コンタクトプレーの基準を再確認し、長いスパンでの徹底を目指す

 いよいよ開幕が21日に迫ったJリーグ日本サッカー協会審判委員会は6日、今シーズンの判定基準(スタンダード)を説明するべく『JFA Media Conference on Refereeing 2020』を開いた。JFA審判委員長である小川佳実氏、トップレフェリーマネージャーを務める扇谷健司氏などが出席。プロフェッショナルレフェリー(PR)の面々も数名交えての会となった。

 2020シーズンからJ1で採用されるビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に注目が集まっていたが、司会の扇谷氏が力を入れて語ったのはVARについてではなく「コンタクトプレー」の判定基準についてだ。JFAは「正しい接触とはなにか」「サッカーコンタクトとは」をもう一度見直すという。

 要点としては「多少の接触プレーでは恐れず、プレーを続けてほしい」ということ。以前から継続的に言われていることではあるが、扇谷氏が「接触があることを利用して倒れる選手もいる」と現状を指摘するように、まだ完全に徹底できているとは言いがたい。もちろん、守備側のラフプレーを容認するという意味ではなく、判定基準自体もこれまでとは変わらないなかで、「激しくて、フェアで、エキサイティングなリーグにしたい」(原博実Jリーグ副理事)という目的を達成するための指標となる。

 その点で不可欠となるのが、選手の理解と協力だ。審判が説明するのは容易くても、浸透には時間がかかるもの。選手向けのルール講習会だけでなく、“シーズンの半分”を目安に実際の試合を通して選手に伝えていくことになるという。イングランドプレミアリーグに代表されるような“激しさ”を理想とするのなら、根気強く追求していく必要がありそうだ。

変えるのは判断基準ではなく、審判員が持つ“幅”

 一方で、出席したメディアからはプレーを見極める際、審判によって判断基準にバラつきが出ることに対する不安が投げかけられた。この質問に対して、プロフェッショナルレフェリー(PR)の佐藤隆治氏はやんわりと否定。国際主審としても活躍する佐藤氏は、先日行われたU-23アジア選手権でも審判を務めた際のことを例に出し、こう語っている。

「例えばそれぞれの大会で何か基準が違うかと言えば、正直僕は何も変えていないです。もちろん、選手同士のリアクションとか、その試合においての若干の“幅”っていうものは、誰しもあると思います。1本の線で『こうやってやります』とはいかないと思うので。ある程度一定の“幅”というのがあって、その“幅”の中で自分は国内でも海外でも笛を吹いています」

 プレーの見極めの際に生まれる差のことを、佐藤氏は“幅”という言葉で表した。その“幅”には個人差もあれば、リーグによる差異もある。佐藤氏が言うには、それぞれを大きく変えるわけではなく、ほんの少し“幅”の位置を変えていくという解釈になる。小さな変化とはいえ、Jリーグ全体を通して徹底するのは、かなり難しい。扇谷氏の言葉を借りれば、「小さなチェンジで、大きなチャレンジ」だ。

 この変化は審判だけでは成り立たない。選手、監督やコーチ、そして観客やメディア。Jリーグに関わる全員が理解を深めることが理想だが、まずはプレーする選手たちが、Jリーグの目指すところを理解していく必要があるだろう。今シーズンのJリーグは、審判の判断、それに伴う選手のプレーの変化に注目したい。(Football ZONE web編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

Jリーグは「コンタクトプレー」の基準を見直していくようだ(※写真は天皇杯のもの)【写真:高橋学】