―[インテリジェンス人生相談]―


 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆かつての日本による韓国併合は正しかったのか?

★相談者★mochimochi(ペンネーム) 会社員 男性 29歳

 韓国併合について質問があります。保守派の中には、「朝鮮の近代化を進めたことに誇りを持つべきだ。決して罪悪感を感じる必要はない」という人たちがいます。確かに、当時の朝鮮は近代化を推し進めなければならない状況にあったようです。

 しかし仮に朝鮮の近代化が必要であったとしても、日本が行ったことは国家主権の侵害にあたるのではと私は思います(当時の朝鮮に国家主権が法的にあるかは私はわかりませんが)。佐藤さんは先日、「香港のデモに参加することは中国の国家主権を侵害することになるのでやめたほうがよい」とおっしゃいました。韓国併合については国家主権の侵害になると思われますか。

佐藤優の回答

 日韓併合は、軍事占領による植民地化とは異なります。当時の日本政府が大韓帝国李氏朝鮮)政府と協議して、条約を結んで韓国は日本に併合されることになりました。当時、韓国はロシアと日本という2つの帝国主義国の脅威に晒されていました。韓国政府内にも日本に併合されたほうが韓国人のためになると考える人たちと、ロシアと提携して日本に対抗すべきと考える人たちがいました。いずれの人たちも当時の状況の中で韓国人の生き残りを必死で考えていました。

 しかし、現在の韓国では日韓併合を進めた人に極めて否定的な評価がなされています。日韓併合は当時の国際法の基準では合法でした。しかし、歴史的に見ると植民地支配は、民族の自己決定権に反する否定的な事柄です。

 従って、当時合法で、日本が朝鮮半島インフラを整えたという事実があったとしても(その主たる目的は、宗主国である日本の国力を植民地・朝鮮の経済力をつけることによって強化することでした)、胸を張って「われわれは正しかった」と言えるようなことではないと思います。

 植民地支配によって日本は韓国人から恨まれています。国力をつけた韓国は従来確立していた日本とのゲームルールを変更しようとしています。この傾向が文在寅政権下で加速しました。

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 最高裁判所内に設置された「司法行政権の乱用疑惑に対する特別調査団」は、朴槿恵政権と当時の最高裁判所が、徴用工判決をめぐって「司法取引」したという疑惑を提起した。

 徴用工裁判で朴槿恵政権と判決について相談するなど、政権に都合のいいように便宜を図ったという疑いだ。この疑惑は、当時の最高裁判所長官だった梁承泰氏をはじめ、多くの裁判官たちが拘束されるという司法積弊清算作業につながった。

 そして、文在寅政権が任命した金命洙新最高裁長官の下、日本企業に徴用工への賠償を命じる判決が下された。2018年如月、新日本製鉄(現新日鉄住金)に対して、4人の原告に1億ウォンずつの支払いを命じる判決が出されたのだ。

(中略)この判決は、日本にとっては、これまで両国政府間で解決済みとされてきた1965年日韓基本条約が、根底から覆されたに等しかった。

 以後、日韓関係は悪化の一途を辿り、2019年夏には、貿易を巡って日韓の制裁合戦にまで発展した。(金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義208頁)
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 日韓併合条約で、日本が韓国の主権を侵害したという韓国の主張に付き合う必要はないと思います。なぜならそれは当時、すなわち帝国主義時代の国際法では合法だったからです。

 しかし、それで日本が植民地支配で韓国に与えた苦難を免罪されるわけではありません植民地を持っていた宗主国としての責任を日本はもっと自覚すべきです。そして、日本国家としての自発的意思で過去の植民地支配を克服する努力をすることが必要と思います。

★今週の教訓……旧宗主国の責任を日本は自覚すべきです

佐藤優
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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