コンテナという規格化された物流の仕組みは軍事にも波及し、軍用貨物も民間コンテナで運ばれています。そのまま飛行機に吊り下げられれば便利ですが、そうしたものは見られません。実用化には、大きな壁があるようです。

発想は時代の最先端だった「コンテナ飛行機」

コンテナを使った物流は陸海空に見られますが、船も鉄道も、トラックにしても基本的に露天で運搬するのに対し、飛行機だけは機内収容で、機外に吊り下げて運ぶような姿は見られません。

しかし、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する大型輸送機「ミデア」や、特撮の『サンダーバード』シリーズに登場する「サンダーバード2号」などのような、コンテナを直付けで運ぶ構造の飛行機が、実は過去に作られています。アメリカが開発したXC-120「パックプレーン」ですが、わずか1機作られただけで終わってしまいました。

XC-120は、アメリカのフェアチャイルドが開発した試作大型輸送機で、胴体下半分が脱着可能なユニット式になっているのが特徴です。同じくフェアチャイルドが第2次世界大戦直後に開発したC-119双発輸送機をベースに製作され、1950(昭和25)年8月11日に初飛行しました。

C-119譲りの双胴高翼配置の双発エンジン構造で、2万ポンド(約9.07t)の積載能力を有しており、一番の特徴であるユニット式の「カーゴポッド」は、人員輸送用、物資搬送用、空中投下可能な大型コンテナの3種類が作られ、用途に合わせて付け替えられるようになっていました。

このカーゴポッドを飛行場や基地に複数用意しておけば、飛行機が到着するたびに物資の搬出入や人員の乗り降りで時間を割かれず、飛行機の駐機時間を大幅に減らして離着陸回数を増やすことができます。またカーゴポッドの規格を共通化しておけば、輸送効率を向上させることもできるでしょう。

まさに現代の標準規格コンテナと同じ発想でした。コンテナを用いた本格的な海上輸送が始まったのは1956(昭和31)年と、XC-120の初飛行より6年後のことなので、このカーゴポッドは時代を先取りしていたといえます。

飛行機は失敗するもヘリコプターでは成功

しかし、最先端だったはずのXC-120は試作機1機のみで終わります。それは飛行機ならではの理由からでした。

というのもカーゴポッドの有無や形状違いで、空気抵抗や気流が大きく変わり、飛行特性に大きな変化が生じることが問題でした。特に外して飛行した際は劣悪だったそうで、あえなく開発計画は終了となりました。

ちなみに、同じ発想の航空機でもヘリコプターは成功しています。シコルスキーが開発したS-64「スカイクレーン」という機体で、XC-120が初飛行してから12年後の1962(昭和37)年5月9日に初飛行し、アメリカ陸軍もCH-54「タルへ」として105機を採用しました。

軍用のCH-54「タルへ」は退役したものの、民間型のS-64は、メーカーこそ変わりましたが現在も生産が続いており、重量物運搬や消防ヘリとして世界中で使用されています。

ヘリコプター飛行機よりも飛行速度、飛行高度ともに低いから成功したのでしょう。それでも、やはり運搬物の形状や有無によって飛行特性が変わるため、操縦は普通のヘリコプターよりも難しいそうで、世界的に普及するまでには至っていません。

胴体下半分を脱着可能な「カーゴポッド」にしたXC-120。エアショーに参加しPRまでしたが、量産されることはなかった(画像:アメリカ空軍)。