ケック天文台で撮影された褐色矮星GJ504B。Xで示される主星の光を除去して伴星を明らかにしている。/Credit:UT-Austin/W. M. Keck Observatory
  • 観測技術の向上により、遠い星系の暗い星も観測することが可能になった
  • 褐色矮星と巨大ガス惑星は共通した特徴が多く、どのように区別するかが問題になっている
  • 新しい研究は、この2種類の天体の軌道から形成過程の違いを判断できるという

天体観測は過去20年ほどで飛躍的に技術が向上し、星系の主星の光と軌道を回る暗い天体の光を分離することができるようになりました

これにより1995年には、明るい星と連星をなす褐色矮星の撮影にも成功し、2008年には別の星系の惑星を撮影することにも成功しました

しかし、ここで問題になってきたのが、惑星と恒星の違いはなんなのか? ということです。

褐色矮星は、軽いために核融合を起こさない亜恒星に分類される天体ですが、惑星と恒星の両方に共通した特徴を持っています。

ある星系の外縁を回る天体を観測したとき、それが質量の大きい巨大ガス惑星なのか、それとも最低質量に近い褐色矮星なのか、どのように分類すればいいのでしょうか?

新たな研究は、これを天体の軌道から明らかにしており、それぞれの似た特徴を持つ天体が、異なる形成過程をたどっていることも明らかにしています。

この研究は、米国テキサス大学オースティン校のBrendan Bowler氏率いる研究チームより発表され、天文学の学術雑誌『The Astronomical Journal』に1月23日付けで掲載されています。

Population-level Eccentricity Distributions of Imaged Exoplanets and Brown Dwarf Companions: Dynamical Evidence for Distinct Formation Channels
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ab5b11

進化する観測技術

褐色矮星は軽いために水素の核融合を起こせない暗い星です。このため「星のなりそこない」という呼び方もされます。

こうした暗い天体は、昔は見ることが難しいものでした。

しかし現在は、波面補償光学装置(AO)や近赤外線分光撮像装置 (IRCS)の進歩で確認することができるようになっています。

AOとは地上の望遠鏡天体観測した際の、大気による光のゆらぎを補正する装置。IRCSは明るい天体と暗い天体が近距離にある場合でも、両者のスペクトルを分離してそれぞれ見ることができる装置です。

この2つの装置の組み合わせで、地上からでも非常に高解像度の観測を行うことができるのです。

AOとIRCSが捉えた褐色矮星連星の画像。明るい星のそばに浮かぶ2つの小さい星(木星の数十倍の星)までしっかり捉えている。/Credit:すばる望遠鏡

褐色矮星は木星質量の13〜75倍の質量を持つ星と定義されていますが、惑星と恒星の両方に共通した特徴を持っています。

そのため遠い星系の星を観測したとき、それが木星の巨大なものなのか、褐色矮星の非常に小さいバージョンなのかは、明確に区分する術がありませんでした。

軌道から星の種類を特定する

今回の研究者Bowler氏は、こうした問題は星系のダイナミクスを研究することで明らかにできるといいます。

研究チームの考えでは、星の軌道はその星の形成や進化の鍵を握っているのです。

そこで、彼らはAOとIRCSを搭載した日本のすばる望遠鏡とケックⅡ望遠鏡を用いて集められた、主星を周回する巨大惑星や褐色矮星の撮影画像を調査しました。

左端がすばる望遠鏡。その隣2つがケック天文台の望遠鏡ハワイ島マウナケア山頂。/Credit:Sasquatch,Wikipedia Commons

調査されたのは27の星系での伴星の軌道です。しかし、こうした星系の星は主星から地球-太陽間の40倍近く離れた軌道を回っており、軌道周期は240年近くあります

こうした伴星の褐色矮星が撮影されたデータは過去10〜2年ほどのものしかありません。

彼らは根気よく1年ごとに伴星の撮影を行いましたが、それでも軌道全体のわずか数%分のデータしか得られませんでした。

この方法では1つの星の軌道を特定するために、数100年近い時間がかかってしまいます。

今回の研究チームの功績は、全体の数%という僅かな星の位置データから、軌道全体を予測するシステムを開発したところにあります。

論文の共著者は、ケプラーの法則を用いて、測定された星の位置から、どのタイプの軌道が一致するか識別する軌道適合プログラムOrbitize!(オービタイズ)」の作成に貢献しました

研究チームが予測した軌道範囲。調査された27の星系の内の9つ。/Credit: Brendan Bowler (UT-Austin)

このプログラムは、可能性のある軌道をぼんやりした雲のように形成しますデータが集まり可能性が狭まるほど軌道の形状ははっきりしたものになっていきます。

これと合わせて開発されたOFTI(Orbits For The Impatient忙しい人のための軌道)プログラムを用いることで、非常に長い周期を持つ軌道でも、短い期間で見つけることができたといいます。

星の軌道が持つ意味

軌道が重要な意味を持つのは、その形状で形成過程が推測できるためです。

惑星は若い恒星の周囲にできたガスと塵の降着円盤から形成されます。そのため非常に円形に近い軌道を回るようになります。

太陽系の木星が描く軌道の離心率(円形から離れる度合い)は0.1未満です。

巨大惑星と褐色矮星の軌道形状の分布。横軸が軌道離心率。Credit: Brendan Bowler (UT-Austin)

一方、褐色矮星は離心率が高い伸びた楕円軌道を描きます。

このようになる理由は、褐色矮星がもともとは主星と1つで形成されたものが分裂することで生まれたためです。これは、褐色矮星がなりそこないとはいえ、本質的には連星系の片割れであることを示しています。

軌道が円形であるか、楕円であるかで星の形成過程が判断できるのです。

27の星系を調べた結果は明白でした。

調査した27の星系で、木星質量に近い15の天体は、その他の天体に比べて明らかに円軌道が多いことがわかりました。残りはみな連星のように見えたと言います。

この研究はまだサンプル数が少ないものです。研究はこうした観測を継続し、調査の範囲を広げていくことで、星の種類の同定を確かなものにしたいとしています。

今回の研究結果は、他の研究で示されている結論とも一致しており、統計学的にも褐色矮星と巨大惑星が異なる形成経路をたどっていることを明らかにしています。

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