日本時間2月10日(月)の朝に授賞式が行われる第92回アカデミー賞。毎年、映画ファンの間で様々な受賞予想が行われるなど、その結果に全世界が注目している。その授賞式に先がけて今回は、賞レースにも精通した映画ライターたちに、様々な角度から主要部門の受賞予想を立ててもらった!

【写真を見る】ダークホース『パラサイト 半地下の家族』が外国映画として作品賞を受賞する快挙も!?

■ 『パラサイト』がダークホースになる可能性が高い(よしひろまさみち)

今年のオスカーは各部門、前哨戦通りの結果になるはず。焦点となるのは作品賞だ。大本命は『1917 命をかけた伝令』だ。PGA(全米製作者組合賞)を制していること、またヴェネチア国際映画祭から始まった2019年のプレ前哨戦には参加しておらず、突然年末に現れて各賞を軒並みかっさらっている勢いで、逃げ切り受賞の可能性の方が大きい。スクリーンで観る楽しみを再確認させてくれた、ワンカット風の緊張感もオスカー向きだ。だが、ここで忘れてはいけないのが、アカデミー賞作品賞の選考方法だ。他の部門が単純な多数決で決まるところ、作品賞のみ順位投票を行い、その中の1つの作品が全体票の過半数を得るまで再計算を繰り返す。すると、PGAの結果とは食い違うことも多い。となると、『パラサイト 半地下の家族』がダークホースになる可能性が高い。目新しさの薄い他候補作に比べ、各国で玄人はもちろん一般の映画ファンも魅了したうえに、SAG(全米映画俳優組合賞)でキャスト賞を受賞し、勢いは充分。監督賞と作品賞で同時受賞が少ないケースとなっている昨今だけに、『1917~』は監督賞止まりでは?と推測する。

ブラピがついに初受賞!そうなってくれたら、かなりうれしい(折田千鶴子)

気持ち的には『フォードvsフェラーリ』と『マリッジ・ストーリー』で占めてほしいのだが…。実際には『1917 命をかけた伝令』が撮影賞なんかも含めて作品賞を取るのだろう。そして全篇1カットを謳った『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)の時と同様、監督賞もサム・メンデス。本当は、それでは少々つまらないので、アカデミー会員が“熱い映画愛”に胸を打たれ、今度こそタランティーノに監督賞をあげようよ、という流れになれば盛り上がるのだが…。主演男優賞はもはや確定路線。大きな話題としては、スカーレットヨハンソンが初にして主演、助演のWノミネート。『マリッジ・ストーリー』の主演で獲ってほしいが、演技のタイプ的にも作品的にも『ジュディ 虹の彼方に』が有利。最大の話題はブラピがついに初受賞!そうなってくれたら華やかだし、スピーチも聞きたいし、かなりうれしい。『パラサイト 半地下の家族』は、国際長編映画賞と名を改めたこちらの部門で落ち着きそう。

■ 保守層が強いアカデミー会員が多様性を意識すれば…?(斉藤博昭)

2年続けてのホスト不在の授賞式。昨年はちょっと新鮮だったけど、物足りなかったのはショーの華やかさ。今年は『ロケットマン』(タロンとエルトンの共演か!?)や『アナ雪2』など歌曲賞候補が、その欲求不満を解消してほしい。メインの作品賞は『1917 命をかけた伝令』が少しだけリードしているものの例年にない大混戦なので、心の奥では『パラサイト 半地下の家族』の外国語映画初の快挙を希望。『ジョーカー』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が受賞してもサプライズではない。演技部門は前哨戦の結果から、ほぼ確定的。とはいえ昨年の主演女優賞でオリヴィアコールマンの大逆転があったように、今年は唯一の黒人候補であるシンシア・エリヴォがまさかの主演女優賞で、“白すぎるオスカー”の批判をかわす可能性も?まだまだ保守層が強いアカデミー会員が多様性を意識したら、作品賞の票も『パラサイト~』に集まるだろうが、果たして…?

■ 私情によって分析が曇らされるのが、もはやアカデミー賞予想の醍醐味(村山章)

アカデミー賞予想はどうしても前哨戦となる各映画賞の結果から分析することになり、作品や演技への純粋な評価とは違ってしまう。おそらく作品賞と監督賞はPGAとDGA(全米監督組合賞)を獲った『1917 命をかけた伝令』になるだろうと思っているが、個人的に大好きなのは『ジョジョ・ラビット』と『マリッジ・ストーリー』。そういう私情によって分析が曇らされるのがもはやアカデミー賞予想の醍醐味だと思うので、女優賞は両作品でスカーレットヨハンソンがW受賞という景色を夢想してみたい。とはいえ主演女優賞は『ジュディ 虹の彼方に』のレニー・ゼルウィガーとの一騎打ちで、スカヨハの初受賞は充分にあり得る。助演女優賞はむしろ『マリッジ・ストーリー』のローラ・ダーンが本命で、スカヨハのW受賞ではなく『マリッジ・ストーリー』のW受賞に落ち着くんじゃないだろうか。(Movie Walker・構成/トライワークス)

作品賞、監督賞の本命に挙げられる『1917 命をかけた伝令』