TVアニメ『織田シナモン信長』でメインキャストの尾田市子を務める声優・熊田茜音が、1月29日にシングル『Sunny Sunny Girl◎』でアーティストデビューする。2017年にバンダイナムコアーツ、アミューズ、バンダイナムコライブクリエイティブという超大手の音楽制作会社・プロダクション・ライブ制作会社がタッグを組んで開催したオーディション「ANISONG STARS」において、並み居る4846人の応募者を掻き分け、グランプリを勝ち取った熊田。そんな彼女のデビューシングル曲は現在放送中のテレビアニメ『織田シナモン信長』のオープニングテーマにして、徹頭徹尾ポジティブに前を向き続ける、これから揚々たるアーティスト・声優人生を送るだろう熊田の幕開けを飾るにふさわしい楽曲に仕上がっている。このポジティビティあふれる1曲を歌う熊田茜音とはいかなる人物なのか? 本人に話を聞いた。


――このたびソロアーティストとしてメジャーデビューなさるということで今回は熊田さんの音楽遍歴から掘らせてください。

はい。

――まず生まれて最初に買ったCDってなんですか?

DOESさんの『今を生きる』というシングルを中学2年生の頃に買いました。初めて行ったライブDOESさんのライブなんです。その会場で買いました。

――中学2年生で初CDってちょっと遅いような気も……。

それまでは家にあるCDを聴いていたんです。母がASIAN KUNG-FU GENERATIONさんが大好きで。あと洋楽も好きでシンディー・ローパーやテイラー・スウィフトなんかも聴いていたので、私もアジカンさんやDOESさんだけじゃなくて、洋楽もたくさん聴いていて。中学生になってお小遣いをもらうようになったから、初めて自分のお金でDOESさんのライブに行ってCDを買ったって感じなんです。

――なるほど。ではなぜ、そのいわゆる邦ロックや海外のシンガーソングライターリスナーだった方がアニソンアーティストと声優を発掘するオーディション「ANISONG STARS」を受けようと?

中学時代に友人関係に悩んじゃった時期があるんです。クラスの中で全然上手に振る舞えなくて「どうしよう? どうしよう?」「すごくひとりぼっちのような気がする……」って悩んでいたときに『魔法少女まどか☆マギカ』(まどマギ)や『HUNTER×HUNTER』にすごく救われて……。

――へっ!? 『まどマギ』に救いがありました?

確かに最後、ヒロインまどかがみんなのために概念みたいな存在になっちゃう、一見救いのないラストなんですけど(笑)、その、ひとりの女の子が勇気を振り絞って自らを省みずに戦う姿を見ていたら、すごく心にくるものがあったんです。「同じ女の子として憧れる」って。そうしたら「グジグジ悩んでいる自分ってめちゃめちゃカッコ悪いな」っていう気持ちになって、一歩踏み出そうと思えるようになったんです。

――そして声優を志望するようになった、と。

家族全員アニメオタクで、子どもの頃からずっとテレビではアニメが流れている状態だったんですけど、そのキャラクターの命を吹き込む声優さんの存在を意識するようになったのは中学時代ですね。

――一方、アニソンアーティストになろうと思った理由は?

LiSAさんの存在が大きかったです。高校1年生のときに友だちに「いいよ」って薦められてライブを観に行ったんです。女性アーティストライブを観に行くのはそれが初めてだったんですけど、もう泣いて笑ってって感じでチョー楽しくて! 音源とはまた違う感動があったし、MCでおっしゃっていたことにもすごくパワーをもらって。「ライブってこんなに心が動くものなのか」「私もLiSAさんみたいになりたい」って思うようになって本格的にボイストレーニングを受けるようになりました。

――そして過去のインタビューによると、その頃からオーディションも受けるようになるんですよね?

オーディションは中学時代からたくさん受けていたんですけど、高校生になってバイトできるようになってから、めちゃくちゃバイトしてお金を貯めてボイトレに通うようになりました。

――これも過去のインタビューからなんですけど、ただ保護者の方は応援していたかというと……。

「芸能の道なんてダメだよ」とは言われなかったんです。「目指したいものがあるなら、それを目指していいよ」とは言われていたんですけど「支援はしないよ」と。「本気でなりたいなら自分でなんとかしろ」と言われてました。

――保護者の方も音楽やアニメが好きなんだから支援してくれてもいいのに。

逆に好きだからこそだったんだと思います。両親自身、声優さんやアニソンアーティストさんがいかにスゴいかを知っていたからこそ「なにをお前は夢を見てるんだ!」って(笑)

――だからバイトしまくった、と。

「私のバイト代でボイトレに通って、オーディションを受けるぶんには文句ないでしょ?」って(笑)

――ただ中学時代からたくさんオーディションを受けていたということは……。

はい! たくさん落ちました!(笑)

――今でこそそうやって元気いっぱいにお話なさってますけど、当時の心境って?

キツかったです。特に書類審査や一次審査で落ちるとヘコむし、あと私は言霊を信じているんです。「あれやりたい」「これやりたい」って夢を口にすれば叶うんじゃないか、と思っているんですけど、それを聞いた周りの人に「芸能界なんてムリだよ」って言われたりもしましたし、それで心が折れそうになったことはありました。

――当時はまだまだお若いんだから、そこまでオーディションに落ちていたなら、勉強や部活をがんばってみたり、放課後友だちと遊び歩いてみたり、いわゆる“当たり前の青春”を謳歌する道を選択し直すのもひとつの手ですよね?

でも「LiSAさんたち、アニソンアーティストさんに救われた」という体験が大きすぎたから、私も絶対に誰かを音楽で助けられる存在になるんだというモチベーションはなくならなくて。それにヘコむことも悪いことじゃないな、と思っていたんです。喜怒哀楽が激しいタイプなのでオーディションに落ちるたびに泣いていたんですけど、泣いてるあいだに「なんで私は今悲しいんだろう?」「じゃあどうしたら受かるんだろう?」って考えることができたんです。そうすると「これが足りない」「あれが足りない」って新たな目標を見つけることができたから、それはそれでめちゃくちゃ楽しかったです。

――じゃあ学生時代はレッスン&オーディション漬け?

そうですね。ただ、その生活を見かねた方に「友だちといろんなところに遊びに行くのも刺激になるし、その経験が表現に活きることもあるよ」って言われたので、ムリヤリ遊びに行ったりもしました。

――義務としての「遊び」(笑)

はい。そういう時間だから実はちょっとツラかったです(笑)。「練習したい!」って。でも遊びに付き合ってくれたこともそうだし、高校時代は周りの友だちに恵まれたなとは思っています。放課後や休みの日にオーディションに行くために同じ部活の子に迷惑をかけたりもしましたし……。

——箏曲部……つまりお琴を弾いてたんですよね?

しかも部長でした(笑)。だから副部長の子にすごく迷惑をかけたはずなんですけど、その子が全然イヤな顔をしなかったことも「ちゃんとオーディションがんばらないと」というモチベーションになりました。

――ちなみになぜお琴を弾こうと?

スポーツが好きで、小学校からずっとバドミントン部で高校でもバドミントンをやろうと思っていたんですけど、たまたま友だちに箏曲部の見学に連れて行ってもらって。そしたらめっちゃカッコよかったんです。和服の先輩たちがスッと音を合わせるのを観た瞬間「カッコいい!」ってなって、気付いたら入部してました(笑)

――音楽との出合いがいちいち素敵ですね。ご家族に日本のロックや海外のシンガーソングライターを薦められ、友だちにLiSAさんやお琴を薦められている。すごく環境に恵まれている気がします。

そう言われると確かにずっと波に乗っているというか、私、人に紹介されたものにすぐ飛び付いちゃってますね(笑)

――でも当然苦手な音楽は聴きませんよね?

はい。

――だったら周りの人たちはちゃんと熊田さんのセンスフィットした音楽を薦めていたことになる。

それは私自身、好きなものは好き! って発信しているからかもしれないですね。音楽だけじゃなくて、食べるものであれ、色であれ、テレビ番組であれ、好きなものは素直に好きって言うようにしていたから「それなら茜音はこういうのも好きなんじゃない?」って教えてくれたんだと思います。

――そして高校3年生のときに「ANISONG STARS」のグランプリに輝きます。

正直、背水の陣でした。それまで中学・高校とオーディションに落ちまくっていたし、もう高校3年生だったので「これに落ちたら大学受験をしよう」って考えていて。本当にラストチャンスだったんです。

――でも「ANISONG STARS」はバンダイナムコアーツアミューズバンダイナムコライブクリエイティブの共催企画。正、熊田さんが受けてきたオーディションの中でも屈指の規模だったのでは?

もうそれまでのオーディションとは全然別モノでした! 私、最終オーディションは私たちが歌ったり、踊ったり、自己アピールしたりしている映像を収録しておいて、それを審査員の方たちが別の日に観て審査するのかな? と思っていたんですよ。

――でも当時のニュースサイトには影山ヒロノブさんや畑亜貴さんに囲まれた熊田さんの写真が載ってましたよ?

そうなんですよ! 舞台に出たら、目の前に影山さんや畑さんがいらっしゃって! だから私、最終審査の舞台に上がるときの動きが相当ヘンだったと思いますよ。「あれっ? 本物の方々がいる!」ってビックリしたから(笑)。でもそれですごくテンションが上がったんです。

――ハートが強いなあ。緊張してもおかしくないのに。

直後には「いえーい!」って気持ちになってました(笑)。有名人の方に会える機会なんてそうそうないから「やった! この人たちに見てもらえる」ってすごく気合いが入って。最終審査は全然緊張しなかったんです。あと「ANISONG STARS」ってオーディションなのに衣装も用意してくださっていたし、メイクさんも入ってくださっていたし、しかもお弁当まで用意されていて……。

――至れり尽くせりだ(笑)

特にメイクさんがいることにめっちゃテンションが上がったんです。「プロにメイクしてもらうなんて、私、芸能人みたいじゃん!」って(笑)。ただ、そうやってメイクさんがいらっしゃったから、主催者の方からは「最終審査にはノーメイクで来てください」って言われていて。だからホントに起きて顔を洗ったまんまの状態で会場に行ったんですけど、ほかのファイナリストの子は意外とキレイにして来ていて……。

――みなさん、せめて髪の毛くらいはとかしていた(笑)

なのに私だけボサボサのくせっ毛のままで(笑)。なのでメイクさん2人がかりで髪の毛を伸ばしてもらうところから私のメイクは始まったんたんですけど、そのおかげでメイクさんとめっちゃ仲良くなれたし、オーディションを受けていたほかの子たちも「スゴい髪型ですね」って笑顔でツッコんでくれたりしたし。最終審査はすごく楽しかった印象があります。

――それが勝因だったりします?

かもしれません。オーディションに残っている子たちのことをライバル視するんじゃなくて、一緒に最終審査を受ける仲間だと思っていましたから。実際ほかの子に「うわっ、メッチャかわいいですね!」って話しかけたり、お互い「がんばろうね!」って言い合ったりっていう空間だったから、緊張や「あの子ちより上手に歌わないと!」みたいなプレッシャーを感じずに、そのとき最高のパフォーマンスができたんだと思います。


 

――そして2017年に「ANISONG STARS」に優勝して、ソロ名義のシングルSunny Sunny Girl◎』がリリースされるのが2020年。足かけ3年の時間がかかっています。この期間って長かった?

あっという間でした。オーディションに合格はしたものの、自分には一人前のプロとしてやっていく実力がないことも把握していたので。だからこそあらためてボイトレを受けたり、初めて演技のレッスンを受けたりするのがめっちゃ刺激になっていて。今まで知らなかったこと……いち視聴者としてアニメを観ていただけではわからなかった、プロならではのテクニックをひとつひとつ知っていくのがすごく楽しかったんです。だから最初の1年は本当にあっという間だったし、アニメの役をいただくようになってからも「現場に行かないとこんなにわからないことってあるんだ!」「それなら余計にがんばらなきゃ」っていうことがさらに増えましたし。

――その「できない」「知らない」ことに傷つくことは?

なかったですね。もちろんアフレコがうまくできなくて、家に帰って泣くことはあるんですけど、それも1日だけ。すぐに「このヘコんでいる時間はもったいないな」という気がしちゃって。

――それこそオーディションに落ちたときと同じ気持ちに?

そうですそうです。立ち上がれなくなるくらいヘコんでいると、次の行動を起こせなくなっちゃいますから。あと私、怒られることが好きなんです……って、あれっ? なんか違うな?

――確かに違うと思います(笑)

でも怒ってくれるということは私に関心を持ってくれている、私を成長させようとしているってことじゃないですか。だから、みなさんの言葉はきっと私を形作るカケラになるはずだから、しっかり話を聞こうと思っていました。

――ここまでお話を聞いていて、デビューシングルリード曲が「Sunny Sunny Girl◎」になった理由がよくわかりました。

「理由」ですか?

――タイトルもそうだし、歌詞も〈全開キュートに青春満喫大賛成〉、〈しっちゃかめっちゃかドッキリ満載 Wonder Wonder Days〉、〈神さまに感謝して 思い切りたのしむよっ〉。メロディアレンジも相まって、まあポジティブでアッパーな曲じゃないですか。

そうですね。

――だから「こんな曲を歌える人ってどんな人なんだろう?」と思っていたんですけど「あっ、なるほど。これは熊田さんの曲だわ」と。

ありがとうございます! 確かに一瞬だけヘコむことはあるんですけど、根底はめちゃくちゃポジティブなので。ヘコむだけヘコんだら浮上するのはめっちゃ早いんです。だからこの曲を歌ったことで「あっ、確かに私は『Sunny Sunny Girl◎』なのかもしれない」ってあらためて思うようになった。この曲に出会ってさらに自分の考え方がいい方向に転んだ感じはあります。

――実際に作編曲の山口朗彦さんから、ヌケのいいギターポップベースにはなっているけど、キラキラしたシンセが鳴り響くこの曲が届いたときの印象は?

すごく好きです。明るいんだけどそれだけじゃない……なんて言えばいんだろう? リズムが転がるように展開したり、メロディも実は複雑なんだけど、でもスムーズだったり、すごく気持ちいいんですよね。そのあと、こだまさおりさんの歌詞が届いたんですけど、これまた「スゴい!」ってなって。

――確かにコミカルだし、言葉のリズムがいいし、明るいし、スゴい歌詞ですよね。しかも熊田さんのキャラクターを言い当てている。こだまさんと事前の打ち合わせがあったりは?

直接お話はしていないんですけど、レーベルスタッフさんを通じて私の気持ちや人物像は伝えてもらいました。でもまさかここまでの歌詞が届くとは思っていなくて。明るくて前向きなんだけど、前を向いているだけではなくて。〈みんなおいで 一緒に遊ぼう!〉とか〈この指とまれ!〉とか、ちゃんと隣にいる人たちを大切にする優しい言葉もあって。しかもこの曲ってメロディのおかげもあるんですけど、歌っているとすごく口が気持ちいいんですよ。

――じゃあレコーディングスムーズだった?

いえ。ソロでのレコーディングは初めてだったのですごく難しかったです。

——TVアニメライフル・イズ・ビューティフル』の主演声優のユニットライフリング4でのレコーディングはあったけど。

ライフル・イズ・ビューティフル』の渋沢泉水ちゃんという、ちょっとお姉さんっぽいキャラクターとして歌うことはあったんですけど、自分として歌うとなると違うアプローチで歌わなきゃいけない。熊田茜音として歌うことが難しかったです。

――音源を聴くにスムーズに歌っているように感じました。どうやってその難しさを克服しました?

まっすぐ言葉を届けたいし、聴く人に元気になってほしい」とディレクターさんにお伝えしたら「それなら身体全体を使って……お腹から声を出して地に足付いた声を出さなきゃダメだよ」って言われて。正直、そう歌える身体はできあがってなかったんですけど腹筋をプルプルさせながら……1曲歌うとめっちゃ疲れるくらい身体全体を使って歌うようにしました。だからこれで「熊田茜音の歌い方」を見つけられた気がします。ライフリング4の泉水ちゃんの歌声を気に入った方にも、これを聴いてビックリしてもらいたいです(笑)

――そしてこの曲は熊田さんのソロデビュー曲であると同時にTVアニメ織田シナモン信長』のオープニングテーマ、つまり今、毎週「熊田茜音の歌」がテレビから流れています。

うわっ! 今までそういうふうに考えたことなかった! どうしましょう!?

――いや、その心境をうかがいたいんですけど(笑)

そうだった! そうだなあ……ワクワクするし、ドキドキもありますね。アニメ自体すごく大好きな作品ですし。いい意味でおバカな作品だから(笑)

――イヌが女の子スカートの中にときめコメディですもんね(笑)

私も出演もしていて、しかもパンツを見られる側なんですけどね(笑)。でもそんなギャグ要素たっぷりの作品を観る前にこの曲を聴いてテンションを上げてもらえたらいいな、と思っています。

――で、カップリング1曲目は作詞・作曲が佐伯youthKさんで、編曲が睦月周平さんの「YOUR FREE STAR」です。

私がアーティストとして一番伝えたいことがすごく素直に言葉になっている曲だと思っています。

――こちらも作詞の佐伯さんにはスタッフさんを通じて人物像を伝えた?

そうなんですけど、私自身が気付いていない熊田茜音像というのもあると思ったので、周りのいろんな方にお話を聞いていて、それもお伝えしました。自分が思う熊田茜音像とみなさんの熊田茜音像が混じり合った歌になっていると思います。

――その結果生まれた「伝えたい素直な言葉」って?

〈叶えたいから叶える〉とか〈伝えたいなら伝わる〉とかってめっちゃポジティブじゃないですか。でもそのためにまずは一歩踏み出そうよ、っていう歌詞になっているところですね。叶えたい夢はきっと叶うんだけど、そのためには自分でちゃんと一歩を踏み出して行動しないとなにも始まらないから。私の歌がその一歩を踏み出す力になれたらいいな、と思っています。

――—他方、楽曲については? ゆったりとフォーキーなムードから始まるんだけど、最終的には〈Yeah〉をシンガロングするスケールの大きな曲へと展開しています。

それもすごくいいなと思っています。「夢を叶えるためには一歩踏み出さなきゃ」っていうと説教くさく聞こえるかもしれないけど、実際の曲はそれこそ〈Yeah〉ってみんなで盛り上がれるから、堅苦しく考えずに楽しめる。それも私らしいなと思ったし、その〈Yeah〉の歌詞なんかに私が聴いてきた洋楽アーティスト的なニュアンス混ぜてみたり、いろいろ実験することができました。

――へえ。「Sunny Sunny Girl◎」では腹筋をプルプルさせていたのに。

ディレクターさんにも「1曲録ってだいぶん慣れたみたいだね」って言ってもらえたので「じゃあ、今度はどういう表現にしようかな」って考える余裕が生まれたんだと思います。

――そしてカップリング2曲目の「First Step, Fun Step!」は前の2曲から一転。ちょっと渋めのヒップホップトラック。だから「こういう温度感の曲も歌える人なんだ」って驚きました。

でもテイラー・スウィフトなんかを聴いていたこともあって、こういうメロウな感じの曲は好きなんです。あとこの曲の歌詞は畑亜貴さんが書いてくださってるんですけど……。

――そうですね。「ANISONG STARS」の審査員として熊田さんをプロの世界にフックアップした張本人である畑さんが自ら作詞しています。

オーディションに受かったときから「いつかは畑さんに書いてもらいたい」と思っていたんですけど、こんなに早く叶うんだってビックリしました。

――その畑さんのリリックはいかがでした?

「畑さんって私のお母さんだっけ?」って錯覚しました(笑)。そのくらい私がオーディションに受かってから今に至るまでのストーリーを丁寧に追ってくださっていて。畑さんって実はずっと私の隣にいたんですかね?

――違うと思います(笑)。そこは一流の作詞家ならではの想像力のなせる業かと。

スゴいなあ。私、歌詞が届くとまずは朗読してみるんです。そうすると言葉の意味がすっと身体に入ってきて、歌いやすくなるし、伝えたい想いが整理されるので。今回のシングルの3曲のうち、その作業が一番少なかったのがこの歌詞でした。

――読み込まなくても思い当たるフシがあった、と。

「あっ、これって私のことだ」って。だからこの曲を3番目にレコーディングしたっていうこともあったとは思うんですけど、それでも一番感情を乗せてスムーズに歌えました。〈悩んだって泣いたって〉〈遠くへ行きたいと 一歩目を踏み出した〉って。

――まさにここまでのインタビューでうかがってきた熊田さん像のことですもんね。

そうなんです。

――そうやって畑さんやこだまさんや佐伯さんといった名だたる作詞家に人物像を言い当てられることに照れたりは?

確かに照れるけど、それ以上にうれしいですね。熊田茜音をちゃんと見てくださっている方がいることがわかりましたから。

――そして2月2日には東京・LOFT9 Shibuyaで初めてのソロイベントがあります。このイベントには「熊田茜音をちゃんと見てきた人」「ちゃんと見たい人」が集まります。

ホントに集まってくれるといいなあ、とは思っているんですけど……。

――でも今だって、Twitterのフォロワーもたくさんいるし、その方たちから応援メッセージが届いたりもしてますよね?

確かに「出ているアニメ、面白かった」「MV観たよ、よかったよ」っていう言葉をすごくもらうし、それがすごく力になってはいるんですけど、その人たちと直接お会いしたことはまだないんですよ。

――2月2日が初イベントならそうなですよね。

だから「本当にみなさんっていらっしゃるのかな?」と若干思っているんですけど……。

――うれしい言葉を自動返信してくれるBOTなのかもしれない、と(笑)

なのでみなさん、ぜひお顔を見せていただけるとうれしいです!


取材・文:成松 哲 撮影:福岡諒祠