法整備が進んだことでいっときのブームは落ち着いた民泊投資だが、現在でも大きく稼ぎ続ける投資家は確かに存在する。わずかな手間で高い収益を実現する秘訣とは?

◆わずか3物件で年間約2000万円の収入を稼ぐ[京都民泊主婦]
 インバウンドの拡大や慢性的なホテル不足、「Airbnb」をはじめとしたサービスの成長などを背景に、一躍注目を集めた民泊投資。京都を拠点に民泊事業を展開する水田佳苗氏わずか3物件で年間約2000万円の収入を得ている。

「戸建て3物件を所有していますが、そのうち1軒は自宅兼簡易宿泊所で、まだ子供が小さいこともあり、現在、動かしているのはほぼ2物件のみです。物件のローン返済や清掃代、光熱費、備品購入費などが年間480万円ほどかかっているのですが、手残りでも年1500万円を超えています

 ’14年から民泊投資を手がけ始めた水田氏。「一時はワンルームも含め、最大で20軒ほどの民泊用物件を所有していた」とのこと。

「どういった物件が最も収益性が高まるか、さまざまな運用テストを重ねてきました。その結果、稼働率や物件数ではなく、高単価を得られる一軒家に集中するのが最適との結論に至り、現在の3物件に絞ることに。価格帯にかかわらず一物件を管理するための労力はほぼ変わりありません。むしろ一泊あたりの料金が安いと稼働率を上げる必要があるため、負担が大きくなる傾向にあります」

 現在、3人の小さな子供を育てている水田氏。しかし、物件管理の作業を効率化することで育児との両立に支障はないという。

「物件の管理に費やす時間はおおよそ一日5~10分程度ですので、家族との時間も十分に確保できています。募集開始の前後は時間をかける必要はありますが、一度、軌道に乗れば、わずかな時間と労力で続けることが可能です」

コンセプトを明確にしコアターゲットを定める
 それでは、日々わずかな実働で大きな利益を上げるポイントはどこにあるのか。水田氏は「高単価」「高評価」「高リピート」の「3高」が欠かせないと明かす。

「以前、同じマンション内のほぼ同じ条件の2部屋をそれぞれ一泊5000円と1万5000円で貸し出してみたことがあるのですが、結果的に同じような物件でも5000円で泊まりたい方と1万5000円で泊まりたい方がそれぞれいることがわかりました」

 同じ条件であっても安いほうの物件にだけ客が流れるわけではない理由を水田氏は次のように解説。

ゆっくりと海外旅行ができるような富裕層の一部は『〇〇円以上の宿に泊まることが安心』という価値観を持っていて、一定以上の価格帯の物件を選びます。なので、そういった余裕のある層をメインターゲットにすることが安定的な高収益に繫がります。ターゲットが明確になれば、あとはその層に評価されるサービスを用意し、リピートしてもらえる物件にしていくだけです」

 そして、選ばれる物件の特徴として「物件のコンセプト」が不可欠だと水田氏は語る。

「残念ながら『なんとなく素敵な宿』に高いお金をかけて泊まろうというお客さんは存在しません。逆にコンセプトが明確であれば、地方だったり、多少アクセスに難があるエリアでも人気を集めることはできます。そこに泊まるとどういった経験が得られるかを明確にする作業は何よりも重要です」

 さらに見落としがちな点として、「オーナーの特性」も意識する必要があると注意を促す。

「立地や建物ももちろん大切なのですが、『オーナーの特性』も同様に重要になってきます。民泊で中長期滞在される方の多くは現地の人との交流を望まれます。これはホテルでの滞在では得にくい点であり、民泊の強み。オーナーである私たち自身と交流することも付加価値になりますし、交流の機会を案内することも喜んでいただけます。プロフィール欄には必ず自己紹介と、どんな体験をしてもらいたいかを丁寧に書きましょう

◆高評価獲得のために有効なテクニック
 こうして魅力的な物件を用意することで人気を集め、自ずとリピーターも増えていく。

「継続的な高収益のためには『高リピート』は欠かせませんが、必ずしも同じ方に来ていただく必要はありません。一度、お泊まりいただいた方が知人に推薦してくれるケースもありますし、民泊サイトでは見る人と同じ居住国のレビューが優先的に表示されるため、ある国の方から高評価をいただくと、自然とその国からのお客さまが増えていく傾向にあります」

 また、高い評価のレビューを早い段階から獲得するためには有効なテクニックも存在する。

「例えば、募集開始当初、一泊1万円でお泊まりいただいたお客さまが『とてもコスパのいい宿でした』と書いてくれれば、その後、3万円に値上げしたとしてもそのまま『コスパのいい宿』としての評価が残ります。そのため、最初の3か月から半年は目指している宿泊単価よりも安くして、高評価を集めることも有効な戦略です」

 一方、水田氏が考える「やってはいけない戦略」とは?

人気の宿のマネや、近隣相場を意識した値段設定は絶対に避けるべきです。これをしてしまうと、価格競争にのみ込まれて、値段を下げないとお客さんが泊まってくれない物件になってしまいます。また、民泊に関するルールは今後も変わっていく可能性があるので、長く続けていく予定の方には民泊新法での届け出や特区での開業ではなく、簡易宿所の許可を取ることをおすすめしています」

コロナウイルス騒動にはどのように対応を?
 手堅く高収益を民泊で実現してきた水田氏。しかし、それでも想定しきれない逆風が吹くこともある。いまだ収束の気配を見せない新型コロナウイルスの感染拡大で訪日観光客は激減。当然、民泊事業者も大きな影響を免れることはできない。

「今回のコロナウイルスの影響で売り上げが通常の3分の1から4分の1ほどになってしまっています。ただ、こういった状況だから工夫できる余地もあります。具体的には30〜40%ほど値段を下げて、直前予約や長期滞在客を誘導しています。ディスカウントを行い、こちらから『お部屋が空いていますので、もう少し滞在できますよ』と提案することで実際に4日も延泊していただいたお客さまもいらっしゃいました」

 長期旅行者のなかには最初の何日間だけ宿を決めておき、次の滞在先を決めていないケースも珍しくないことを把握していた水田氏ならではの機転が大きく功を奏した。

「滞在前も滞在中も、お客さまと近い距離で、連絡を取ったり接したりしていることで延泊は受け入れられやすくなるのは間違いありません。今回のケースだけでなく、‘18年8月の台風による関西空港封鎖の際も似たような状況になりましたが、フライト自体がキャンセルとなる場合など、不可抗力の場合は全額返金を行うようにしてきました。直前すぎて返金が難しい場合、またはフライトはキャンセルされておらず、お客さま自身の判断によるキャンセルの場合は、返金の代わりにその金額分を有効期限1年のクーポンとして使えるようにしたこともあります」

 高評価と将来のリピーター確保が物件の生命線だからこそ、有事での臨機応変さがより重要となる。

「予定していた日程に部屋が空いてしまうリスクはありますが、クーポン対応の場合だと、売り上げは入ります。さらにお客さまにとってはよりベストの時期に安心して来日でき、滞在を楽しむことができる。このような対応が物件の満足度を上げることにも繫がります」

 ルールを熟知し、常に利用者に寄り添い続ける。そうした日々の積み重ねにより、高収益物件は生まれるようだ。

◆他にもある! 高収益を生む民泊運営のキモ
 小さな工夫の積み重ねで物件の収益性は大きく向上する。水田氏が特におすすめするゲストが喜ぶおもてなしテクニックとは?

●コンシェルジュサービスを実践
低価格高品質の日本製品の購入を希望されるゲストも多いため、欲しいものをリサーチし、案内することは大きな付加価値に

●子供連れも安心の清潔感は不可欠
高単価の一軒家を利用するゲストは子供連れの家族が多い。小さな子供がいても安心できるレベルの清潔感を常に保つことでゲストからの信頼を獲得する

●家族の事情に応じて外食先の提案を行う
子供連れだと悩みの種になるのが外食先。子供が自由に遊び回っても周囲の迷惑にならない個室や子供向けメニューがある飲食店の情報は希少価値が高い

●記念日や誕生日にはプチギフトを用意
宿泊中のゲストが記念日や誕生日を迎えた際にはプレゼントを用意。数百円で買えるお菓子であってもゲストとの関係性が一気に深まる

ペット連れにも親身に対応する
海外の富裕層の中にはペットとともに旅行を楽しむ人も。対応している民泊物件は限られるため、大きな付加価値となり、強気な価格設定も可能に

◆合法民泊、どれを選ぶ?
 合法民泊には、いま以下の3つの形態がある。現実的な選択肢として水田氏が選ぶのは「簡易宿所」である。その理由は以下の通りだ。

●民泊新法
 住宅宿泊事業法(民泊新法)により、届け出をすれば旅館業法上の簡易宿所の許可がなくても民泊営業することができる。ただし、営業は年180日が上限であり、自治体が条例で規制を上乗せできるため、地域によってはさらに厳しい条件が付されていることもある

●特区民泊
 国家戦略特区で指定された地域に限り、営業できる特別な民泊制度。特区では滞在が2泊以上などの規定はあるものの、旅館業法の許可なく365日営業できる。現在、東京都大田区大阪府千葉県千葉市福岡県北九州市新潟県新潟市などが指定を受けている

●簡易宿所(←水田氏のおすすめ)
 特区民泊以外の地域でも365日フル稼働ができる。賃貸物件でも可能だが、用途地域の制限や消防設備、トイレ数などに規定がある。「初期の手間はかかりますが、収益性が格段に高まります。民泊を長く続けていくなら早めの許可取得を目指しましょう」(水田氏)

水田佳苗氏

【高収益民泊アドバイザー水田佳苗氏】
’82年、京都府生まれ。広告代理店、外資系企業を経て、’14年より民泊事業を開始。「高収益民泊」を指導するスクールも手がける。著書に『高収益民泊の教科書』がある

取材・文/週刊SPA!編集部