20世紀に起きた二つの世界大戦の記憶が徐々に薄れていくなか、ミレニアル世代(20-35歳の成人)は戦争をどう捉えているのでしょうか?残虐な行為を禁じたり、民間人を守るための国際法や条約についてどれだけ知っているのでしょうか?そして、それらの法や条約に価値を見出しているのでしょうか?赤十字国際委員会(ICRC)は、16の国と地域のミレニアル世代16,000人に対して、戦争に関するアンケートを実施したところ、回答者の大半が壊滅的な戦争が現実的に起こる可能性は高いと語り、戦時の暴力に歯止めをかける必要がある、と考えていることがわかりました。

ジュネーブ(ICRC)– ミレニアル世代は、壊滅的な戦争が彼らの生涯に起こりうると考え、大多数は今後10年以内に核攻撃が実施される可能性がある、と回答しました。

ICRCは2019年、16の国と地域(平時、戦時にある国・地域が約半分ずつ)において、20-35歳のミレニアル世代16,000人以上を対象に調査を実施。紛争そのものや、未来の戦争、そして敵の戦闘員に対する拷問行為など国際人道法が問う価値観について、彼らの考えを聞くことが目的です。

調査結果は、ミレニアル世代が将来に対して不安を抱き、世界的な緊張が高まることでその不安が一層高まっていることを示しています。
半数以上が「10年以内に核攻撃が起こる可能性がある」と回答
回答者の47%は「生涯のうち第三次世界大戦が起こり得るだろう」と考えています。また、「核兵器の使用は決して容認できない」と84%が回答している一方で、「10年以内に核攻撃が起こる可能性がある」と答えたのは、54%に上りました。

これに対して、ICRCのピーターマウラー総裁は次のように語っています。「こうしたミレニアル世代の予感は、現世界で進む分極化と非人間化の流れを反映しているのかもしれません。第三次大戦についての彼らの予感が的中したら、国や地域の苦しみは計り知れないでしょう。この結果は、人類を守る戦時のルールを将来にわたって守る必要性を再認識させてくれるリマインダーです」。
4人中3人が「戦争の多くは回避できる」とし、「戦闘手段に何らかの制限を設けるべき」と回答。

救いは、ミレニアル世代の74%が「戦争は避けられる」と考えていて、ほぼ同数(75%)が「戦争の手段や方法に規制を課すべき」と回答したことです。

一方で、看過できない傾向も調査で明らかになりました。国際法に謳われている基本的な人間の価値に対する尊重が欠けていることです。拷問を禁止する国連条約についての説明があったにも関わらず、37%が「ある状況下では拷問も容認できる」と回答しました。さらに15%が「民間人が犠牲になったとしても、勝つためであれば司令官は何をしてもいい」と答えました。
拷問を禁ずる国連条約について説明を受けた後でも、約3人に1人が「ある状況下では拷問は容認できる」と回答。
さらに、ある一つの事柄が明白となりました。戦争を経験した人は戦争を忌み嫌う、ということです。シリアでは、98%が核兵器の使用を、96%が化学・生物兵器の使用を「容認できない」と回答しました。そして85%が、「捕虜となった敵兵に親族との連絡手段を与えるべき」と答えました。これらの質問において、16の国と地域の中で最も高い数字を示したのがシリアでした。

「あなたの友人や家族が戦争の惨禍で苦しんでいるのを見れば、どんな兵器にも一切関わりたくないと思うでしょう。シリアウクライナアフガニスタンのミレニアル世代からの回答で私たちは、戦争の体験によって人々は戦争を忌み嫌うことになる、と確信しました」とマウラー総裁は付け加えました。

「将来戦争が勃発する可能性は低い、または無い」と答えた割合は、戦争の影響を受けている国の回答者(46%)の方が、平和な国に住む回答者(30%)より高かったのは特筆すべき傾向です。これは、戦時下にいる人々の高い希望の表れでしょう。ウクライナの回答者の69%は、自国の戦争は今後5年以内に終わるだろうと信じています。

核兵器核兵器を巡るどっちつかずの議論が調査にも見て取れました。16の国・地域では、少なくとも3分の2が「核兵器の使用は決して受け入れられない」と答える一方で、過半数の54%は「10年以内に核攻撃が実施される」と考えていることが判明しました。また、同じく過半数(54%)が「核兵器は禁止されるべきだ」と回答しています。

シリアでは、98%が「核兵器の使用は決して受け入れられない」と答え、次いでコロンビア(93%)、ウクライナ(92%)、スイス(92%)と続きます。最も低かったのはナイジェリアの68%、米国は73%でした。

全体として、回答者の5人中4人が「核兵器の存在は人類に対する脅威である」とし、64%が「核兵器を持つ国家はそれらを排除すべきだ」と考えています。

ミレニアル世代が最も懸念すること:将来の核攻撃に関するミレニアル世代の見解にもかかわらず、核兵器については12項目中、最も不安が少ないことが分かりました。一番懸念することは腐敗(54%)、次いで失業率(52%)、貧困(47%)、テロの増加(47%)、戦争と武力紛争(45%)と続きます。核兵器は24%でした。

未来の戦闘:将来の紛争の問題に関して、36%が「人間が制御していない自律型ドローンやロボットは、戦争や武力紛争において民間人の犠牲者を増やす」と答えました。かたや、32%は「民間人の犠牲者を減らす」と言い、24%は「状況は変わらない」と答えました。

民間人の犠牲者:78%が「戦闘員は可能な限り民間人の犠牲を避けるべきだ」と答えたました。平和な国の方(83%)が、紛争国(73%)よりも高かったのが特徴です。

メンタルヘルス全体的に73%が「紛争被害者のメンタルヘルスのニーズを埋めることは、食料・水・避難所のニーズを埋めるのと同じくらい重要である」と答えました。最も割合が高かったのはシリアで87%、最低はイスラエルの60%でした。

拷問:55%は「敵の戦闘員への拷問は決して受け入れられない」と答えました。最も高かったのはシリアコロンビアで、いずれも71%。最低はイスラエルで23%、ナイジェリアが29%でした。

ジュネーブ諸条約:75%が「ジュネーブ諸条約の成立から70年経った現在、戦争の手段や方法に制限を課す必要がある」と考えています。全体で見ると、54%が「ジュネーブ諸条約について聞いたことがある」と回答し、国別だとシリア(81%)が最も高く、ロシアウクライナ(いずれも76%)、フランス(75%)、スイス(74%)と続きます。

調査方法:
今回の「ミレニアル世代にとっての戦争」に関する調査は、ICRCがイプソスに委託し、2019年6月1日から10月7日の間に混合方式を用いて、以下の16の国と地域で実施されました。

アフガニスタンコロンビアフランスインドネシアイスラエルマレーシアメキシコナイジェリアパレスチナ自治区ロシア南アフリカシリアスイスイギリスウクライナ、アメリカ。

20-35歳の成人への調査は16,288件に及びました。

それぞれの国・地域のミレニアル世代の人口構造に沿った結果にするべく、年齢、性別、地域、および住居のタイプ別に対象を設定しました。

備考:「ミレニアル世代にとっての戦争」のより詳細な結果は、以下でご覧いただけます。www.icrc.org/millennialsonwar

また、リクエストに応じて、完全な国別データが閲覧可能です。

本調査に関連する映像や、ミレニアル世代へのインタビューはこちら:
www.icrcnewsroom.org

素材は、ニュース番組やオンライン配信などで無料で使用可能です。
その際は、提供元として、赤十字国際委員会と明記ください。

‥ちなみに日本は?: (ご参考まで)
私たちの今回の調査とは別に、2017 年にNHKが「平和に関する意識調査」を行っています。当時18、19歳で、現在ミレニアル世代の503人にアンケートを取ったところ、「日本が戦争やテロに巻き込まれたり、他の国から侵略を受けたりす る危険性がある」と回答したのは91.2%、「危険性は無い」が8%でした。
また、「日本が核兵器を保有しても良い」が13.9%、「保有すべきではない」が85.5%、との結果が出ています。
詳細はこちら(外部サイト):https://www3.nhk.or.jp/news/special/wakamonotoheiwa/research/20170809.pdf

配信元企業:赤十字国際委員会

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