日本各地の産業や素材を取り入れた商品開発を行い、地元のスターバックス限定で販売する「JIMOTO made Series」。13回目となる今回は、京都ならではの文化が息づく京都市東山区を舞台にJIMOTO made Seriesを展開する。老舗「島田耕園人形工房」の伝統ある「御所人形」と、祇園で受け継がれている「福玉」の文化を組み合わせたJIMOTO made Series HIGASHIYAMA「縁起物チャーム」が2月3日(月)から、京都祇園ホテル店、京阪祇園四条駅店、京都二寧坂ヤサカ茶屋店の3店舗で販売される。なぜ御所人形なのか、なぜ福玉なのか、商品に込められたストーリーを密着取材した。

【写真】つぶらな瞳がかわいい、二寧坂ヤサカ茶屋店に鎮座する黒招き猫

■ JIMOTO made Series新作は、幸運を招く縁起物チャーム!

スターバックス コーヒー 京都二寧坂ヤサカ茶屋店のカウンターには黒い招き猫が鎮座する。これは、店舗オープンの際に、店舗の前にお店を構える島田耕園さんから贈られたもの。スターバックスグリーンの前掛けを身にまとう招き猫のかわいらしさに、来店した客から「どこに売っているの?」と聞かれることも多いという。京都では幸運を祈る気持ちを込めて、大切な人に縁起物を贈る習慣があると言われている。

JIMOTO made Series HIGASHIYAMA「縁起物チャーム」は、そんなふうに京の人々の生活に当たり前に溶け込んでいる、縁起物の文化から生まれた。

JIMOTO made Series HIGASHIYAMAで取り扱う縁起物チャームは5種類。幼児や女性のお守りで、魔除けにもなる「駒犬土鈴」に、代表的な御所人形「這子(はいこ)」。さらに3種類の「招き猫土鈴」だ。「招き猫土鈴」は、クロ、シロ、ミケと、それぞれ店舗ごとに種類が違うものが入る。

■ 縁起物チャームにもなっている健やかさを願う縁起物、御所人形とは

御所人形とは、江戸時代初期から京都で作られている人形。天皇が、親王や皇女の健やかな成長を願ってお年玉として贈ったり、御所への贈り物の返礼品として使われていた。江戸時代中期に一般庶民にも普及し、宮廷や公家など高貴な人々が愛したことから「御所人形」と呼ばれるようになったと言われている。

今回のJIMOTO made Seriesは、御所人形の老舗「島田耕園人形工房」とコラボレーション。縁起物チャームには、代表的な御所人形「這子(はいこ)」も登場する。「這子」は、健康的な肉体の赤子がハイハイする姿を現している。生まれてきた子の災いを、身代わりとなって払うように、今も赤ちゃんの枕元に置く風習が残っているのだ。

「御所人形では今を生きる人間の想いと、古代からのカルチャーが一緒になったものを表現していきたい」と島田さん。縁起物チャームには、かわいらしく吉祥感がある御所人形の這子や、女性や子供のお守りと言われる駒犬、人との縁をつなぐという左手を上げた招き猫など、現代でも親しみやすいモチーフが選ばれた。

■ 花街・祇園で今も大切にされている「福玉」とは

縁起物チャームが入るパッケージは、福玉を模したカプセル。アイデアの元になった福玉は祇園町独特の風習で、大切な人に贈る縁起物。パッケージを検討する中、祇園町の福玉文化がアイデアとしてあがり、この福玉カプセルが誕生したという。

年末の祇園で、お店の天井から紅白の玉がぶら下がっているのを見かけることがある。これが福玉。中に縁起物が入った紅白でできた丸い玉で、もともと祇園が発祥といわれ、今でも祇園には、福玉を販売するお店が数店舗残っている。

祇園に伝わる文化とは、どのようなものだろうか。地域にゆかりのある方々に話を伺った。福玉はもともと、年末に祇園町の子どもたちや舞妓らが、お年玉としてもらっていたもので、京都の花街の中でも祇園だけに伝わる独特の文化。除夜の鐘が鳴り終わってから割って開け、中身によって新年の運気を占う風習もあったのだとか。年の瀬に大切な人へ贈る“かわいい縁起物”なのだ。

南座の前に店舗を構える井澤屋さんでは、今でも手作りで福玉を作る。「子供のころは大晦日になると、福玉を30〜40個手に持って配達していたんですよ」と、社長の井澤美紀子さん。お茶屋遊びが盛んだった頃は、たくさんの福玉を抱えて歩く舞妓さんの姿が見られたのだとか。福玉は、舞妓の人気のバロメーターでもあった。

■ 祇園の縁起物文化と京都人が語る地元愛

もう一方は、祇園石段下商店街 理事長で、京寿司の老舗「いづ重」の北村典生さん。「福玉は子供の頃、お年玉としてもらっていましたね。昔は色々なお店で福玉を売っていて、12月に入って、お店の天井に福玉がたくさん下がると、子どもながらに『お正月が来る』と、うれしい気持ちになっていました」と語ってくれた。

「祇園町は昔からの住民が多く、周りはみな知った人ばかり。伝統を守るという意識も強いのです」と北村さん。祇園は代々続く客商売の土地で、お客さんも代々の人が多いという。「私たちにとって、縁とは当たり前にあるもの。先祖代々のいろいろなつながりがあって、今その人がいるという考え方です」と話す。祇園の人々は、自分たちのルーツを大事にしながら、地域の伝統を継承しているのだ。

「昔はみんな家業として祇園で商売していたのが、最近は地域に住まずに、商売が企業化している部分もある。もっとつながりを濃くしたいですね」と北村さん。今までは意識せずとも存在していた縁が、時代とともに希薄になってきているのだという。

縁起物チャームの制作を担当する、島田耕園人形工房の五世島田耕園さんにもお話を伺った。京都で御所人形を店頭で制作、販売しているのは、現在は島田さんの工房だけだという。「今回のお話をいただいたとき、スターバックスの『人と人とのつながりを大切にする』や『コーヒーを通じて地域や社会とつながり、貢献する』という企業理念に共感しました。この人と人との縁をつなぐということをどうやって商品で表現するかとなり、縁起物チャームを祇園の文化である福玉に入れることを提案させてもらいました」と、福玉カプセルが生まれた経緯を語ってくれた。

「伝統工芸だからといって、昔と同じ物を作っても仕方がないと思うのです。ただ技術を継承するだけではなく、その時代の時代性を自分のフィルターを通して表現する。命、誕生、生命力に意識を向けて作っています。時代によって大切にするものは変わってくる。それを未来に向けて、どう表現していくかが大事だと思っています」と語る島田さん。伝統とはそのまま引き継ぐだけではなく、その時代の空気を取り込んで変化させていくことが大事なのだ。

「お客さんに縁起物の文化や、そこに込められた意味をしっかりと伝えてほしい」と、今回の縁起物チャームに込めた思いを語ってくれた。

■ パートナーに商品のお披露目!福玉のワクワク感を体感

「JIMOTO made Series HIGASHIYAMA」の縁起物チャームを販売する3店舗の店長をはじめとした、近隣のパートナーたちが商品のお披露目に参加する。

今回は島田さんのご自宅と工房で、パートナーツアーを実施。JIMOTO made series HIGASHIYAMAの縁起物チャームを販売する3店舗の店長をはじめとした、近隣のパートナーたちが集合した。まずは工房の見学。御所人形の起源やいわれを聞きながら、実際に御所人形を制作するところを見学。制作風景に期待が高まる。

次は、御所人形や福玉について話を聞く。実物の福玉も登場し、縁起物をあげたり、もらったりすることで、新しい年のご縁を大事にする祇園の文化が紹介された。

縁起物チャームのストーリーを知り、ますます愛着が増したパートナーたち。パートナーツアーを終えて「目に見えない部分に隠された縁起物のストーリーを、パートナー全員が同じ温度で共有し、お客様にも伝えたい」、「島田さんの想いやスターバックスのミッションを、店舗のパートナーたちにもしっかりと伝えたい」と興奮気味に話す。「縁起物がもし割れてしまったときは、身代わりになってくれたということです」と奥さんの島田啓子さん。それを聞いたパートナーは「はかなさの中に美しさがある。そういうストーリーもお客様に伝えられれば」と目を輝かせていた。

「福玉も縁起物もたいそうなものではなく、あたり前にあるもの。あまり構えずに祇園町ならではのたわいもない楽しさを、お客さんにも感じてほしい」と島田さん。

昔ながらの習慣や文化が今も根付く京都では、今もそれを受け継いで伝えていく人たちがいる。地元の産業、素材を取り入れた商品で、地域の素晴らしさを伝える「JIMOTO made Series」。スターバックスでは今回の縁起物チャームを通じて、大切な人に幸せを届ける縁起物や福玉の文化を、たくさんの人に伝えていきたいと考えているのだ。

「文化や習慣が時代に合わせて少しずつ形を変えながら伝わっていくように、スターバックスもこのご縁を大切に、進化しながら東山で100年続けて行けたら」。パートナーからは、そんな声も聞こえてきた。手軽に使える縁起物チャームを通じて、カジュアルに京都の文化を楽しんでほしい。(東京ウォーカー(全国版)・二木繁美)

左から各店共通の縁起物チャーム「駒犬土鈴」、「這子(はいこ)」、さらに店舗限定の「招き猫土鈴クロ」、「招き猫土鈴ミケ」、「招き猫土鈴シロ」