木星は、質量が小さいため恒星になれなかった天体として考えられている。恒星のなかでも質量の低い褐色矮星と巨大ガス惑星とを分ける条件が何なのかは、天文学者の研究対象になっている。米テキサス大学オースティン校などの研究者から構成されるグループは、ケック望遠鏡すばる望遠鏡を使った直接撮像により、両天体が異なるプロセスで形成されたことを突き止めた。

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■褐色矮星と巨大ガス惑星との違い

 太陽系で最大の惑星である木星は、水素やヘリウム等の軽元素から構成される巨大ガス惑星で、成分は太陽とほぼ同じである。だが質量や密度、温度の条件が不足しているため、木星は核融合を起こすことができない。木星が太陽のように核融合を起こすためには、太陽の約8%の質量が必要だと考えられている。

 他方、水素からヘリウムへの核融合を起こさない褐色矮星は恒星に分類されている。木星の13倍から75倍の質量をもつ褐色矮星では重水素核融合を起こすが、量の少なさから反応はすぐ終了する。そのため輝くのは誕生後わずかだけだという。

 巨大ガス惑星が褐色矮星のなり損いなのか、それとも惑星に由来するのかが天文学者の関心の的になっている。過去の研究で褐色矮星は低質量星のように形成されることが示されたが、褐色矮星が形成される最小の質量については不明だった。

■直接撮像が明かす両天体の違い

 ここ20年の望遠鏡の進化により、褐色矮星や巨大ガス惑星の直接撮像が可能になった。研究グループは米ハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡やW.M.ケック望遠鏡を活用し、27の系で巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道を求めた。その結果、両天体の公転軌道に違いが生じていることが判明した。

 円に近い公転軌道を描く天体は、惑星のように太陽を取り巻く塵やガスの円盤から形成されたと予想される。他方公転軌道が細長い楕円である天体は、恒星のように形成されたと考えられる。ガスや塵から形成途中に2つに分断され、一方が恒星へ他方が恒星の周囲を公転する褐色矮星へと変化したという。

 また研究グループは褐色矮星の最小質量を求めたところ、木星の15倍であることも判明した。今回の成果は、南米チリのジェミニ惑星撮像装置と類似した結論を出しているという。

 研究の詳細は、Astronomical Journalにて1月23日に掲載されている。

褐色矮星と巨大ガス惑星を分け隔てるのは公転軌道 すばる望遠鏡の直接撮像で明らかに