政府は「正社員の名目賃金は上がっているから問題ない」と悲観論打ち消しに躍起だが、今年も見通しは暗い
政府は「正社員の名目賃金は上がっているから問題ない」と悲観論打ち消しに躍起だが、今年も見通しは暗い

厚生労働省2月7日2019年の「毎月勤労統計調査」の速報値を発表。なんと、19年の月平均の名目賃金が前年比で0.3%と6年ぶりにダウンしてしまった。

メディアの扱いはなぜか小さく、多くは「数値がダウンしたのは給与の低いパートタイム労働者が増えたため。フルタイムで働く一般労働者の名目賃金は0.3%増で、プラス基調だ」という政府の発表をそのまま報じたが、一部ではこの数値が衝撃をもって受け止められている。

経済ジャーナリスト須田慎一郎氏が言う。

「政府の"宣伝"にだまされてはいけません。フルタイム労働者は0.3%増といっても、これは給与が上がっている大企業の社員と、さっぱり給与が上がらない中小企業社員の給与額の平均値にすぎない。全国に約3350万人もいる中小企業のフルタイム労働者の多くは、名目賃金が上がったという実感などまったく持てていないはずです」

民間シンクタンク研究員もこう指摘する。

「政府は『パートが増えた』ことを数値ダウンの理由に挙げていますが、そもそもパート労働者は高齢者や主婦、学生が中心です。第2次安倍政権の7年間で専業主婦は200万人以上も減っており、これは若い女性の働き手が増えたというより、夫の稼ぎだけでは生活が苦しく、『パートでも構わないから稼ぎたい』と妻が働きに出ているというケースが多いんです」

なお、前述のとおり19年の名目賃金はマイナス0.3%だが、物価上昇分を考慮した実質賃金はさらに減り幅が大きく、マイナス0.9%。にもかかわらず、その実質賃金には触れず、名目賃金の減少を「大きな問題ではない」とする政府の説明は、やはり「アベノミクス成功」をムリに演出しようとしているとしか思えない。

しかも、その苦しい説明ですら、4月以降は成り立たなくなる可能性がある。「働き方改革」の一環として昨年4月に大企業を対象としてスタートした残業規制が、今年4月から中小企業に対しても適用となるためだ。

この規制によって、今年4月からは中小企業大企業と同じように、「時間外労働の上限が年間720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が2~6ヵ月平均80時間以内」などの上限規制が課せられる。

残業が減れば、残業代込みの名目賃金は当然、さらにマイナスに振れることになる。前出の須田氏が言う。

「そうなれば、フルタイム労働者の名目賃金もプラス基調を維持できず、4月以降の名目賃金はさらに下がることが予測されます。しかも、給与の低い中小企業社員は残業代込みの収入で生活設計している人が多いので、消費の手控えが必ず起こります。

経済が成長せず、企業収益が向上しない現状では『働き方改革』は企業と労働者の双方に痛みをもたらすものとなっている。東京五輪終了後の今秋には、働き方改革の失敗が誰の目にも明らかになると私は考えています」

そこに新型コロナウイルスによる経済ダメージ、五輪後の景気停滞が重なれば、日本経済は大きく後退してしまう可能性が高い。

OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本人の1時間当たりの賃金は過去21年間で8%も目減りしている。93%増のイギリス、82%増のアメリカ、167%増の韓国などと比べると、その低迷ぶりは明らかだ。アベノミクスっていったいなんだったの?

写真/時事通信社

政府は「正社員の名目賃金は上がっているから問題ない」と悲観論打ち消しに躍起だが、今年も見通しは暗い