1月29日吉沢亮さんが「ZIP!」(日本テレビ系)の2月金曜パーソナリティーを務めることが発表され、ネット上にはそれを伝えるニュースが飛び交いました。さらに、その翌々日には、清原翔さんが「めざましテレビ」(フジテレビ系)の2月マンスリーエンタメプレゼンターを務めることが明らかになりました。今をときめく人気俳優が立て続けに、朝の情報番組にマンスリーキャストとして起用されたのです。

 1月を振り返ると「ZIP!」の金曜パーソナリティーは上白石萌歌さん、「めざましテレビ」のマンスリーエンタメプレゼンテーターはミルクボーイが務め、番組を盛り上げていました。

 また、「スッキリ」(日本テレビ系)でも、「WEニュース」というコーナーにマンスリーMC、「クイズッス」というコーナーに天の声ゴールドという週替わりのMCを採用しています。

 なぜ、朝の情報番組はこのようなマンスリーキャストを積極的に採用し、専門外であるはずのタレントたちは受け入れているのでしょうか。

活動ジャンルのボーダーレス化が追い風

 まず、情報番組の制作サイドマンスリーキャストを積極的に採用している背景について。

 マンスリーキャストという手法はかなり前からありましたが、現在のような「俳優や芸人がニュースを読む」などの本格的な出演ではなく、顔見せや番宣の意味合いが色濃いものでした。

 しかし、マルチな活動をする芸能人が増えて、タレント、俳優、芸人、ミュージシャンなどのカテゴリーが年を重ねるごとにボーダーレス化。それを見る側の人々も、芸能人が別カテゴリーの役割に挑むことを自然なものとして受け止めるように変わったのです。

 だからこそ、来年、大河ドラマの主演が控える吉沢亮さんや「M-1グランプリ」で優勝したばかりのミルクボーイは、失敗を恐れて慎重になりそうな時期であるにもかかわらず、「リスクよりも挑戦」という選択肢を選べたのでしょう。かつては「俳優は演技だけをやるべき」「芸人は情報番組に出たらつまらなくなる」などの考えが一般的だっただけに、オファーを出す側も受ける側も、やりやすい状況になっているようなのです。

 制作サイドにしてみれば、旬の人に出てもらうことで注目度を高められるほか、番組全体のムードだけでなく、普段のコーナー一つをとっても新鮮な印象を与えられるなど、「マンネリを避けられる」のが大きなメリット。特に、朝は各局横並びで情報番組を生放送しているだけに競争は熾烈(しれつ)で、「裏番組から視聴者を奪うきっかけや起爆剤が欲しい」という理由もあるそうです。

 昨年、「めざましテレビ」のマンスリーエンタメプレゼンターを林家たま平さんと眞栄田郷敦さんがリレーするように担当しました。2人は昨夏のドラマ「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)でラグビー選手を演じたため、その後のラグビーブームに乗る形で起用されたのです。

 また、「WEニュース」のマンスリーMCをBiSHのアイナ・ジ・エンドさん、プロレスラーオカダ・カズチカさんが務めたことからも、「マンネリを避け、新鮮な印象を与えよう」という狙いが伝わってくるのではないでしょうか。

生放送の進行役という貴重な経験

 タレント側にとっても、情報番組へのマンスリー出演は出演作を集中的に宣伝できるチャンスである上に、本業につながる経験値アップが見込まれ、ファン層を広げることもできるなどいいことずくめ。

 たとえば、俳優は情報番組にゲストとして出演することはあっても、進行役を務めることはめったにありません。コーナーの進行、ニュース読み、レギュラー同士のトークなどを生放送の中で行うわけですから、その経験値は俳優人生にも生きるはずです。

 また、朝と夜の視聴者層は重ならないことも多く、最近では「テレビは朝しか見ない」という人も。そういう人に興味を持ってもらえればファン層拡大につながりますし、俳優なら朝ドラや大河ドラマなどの「幅広い視聴者層の認知度が求められる作品からのオファーを引き寄せる」とも言えます。

 その他にも、「既存のファンにこれまでとは異なる表情や新たな魅力を見せることができる」「朝のさわやかなイメージがつくことで、CMオファーにもつながりやすい」などのメリットがあり、期間限定なのでスケジュールとしても気持ちとしても受けやすいことも、積極的な出演につながっています。

 今後ますます「情報番組のパーソナリティーやプレゼンターは初めて」というタレントが増えることは間違いないでしょう。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

吉沢亮さん(2019年4月、時事通信フォト)