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point
  • タバコの吸い殻からも有害物質が空気中に放出されていることがわかった
  • 温度が上がるほど、有害物質の排出量が増えるため、夏場の吸い殻の破棄は重要

これまでタバコの健康に与える影響の研究は主に、喫煙中に発せられる煙に対して行われていました。

一方で、喫煙後の吸い殻が強い匂いを発することは知られていても、成分の分析などの研究は盲点になっていました。

そこで今回新たに、タバコの吸い殻だけに注目した研究が行われた結果、タバコの吸い殻からも有害物質が空気中に放出されていることがわかりました。

研究内容はアメリカ国立標準技術研究所の研究者Dustin Poppendieckらによって「Science of The Total Environment」のボリューム712に掲載される予定です。

Influence of temperature, relative humidity, and water saturation on airborne emissions from cigarette butts
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969719364186?via%3Dihub

吸い殻からも有害物質が出ていた

タバコの吸い殻を放置すると、想定外の有害物質を吸い込むことになる/Credit:pixabay

調査にあたっては、まず2100本のタバコが消費され、新鮮な吸い殻として検出器にかけられました。

もちろん研究者たちが自分で吸ったわけではありません。

大量の新鮮な吸い殻をつくるためには、一度に6本が吸える吸引装置付きのロボットが用いられました。

そうして得られた吸い殻の分析を行った結果、吸い殻からは、米国食品医薬品局(FDA)が有害と考えている4つの化学物質(スレチン・2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン・ナフタレン・トリアセチン)及びニコチンが空気中に放出されていることがわかりました。

真夏の灰皿はキケン

縦軸が排出量。横軸が経過時間。吸い殻からのニコチンの放出は20℃よりも25℃、30℃で盛んになった/Credit:International Journal of Indoor Environment and Health

実験では晴れの日と雨の日、夏と冬を想定して、タバコの吸い殻が発する化学物質を、様々な濃度と湿度において計測しました。

結果、温度が上昇すると、いずれの化学物質(スレチン・2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン・ナフタレン・トリアセチン、及びニコチン)も吸い殻から盛んに放出されるようになりました。

特にニコチンにおいては吸い殻から放出される量が多く、5日間で、主流煙と副流煙の合計に含まれる同じ量が吸い殻から放出されている可能性があるとのことです。

そのため研究者たちは、夏の熱い部屋に置かれた吸い殻の山は非常に危険であり、子供や非喫煙者を保護するには空気の入れ替えだけでなく、吸い殻の破棄も重要だと述べています。

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reference: sciencealert / written by ナゾロジー編集部
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