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マスクが必要な人に行き届くのはいつになるのか。メルカリ上では2月6日現在も、定価の10倍を超えるマスクの高額出品が後を絶たない。

同社は4日に「マスクの取引に関するご協力のお願い」を発表。"社会通念上適切な範囲"での取引を呼び掛けるとともに、取引の内容次第では、商品の削除や利用制限などを行う可能性もあると明記している。

この発表を受け、出品ページのコメント欄では「通報しました」の投稿が相次ぐ事態に。ケタ違いの価格設定に憤りを感じた多くのユーザーが、事務局に通報していると思われる。それでもなぜ高額出品がなくならないのか。

「価格面の基準が設定できない」という理由で悪質な"転売ヤー"が野放しに


同社の広報は、4日の発表以降、その内容に基づいて「削除対応した出品物はある」と話す。削除対象の出品は、主に「一人のユーザーが大量出品しているもの」が当たるとした。また、定価を大幅に上回る"高額出品"に関しては

「今後、削除する可能性はある」

と回答していたが、「これまではあまり削除していないと思う」とも語っており、現状は根絶に向けて動いている、といった様子ではない。

削除が進まない理由については「『いくら以下なら良い』などと価格面の基準が設定できないから」という。また、マスク出品の全面禁止については、マスクが法律上の禁止出品物に当たらないことから「今の段階では考えていない」と答えた。

消費者庁は5日までに、国内5社程度の転売サイトなどに対応を要請。既に注意喚起を行ったメルカリにも、さらなる対応を求めたという。相次ぐ高額転売に対しては「本当に必要な人に行き届かなくなっており、問題だ」と見解を述べた。

さらに、マスクの転売行為そのものの全面禁止については

「現状はサイト運営者を処分する法律がないので、各サイトの判断に委ねるほかない」

と答える。これまでのところ、新法制定の動きもなく、危機感を感じていても強制的な介入ができないのが現状という。

「値付けが定価を超えるものは基本的に認めるべきでない」と識者

ITジャーナリストの井上トシユキさんは、高額転売という"犯罪ではない行為"を規制する難しさに理解を示しつつ

メルカリは既に公のプラットフォームみたいなものなので、もっと良識、常識に訴えてもいいのでは」

と提言する。メルカリでは、取引に際して転売者の売り上げのうち10%が手数料として運営事務局に入る仕組みになっている。だが、井上さんは「今のままでは、メルカリの印象は悪くなる一方」といい

「(高額転売が増えて)取引額が上がるのは、メルカリとしては確かに儲けのチャンスと言える。だが、長期的にみれば、今は対応強化したほうが良識的なユーザーの企業イメージは上がるのではないか」

と指摘した。では、具体的にどのように対応強化をすべきなのか。

「値付けが定価を超えるものは基本的に認めるべきでない。芸術作品やフィギュアなどプレミアが付くものは仕方ないが、マスクがこれに当たらないのは明らか」

さらに「ましてや今のような有事のタイミングなら尚更。定価を大幅に超えるマスク出品者にはアカウントを停止するなどの処分をしてもいいと思う」と強調した。

メルカリに続き、ヤフオク!は5日に「マスクや除菌用品の出品について」とする文書を発表。楽天が運営するラクマでも6日に「マスク等の出品購入に関するご協力のお願い」を配信したが、いずれも利用者に節度を保った取引を"お願いする"にとどまっている。