者側の働き方も対象としている。

労働者が勤務中に病院に行くことを許容する環境が整備されれば、週末や夜間の患者数が減少する。開業医の負担も減る」(政策部副部長で医師の磯崎哲男さん)。理事で歯科医の二村哲さんは週休1日未満で働いており「患者が平日の昼に来られる環境を作ってもらいたい」として、せめてもの週休1日の確保を希望した。

桑島さんによれば「開業医の平均年齢は60歳。高齢者です」。地域医療の担い手である開業医は無敵の存在ではない。磯崎さんは「開業医が減ると、さらに1人の開業医にかかる負担が重くなる」「今の働き方を次の世代の開業医に引き継がせたくない。もっと休ませてほしい」と訴えた。

「もう辞めたい」「患者よ、昼に通院して」 長時間労働の開業医が訴える「働き方改革」