ボーイング747ベースの貨物機「ドリームリフター」は、そのユニークな外見で知られますが、操縦の要領などもやはり787などとは大きく異なるのでしょうか。一般人でも乗り比べできるシミュレーターの運営スタッフに話を聞きました。

貴重なB787&「ドリームリフター」のシミュレーター体験

中部国際空港セントレア)には、ボーイング787初号機の展示をメインとした複合商業施設「フライト オブ ドリームズ」が併設されています。その目玉のひとつが、フライトシミュレーター体験施設でしょう。

ここでは中部地方で35%近くのパーツが製造されるボーイング787型機と、そのパーツを運搬するために「ハイテクジャンボ」ボーイング747-400型機を改造したユニークな形の貨物機、747-400LCF「ドリームリフター」の操縦体験ができます。「ドリームリフター」のシミュレーターは、2019年11月に設置されたもので、実機も世界で4機しかない珍しいモデルです。ともに日本で一般の利用者が体験できるシミュレーターとしては稀少な存在です。

787と「ドリームリフター」は同じボーイング飛行機ですが、見た目はまるで異なります。また「ドリームリフター」のベースとなった「ハイテクジャンボ」の初飛行は1988(昭和63)年、787の初飛行は2009(平成21)年と、20年以上の開きがあり、操縦の方法も異なるそうです。シミュレーターではどのような違いがあるのでしょうか。同施設を運営する「ラグジュアリー フライト(LUXURY FLIGHT)」インストラクターに話を聞きました。

――787と「ドリームリフター」のシミュレーターではどのような違いがあるのでしょうか?

まずなによりエンジン数の違いです。「ドリームリフター」など「ジャンボ」シリーズはエンジンが4発ですが、787はエンジンが2発です。なのでスラストレバー(クルマのアクセルに相当。レバーは同じ位置に並ぶが、エンジン1発ごとに独立して動かせるのが一般的)の形も異なります。これはエンジン自体の信頼性が上がっているためで、787のものは1発でも十分飛べるだけのパワーがあります。

「ドリームリフター」とB787、B747… それぞれどう違う?

――エンジン以外にこれらふたつの機種の差はありますか?

ドリームリフター」は747-400をベースとしているだけあって、コックピットも少々レトロです。画面が小さくてレバーやノブなどの数が非常に多いです。一方787は自動化が進んでいる飛行機なので、人の手でコントロールする部分が減り、よってレバーやノブも少なめです。またコックピット内に大きな画面がセットされ、そういった意味では操縦しやすい飛行機になっていると思います。

――「ドリームリフター」は、シミュレーターではどのような感覚の飛行機なのでしょうか?

見た目が大きく迫力のある飛行機なので、操縦もダイナミックなものと考えて体験にいらっしゃるお客様も多いのですが、実はとても繊細な飛行機です。操縦桿を少し動かすだけでシビアに反応するので、優しく細かく動かしてあげる必要があります。しかし、コツをつかむととても安定性が高い飛行機といえるでしょう。

――「ドリームリフター」と通常のボーイング747-400型機、操縦性能に大きな差はあるのでしょうか?

基本的な操縦については、747-400とほぼ同じです。ただ、「ドリームリフター」の方は側面積が大きいので、横風の影響を受けやすく、そのときのコントロール方法に差があります。また、離陸時に機首を引き上げるスピード(ローテーション速度)も異なります。搭載する荷物や風など条件による差はありますが、満載の場合一般的に「ドリームリフター」の方が、10ノットから15ノット程度(19km/hから28km/h程度)、機首を引き上げるまでに多くの加速が必要です。

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なお「ドリームリフター」はボーイングが保有していますが、運航はアメリカの貨物専用航空会社、アトラス航空が行っています。

ちなみにボーイングによると「ドリームリフター」はもともと旅客型だった747-400を改造したもので、エンジンや操縦系統はほぼ同じものを使っているそうです。

中部空港を離陸するボーイング747-400LCF「ドリームリフター」(2020年2月、乗りものニュース編集部撮影)。