現代の飛行機は昼夜を問わず空を飛び交っていますが、かつては夜間に特化したものも存在しました。その代表的なものが第2次世界大戦中に搭乗した「夜間戦闘機」でしょう。通常の戦闘機とはやはり、ひと味違う特徴がありました。

戦闘機 夜はひとりで飛ぶと危険がいっぱい

「夜間戦闘機」とは、文字どおり夜間に戦うことを主任務にした戦闘機のことで、飛行機が兵器として本格的に使われ始めた第1次世界大戦からありました。ただし、当時は単に敵の目を欺くために、夜空に溶け込み見つかりにくくなるよう既存機の外観を黒色などで塗っただけであり、専用装備を搭載することなどはしていませんでした。

そのため、本格的に「夜間戦闘機」というジャンルが確立したのは第2次世界大戦になってからですが、では第2次大戦時の夜間戦闘機は、第1次大戦のときのものとはどう異なっていたのでしょうか。また夜間戦闘機というものが、その後なくなったのはどういう理由からなのでしょう。

第2次世界大戦の夜間戦闘機は、真夜中に襲来する敵航空機、おもに爆撃機を迎撃するために生まれました。夜中は昼間と異なり、視界が著しく狭くなります。そのため離陸しても目標を見つけられないことが多く、戦うことすらままならないことも多々ありました。また戦闘終了後に自らの飛行場に戻ろうとした際、空だけでなく洋上や地上も含めて周囲が真っ暗だと、どう帰ればよいか判断できないこともありました。

そこで各国とも、専用の「夜間戦闘機」を作り出したのです。とはいえ、ほとんどの夜間戦闘機は、既存の双発(エンジン2基)戦闘機や軽爆撃機攻撃機などの転用で、新規に夜間戦闘機を開発したのはアメリカドイツぐらいでした。

レーダーの実用化が夜間戦闘機発展の一助に

夜間戦闘機のおもな特徴は、複数人が乗り込む多座機である点、夜間、視界が限られるなかを飛ぶため航法装置や通信機などが充実している点、大型爆撃機などに致命傷を負わせるため武装が強力である点、そして夜空ではエンジン排気炎が非常に目立つため、その対策で排気管を消炎式のものに換装している点などです。

また途中からは、夜間でも敵機などの目標を見つけられるよう、レーダーを搭載するようになりました。レーダーが戦場で使われるようになったのは、第2次世界大戦が最初です。

レーダー搭載の戦闘機を世界で初めて作ったのは、イギリスです。第2次世界大戦初期に起きた、ドイツイギリス本土航空攻撃、いわゆる「バトルオブブリテン」で、襲来するドイツ軍機を迎撃するため、レーダー搭載機を1941(昭和16)年に誕生させます。これにより、それまで以上に敵機を補足、迎撃できるようになりました。

ただし、航空機に搭載できるようになったとはいえ、レーダーシステム全体としてはまだまだ大きく複雑なものであり、小型の単発(エンジン1基)単座戦闘機に載せるのは難しく、操作もかなり手のかかるものでした。

そこで、各国とも機体サイズが大きな多座機にレーダーを搭載し、夜間戦闘機に仕立てました。これならレーダーを搭載でき、操作も操縦手以外の搭乗員に行わせることができます。また大柄な機体を生かして多数の武装や、大口径砲を搭載することができました。

ただし機動性や加速力などは身軽な単発単座戦闘機よりも劣っており、単純に戦闘機としての格闘性能は、多座機では太刀打ちできませんでした。そのため、単発単座戦闘機が飛来する昼間は基本的に活動せず、レーダーを駆使して有利に戦える夜間に、活動の主軸を置くようになりました。

レーダーの小型高性能化が夜間戦闘機に引導を渡した

当初は、既存の複座戦闘機や、中型爆撃機を流用して夜間戦闘機が作られていましたが、第2次世界大戦の半ばには、戦訓を反映して最初から夜間戦闘機として開発された専用機が登場するようになりました。たとえばドイツではHe219が、そしてなかでも代表的なものとして、アメリカのP-61「ブラックウィドウ」が挙げられます。

P-61は、「バトルオブブリテン」を戦訓に、アメリカドイツ空軍の夜間爆撃に対抗できる高性能な夜間戦闘機を求めて開発した機体で、最初からレーダー搭載を前提に設計されていました。乗員は3名で、空冷星形エンジン2発、全長15m以上で重量は約10tと鈍重なため、格闘性能は単発単座機にかないませんでしたが、火力は強力で、機体上部中央に12.7mm重機関銃4門搭載の全周旋回銃座を装備し、機体前方下部には20mm機関砲を4門装備していました。

このように世界的に夜間爆撃が多用された第2次世界大戦で、夜間戦闘機は多数開発され、確固たる1ジャンルを開拓すると、ジェット戦闘機が本格的に普及した第2次世界大戦後もしばらくのあいだ、夜間戦闘機の開発は続きました。

しかし、レーダーの小型自動化が進み、単座のジェット戦闘機にも搭載できるようになると、夜間戦闘機の必要性がなくなります。単座のジェット戦闘機が、レーダー搭載によって昼夜問わず、さらに悪天候化でも戦闘可能な能力を手に入れたことで、昼間や夜間といった区分で戦闘機を使い分ける必要がなくなったため、「夜間戦闘機」というジャンルそのものが消滅しました。

その後、「全天候戦闘機」という呼び方も登場しましたが、現代ではレーダー非装備の戦闘機そのものがごく少数になっており、その呼び方すら聞くことは少なくなりつつあります。

ドイツで初めて最初から夜間戦闘機として設計開発されたハインケルHe219(画像:ドイツ国立公文書館)。