農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行っている農研機構が、農作物の病気の判断の根拠となる画像の特徴を可視化できる人工知能(AI)を開発した。

これまでにも、AIとビッグデータを活用した農業研究を本格化させてきた同機構だが、その研究成果として、画像の特徴を可視化できる新しいAIの開発に結びつけた。

・95%以上の高精度で診断可能に

ジャガイモの葉を利用して行われた今回の研究では、判断の根拠を示した上で病気か否かを判別するAIという点が大きな特徴。AIに、葉の画像データから植物の葉の画像データから「健全」、「病気」、および「共通部分」の特徴を、3つの領域に分けて学習させ、それぞれ3つの領域の特徴を抽出。
この結果、判断の根拠を明確に可視化した上で病気かどうかを判定できるようになったという。

・実用化もすぐそこ

同研究では、ジャガイモで95%以上、ピーマン、トマトの各1種類の病気についても90%以上の精度で診断を打ち出すことに成功。実証試験などを進め、2020年度にも実用化を目指しているとのこと。

病害虫による農作物への被害は非常に深刻な問題。世界的にみても、農業における病害虫による潜在的損失額は、年間5,400億ドルという試算もあるほどだ。

今回の研究は、判断根拠となる画像の特徴を可視化できるという点が大きなポイントで、この結果、今までAIの導入の際に問題だと指摘されていた「学習に基づく判断の根拠を説明できない」といった課題が解決されるとみられている。

このため、同研究は、農業分野だけではなく、根拠が説明できるAIが必要な広い分野への活用にも期待の声が上がっている。

農研機構