英IHS Markitのテクノロジ―部門を買収し、ハイテク産業調査部門Omdiaを新設した情報分析会社の英Informaが、急速に感染拡大が進む新型コロナウイルスが電子機器産業にどの程度の影響を与えるのかについての調査結果を2月12日(欧州時間)に公開した。
コンポーネントの生産遅延で5Gの市場拡大にリスク

電子機器産業のサプライチェーンはグローバル化しており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける事態となっている。中でも、2020年に立ち上がりが期待されている5G市場だが、スマートフォン(スマホ)の主要コンポーネントであるディスプレイパネルや半導体チップの生産が遅延、もしくはその可能性があるため、普及の速度が妨げられる可能性があるとOmdiaでは指摘している。

ちなみに同社では、グローバルな5Gバリューチェーンについて、2035年までに3.6兆ドルの経済的成果を生み出し、世界中で2230万人の雇用創出効果を発揮すると予測している。

また、世界最大のスマホ市場で、2019年には全世界の27%のシェアを占める中国については、同社の2019年第3半期の予測では、2020年には回復に向かうとしていたが、今回の影響で台数ベースでは少なくともさらに減少する可能性がでてきたと予測の見直しを行った。具体的な中国市場におけるスマホ出荷台数は、2018年の3億9080万台から2019年には3億7390万台に減少するとしている。

最大のマイナス要因となるのが、国内での販売が弱いことで、新型コロナウイルスの問題が長引くにつれて、需要の弱さがほかの地域にも拡大すると見られるが、その影響の程度は、新型コロナウイルスの流行期間に依存するとしており、同社でも現在、さまざまな流行の期間ごとに中国のスマホ需要への影響に対するシナリオを作成し、評価を進めているという。
まだ影響は出ていない半導体市場

半導体の供給に対する影響について、同社ではこれまでのところ、新型コロナウイルスによる問題は把握していないという。ただし、新型コロナウイルスの感染が今後も拡大を続け、中国で重大な公衆衛生問題を引き起こした場合、中国で生産を行っている電子機器メーカーは、工場の操業をすべて、もしくはその一部を停止せざるを得ない可能性が浮上してくるため、グローバルな半導体の供給に影響を与える可能性が生じると注意を促している。

さらに、チップサプライヤや中国におけるファウンドリの稼働率が低下すると、それらのチップを大量に購入して最終製品の生産を行う電子製造サービス(EMS)プロバイダーオリジナルデザインメーカー(ODM)などを含む企業にも影響を及ぼす可能性もあるとしている。
労働力・部材不足で生産減となるディスプレイ

ディスプレイの供給に対する影響について、同社は2月11日時点で、中国内にあるディスプレイファブの2月の稼働率が、1月下旬の通常時に比べ10~20%低下という予測値よりも悪い20~25%低下へと下方修正している。しかも、部品の不足が生じれば、40~50%低下となる可能性もあるという。

すでに5Gスマホなどで使用される中小型ディスプレイパネルの製造は、新型コロナウイルスの影響を受けており、中国中央政府が延長した旧正月(春節)休暇の終了後、武漢をはじめとする中国の各地でディスプレイの生産を行っているパネルメーカー各社は2月3日より多くが稼働を再開させたものの、LCD偏光板、LCDモジュールプリント基板などが物流上の問題などから不足が生じている状態に陥っているという。
新型コロナウイルスの影響がプラスに働く産業

一方で新型コロナウイルスの影響で、恩恵を受けている産業もあるという。その1つがビデオゲーム市場で、プレイヤー数の増加と売り上げの増加が起きているという。具体的なデータとして見ると、1月12日から2月10日までの期間において、iOSゲームの日々のアクティブユーザー数(DAU)は、その前の期間に比べ5.3%増、売り上げも同5.2%増となったとのことで、同社では、旧正月の休暇期間中に外出を制限されたユーザーが自宅内での楽んだ影響が大きいのではと推測している(旧正月休暇終了後の7日間の収益の伸びは横ばいになったという)。

また、すでに5万件を超す症例が確認されているとも言われる新型コロナウイルスの診断のために放射線検査やCTスキャンなどが活用されているが、人工知能(AI)ベースの画像認識技術を、症状の優先順位付けと肺炎のような新型コロナウイルス特有の症状の特定などに活用することで、検査速度の向上などを図れるようになることも期待されるようになるとしており、こうした医用画像処理市場は将来有望な成長市場となることが期待されるともしている。

中国当局によると、現在5万件を超える症例が確認されており、その数は増え続けている。放射線検査とCTイメージングは、コロナウイルスの疑いのある患者の集団スクリーニングと診断において基本的な役割を果たしている。このような状況では、人工知能を活用した認識により、症状の優先順位付けとコロナウイルス特有の症状、特に肺炎の特定を促進できる。これにより、医療専門家はこの世界的な流行の発生に取り組み、制御することができる。医用画像処理へのAIの活用は今回のコロナウイルス診断だけではなく将来有望な成長分野とOmdiaは見ている。
(服部毅)

画像提供:マイナビニュース