根強い人気を誇るアニメ攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXシリーズOVA 3部作をコンプリートしたBlu-ray BOX「攻殻機動隊S.A.C. TRILOGY-BOX : STANDARD EDITION」が3月27日(金)に発売される。

【写真を見る】 Netflixにて2020年4月全世界独占配信! 「攻殻機動隊 SAC_2045」ティザービジュアル第2弾

本作に収録されるのは、テレビシリーズ第1期「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man」の総集編OVA(2005年)、テレビシリーズ第2期「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG Individual Eleven」の総集編OVA(2005年)、そして、2006年に製作された新作長編OVA攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」の3作品。

2008年発売の「攻殻機動隊S.A.C. TRILOGY-BOX」より特典を抜粋・再構成し、仕様を変更して、“STANDARD EDITION”としてリリース。既発売のBOX収録の180分を超える映像特典も収録された、ファン必携のBOXだ。

また4月には、シリーズ最新作「攻殻機動隊 SAC_2045」が、Netflixにて全世界独占配信される。「攻殻」史上初となるフル3DCGアニメーションとなり、「攻殻機動隊S.A.C.シリーズを手掛けた神山健治と、「アップルシードシリーズを手掛けた荒牧伸志によるダブル監督、Production I.GSOLA DIGITAL ARTSによる共同制作スタイルの作品。業界内外で熱い注目を集めている。

そしてこのたび、「攻殻機動隊S.A.C. TRILOGY-BOX : STANDARD EDITION」の発売決定と「攻殻機動隊 SAC_2045」の配信決定を記念して、両作品を手掛ける神山健治監督と、生粋の“攻殻フリーク”として知られるフリーライター / 俳優のマフィア梶田による対談が実現。最新作「攻殻機動隊 SAC_2045」を前に「攻殻機動隊S.A.C.シリーズを総括すべく、濃密なトークが繰り広げられた。

■ 「公安9課メンバーは“ディストピア”で楽しく生きてる奴らなんですよ」(神山)

マフィア梶田:「攻殻機動隊 SAC_2045」(以下、「SAC_2045」)が始まる前に、「攻殻機動隊 S.A.C.」(以下、「S.A.C」)シリーズを見返して、愕然としたんですよ。というのは、モチーフとして政治的・社会的な情勢を描いているのに、一切古くない。つまり「S.A.C.」が発表されてから20年近く、社会の形相はほとんど変わっていないんです。

神山健治:しかも残念なところが変わっていなくて、良いところもさほど増えなかった。もちろんテクノロジー自体は進んできたけれど、一番肝心な“人間”が変わらない。というのも、「S.A.C.」第1期(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man」)では、僕が10代後半の多感な時期を過ごした昭和後期を咀嚼(そしゃく)し直してみようというのが一つのテーマだったんです。自民党の55年体制が終わって「新しくなっていくんだ!」みたいな空気があり、グローバル化と言われだしてアメリカの顔さえ見ていれば良く、一方で中国については蓋(ふた)をして触れられない時期のことを描きました。それから20年経って、イギリスがEU離脱するなんて考えられなかったことも起きたけれど、日本は20年間ほぼ変わらぬまま。当時ですら「失われた10年」と言われていたのに、今や失われた20年を経て、30年目に突入している。

梶田:まさしく今、中国とアメリカは二大大国としてバチバチですね。「S.A.C.」第2期(「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG Individual Eleven」)は、その未来を予感させる作品でした。でも2020年になった今、映画「ブレードランナー」(1982年)で描かれた時代を迎えているはずだったのに、こんなに夢のない世界になっている。それがアニメ作品にも影響しているような気がするんです。実際、「攻殻」のような未来像を描く作品に対する夢がどんどん失われていませんか?

神山:確かに「未来を描く」というのはアニメが得意としていたジャンルなのに、創り手はいなくなってきたし、視聴者側も求めていないのかもしれないですね。

梶田:どんどん刺激に対して鈍くなっていると感じています。でも、そんな難しい時代に新作「攻殻機動隊 SAC_2045」が出る!……新たな「攻殻」を描くにあたっては、かなり苦労されるんじゃないですか?

神山:そうですね、テクノロジーはどんどん追いついてくるし、でもインターネットが登場したときのようなビッグバンはもうしばらくないだろうし。やっぱりテクノロジービッグバンがあったときに良いSFが育つけど、それがないから夢がない。SFがダメなときにはファンタジーが盛り上がるけれど、最近のファンタジーは設定を楽しむものではなく、「苦しすぎる現実からの逃避」としてしか描かれていません。

梶田:消費されるファンタジーですね。

神山:そう。そこでいざ「攻殻」を作ろうと思ったら、確かにあまりやることがないんです。だから楽しくやることにしました。これまで“難し系”や“社会系”と言われていた「攻殻」を、入り口はちょっとおバカで始めようと思ったんですよ。

梶田:! …それは、ちょっと予想外でした。

神山:メインとなる公安9課メンバースキルがあって、自己責任で生きられる奴らだというのは揺るぎない設定です。彼らが「もう社会正義とかどうでもいいから楽しいことをやろう」というところから物語をスタートさせるのが、今の時代に合っているんじゃないかな?と考えて、みんなが遊び暮らしているところから始まります。彼らは自分のスキルを存分に振るえれば、お堅い公安だろうがどこでもいい連中なので、ディストピアで楽しんでればいい。映画「マッドマックス」(1979年ほか)の世界が来たら幸せな奴らなんですよ。

梶田:面白い発想ですね。超、憧れます。

神山:予告編からは「攻殻」らしくない感じを受けるかもしれないですね。一方で「攻殻」は僕の中で“今”を切り取るためのツールでもあるので、公安9課メンバーたちが今の社会を見たときにどう感じるかが、新シリーズテーマなんです。

■ 「“ゴースト”をファンタジーとして使うことで面白いものにできそうだという手応えがあります」(神山)

マフィア梶田:「攻殻機動隊 SAC_2045」は、タイトルの「2045」という数字からすると、2045年問題(シンギュラリティ)が物語の核として組み込まれているんでしょうか?

神山健治:そうですね。でも世の中の流行は移り変わりが早いので、このアニメが配信される頃にはもう “シンギュラリティ”という言葉は忘却されているかもしれないですが。

梶田:神山監督の視点って、テクノロジーや社会に対してすごく俯瞰しつつも、AIに対してロマンチックだと思うんです。2045年というAIが発展しているであろう世界で、どこまで“ゴースト”の存在を突き詰めるんでしょう?

神山:“ゴースト”というのは「攻殻」において唯一のファンタジーですよね。“ゴースト”って、ある意味こちらに主観があって生まれるものだと思います。大事にしている車には“ゴースト”が宿る。「事故が起きる寸前だったけど、コイツ(車)が今、俺を救ってくれたかも」みたいなことは、自分が勝手に思ってるだけ。でもそう思ったときにはもう、その車には“ゴースト”は存在している。

梶田:AIやロボットに対して人間が愛着を抱いた瞬間に“ゴースト”が宿る、というね。

神山:そう。僕は、それとテクノロジーは似ている気がするんです。思いを入れていかないと新しいテクノロジーは発見されていかない。…どうしても数多の作品では新しいテクノロジーは敵として登場していますよね。「ターミネーター」(1984年ほか)などのハリウッド映画で、新しいテクノロジーは悪役です。日本でも「これ以上科学は発展しない方がいいよ」という自然回帰に正義があるスタイルが定着している。でも、「攻殻」の原作者である士郎正宗先生は「科学は悪役じゃないよ、未来に希望があるものとして存在してるんだよ、という描き方をしなさい」とおっしゃっていて、今でも深く共感しています。人類は手に入れたテクノロジーはどうしても捨てられないので、それならば共存しながらそのテクノロジーを使って問題解決をしていく…という発想が芽生えるきっかけになったのが、その士郎先生の言葉だった。そこは「攻殻」を作る以上は守り続けたいと思っています。

梶田:自分もテクノロジーはどんどん発展していった方がいいんじゃないかと思うんですが、一方で、発展しすぎたことによる弊害で取り返しがつかない状況に追い込まれていますよね。たとえば、昔の車はイジれば直せたけど、今はコンピュータ制御だからイジっても直せない、とか。

神山:生活の基盤になっているインターネットサービスが急に停止してしまったらパニックになるとかね。そういう意味では、人類は危機的状況へと突っ走ってる。

梶田:それでいうと、先日発表された「SAC_2045」のストーリーに出てくる“ポストヒューマン”という存在は悪役ではない?

神山:よくぶち当たる「発展したAIには人類が地球にとって一番の害と判断されて排除されてしまう」ということについて考えたくて。そこで登場するのが“ポストヒューマン”ですね。

梶田:AIの発展については「S.A.C.シリーズでも描かれていますよね。タチコマたちが自発的に公安9課メンバーを救い、自己犠牲の心まで芽生える。でも、ドックでのタチコマたちの会議シーンとか、実は怖いですよね。人間の監視のない中でAI同士がどんどん会話していき、些細なきっかけで人類の敵に回ってしまうかもしれない。

神山:原作漫画ではね、AIたちは「人間って支配すると面倒くさいな」という結論になるんですよ。「1日に3回もご飯食べさせてあげないといけないし、そんなに面倒なら支配せずに僕らが支配されている方がハッピーなんじゃない?」と革命は起きなかった、という皮肉で面白い短編があります。AIをよく表していますよね(笑)

そういう危機感があるからこそ、「SAC_2045」では“ポストヒューマン”を登場させます。そこにファンタジーとして“ゴースト”をうまく使うことで、エンターテイメントとしても面白いものにできそうだという手応えがあります。

■ 「新しい表現でありつつ、これまでの『攻殻』の延長上にある未来の物語になっている」(神山)

マフィア梶田:「S.A.C.シリーズの好きなところは、人間が人間であるが故に逃れられない呪縛を描いているところなんです。悲しみを背負った人間の業や、逃れられない情が見て取れる。それはあまりにもサイエンスが進歩しすぎた「攻殻」の中での一種の安心材料になっています。やっぱり「S.A.C.シリーズは荒唐無稽なものは一切なくて、非常にリアルな人間性を描いていますよね。ただ、アンドロイドについては、リアルな人の形をしているとマズイなと思うんです。9課のオペレーターの女の子たち(通称 “オペ子”)にも特別な感情を抱きつつあって(笑)

神山:愛着を抱いた時点で、オペ子にもゴーストが宿っているってことですね(笑)。まぁ、現実的に想像すると、ゴミ箱に手が生えているようなロボットの方がおそらく早く受け入れられると思うんです。でも、東大の稲見昌彦先生や“不気味の谷”を研究されている方とお話をすると、やはり人間そっくりなものを追求されている。ロマンですよね。そこに憧れる海外の方にも響くのが「攻殻」だと思います。「攻殻」を好きな海外の人たちって、自分たちにはない宗教観をファンタジーとして受け入れているんじゃないかな。「ブレードランナー」にも近いけれど、もっと神秘性を感じている印象です。

梶田:最後に新作の見どころを。

神山:2045年にどういうことが起きるだろうと現実に即してアイデアを出しながら、エンターテイメントとしてのファンタジー要素も入れています。世界に向けた新しい表現でありつつも、これまでの「攻殻」の延長上にある未来の物語になっている手応えもある。早く確かめていただきたいですね。(ザテレビジョン

神山健治監督×マフィア梶田の対談が実現。「攻殻機動隊S.A.C. 」シリーズ&「攻殻機動隊 SAC_2045」を語り尽くす!