txt:酒井洋一/編集部 構成:編集部

現像済みの16mmネガフィルムをスキャンしてデジタル化

Vol.02ではデジタルと16mmネガフィルムで撮影したANIME GIRLのMV撮影現場、Vol.03では撮済み16mmネガフィルムを東京現像所へ現像出しする手順を紹介しました。最終回となるVol.04では、現像所から現像済みフィルムを引き取り、そのフィルムをデジタル化する様子を紹介します。

16mmネガフィルムは、デジタル化することによりデジタルカメラの撮影と同じノンリニア編集が可能になります。そこで今回のMV撮影では、Blackmagic Design石井陽之氏にCintel Scanner 2を使った16mmネガフィルムのデジタル化にご協力いただきました。

Cintel Scanner 2は、16mmと35mm対応のフィルムスキャナーです。Blackmagic Designによると、1927年創業のメジャーなテレシネとフィルムスキャナーメーカーであるCintelを2012年に買収。CintelはBlackmagic Designの傘下になり、パソコン用キャプチャーボードやカメラで培ってきたテクノロジー、カラーグレーディング業界でメジャーなDaVinci Resolve、Cintelのフィルムスキャナーの技術を融合することで新しいCintel Scannerが実現できたとのことです。

Cintel Scanner 2の価格は税別3,408,000円。従来のフィルムスキャナーと比較すると約1/10も導入コストを低くしているのが特長です

テレシネの老舗「Cintel」とBlackmagic Designの技術を融合させたフィルムスキャナー誕生

フィルムスキャンを行うBlackmagic Designのショールームに、筆者、カメラマンの小林基己氏、チーフの小林英彦氏、カラリストの大田徹也氏のMV制作チームが集まり作業に立ち会わせて頂きました。Cintel Scanner 2の機能についても話を聞くことができましたので、その内容を紹介します。

大田氏:Cintel Scannerを見させて頂いて最初に気になったのは設置場所です。フィルムスキャナーは、温度管理や空気清浄を考慮した専用の部屋で使うのが一般的ですが、オープンスペースで稼働しているのですね。

石井氏:Cintel Scannerの光源の部分は、LEDを採用しており、従来のテレシネのランプよりも明るくなっています。また、熱を持たないLEDですので、熱対策を考慮したマシンルーム以外でも作業ができるというのも特長です。

Cintel Scannerは、従来のフィルムラボやポストプロダクションから、これまでフィルムスキャンを外部に委託していた企業のインハウス化で多くご導入を頂いておりまして、海外事例でもオープンスペースに置いて使って頂いている例を数多く紹介しています。

国内の某芸術系大学ではCintel Scannerをご導入頂いた後、フィルム撮影による制作が増えたとのことで、追加で導入頂きました。

デザイン製も特長で、これまでにないフィルムスキャナーのデザインを実現しています。ボディ自体は、60kgで従来のフィルムスキャナーに比べると大幅に軽いです。壁掛けで使っていただくことも可能です。

シンプルな操作性も特長です。これまでのフィルムスキャナーは、専用の技術者によるセッティングが必要でしたが、Cintel ScannerはDaVinci Resolveからコントロール可能で、誰でもすぐに使って頂けます。また、スキャンをしたらすぐに作業に入れるのも特長です。

ちなみに、国内では個人で購入頂いた方がいらっしゃいます。グレーディングをすると、暗部のディテールなど、従来のテレシネでは見えない部分が見えたりなど評価をいただいております。

Cintel Scanner 2に16mmネガフィルムを装填したところ。Cintel Scanner 2はネガとポジとインターネガ、インターポジ、16mmや35mmの2、3、4パーフォレーションに対応とのこと オレンジ色のものがパーティクルトランスファーローラー(PTR)。粘着質のあるゴムになっていて、ほこりを除去してスキャン可能だという Cintel Scannerのスキャンはシンプルで、LEDが光った瞬間に上のカメラで撮影します。走行速度とLEDの点滅、カメラのシャッターが連動して動作しているイメージとのこと

小林基己氏:Cintelはテレシネのメーカーという印象が強かったのですが、Cintel Scannerはフィルムスキャナーなのですね。

石井氏:Cintel Scannerはテレシネではなく、フィルムスキャナーです。Cintel Millenniumの光源部分はブラウン管でしたが、Cintel ScannerはLEDを採用しています。ただし、フィルムスキャナーになっても、これまでのCintelの画のトーンを踏襲しています。RAWデータでスキャンするので、DaVinci Resolveでグレーディグしていただければ、今までテレシネでは出せることができなかった暗部を出すことができます。

小林基己氏:テレシネの時代は、Cintel URSA GOLDというモデルがあって、その後、Cintel Millenniumが登場。ソニーも、テレシネ機を1機種だしていました。その頃は、イメージセンサーのラチチュードがないから、フィルムの広いダイナミックレンジの中のどこを取るかというのもDaVinciで操作して行っている感じでした。

石井氏:フィルムのテレシネには、結構立ち会われましたか?

小林基己氏:テレシネのときは必ず立ち会います。基本的に今のカラコレの作業をするのと同じ作業です。フィルムのIN点とOUT点を指定して、リアルタイムにその効果をかけて収録していきます。DaVinciはそういうものだと思っていました。

石井氏:その頃のDaVinci Resolveは、まだDaVinci 2Kの時代ですね。

Cintel Scanner 2を操作するBlackmagic Design石井氏 DaVinci Resolve Advanced Panelを操作するカラリスト大田徹也氏

ロスレス圧縮RAWフォーマット「Cintel RAW」をサポート

小林基己氏:Cintel ScannerがサポートするRAWは、Blackmagic DesignのURSAやPocket Cinema CameraでサポートしているBlackmagic Design RAWデータと同じものですか?

石井氏:Cintel RAWフォーマットというCintelオリジナルの12ビットRAWデータになります。

小林基己氏:DaVinci Resolveで扱うと、処理は重たい感じですか?

石井氏:Blackmagic Design RAWよりは重いです。以前、弊社がカメラで採用していたCINEMA DNGにデータサイズは近いです。

ちなみに、これまでのCintel RAWは3:2に圧縮していまして、可逆圧縮でした。DaVinci Resolveで読み込んだ場合は非圧縮と同じ状況になりますが、バージョンアップで圧縮にも対応しました。オプションで選択可能な「CintelRaw 3:1」は、3:1圧縮になります。ファイルサイズの運用で、どちらか選んでいただくとよいでしょう。

小林英彦氏:Cintel RAWは、DaVinci ResolveのStudio版のみ対応ですか?無償でも読めますますか?

石井氏:無償版でも読むことはできます。

大田氏:Cintel RAWは、フィルム撮影時に大きく沈んで撮ったり、オーバー目に撮ってしまったときでも、データは戻ってきますか?

石井氏:Cintel RAWは、カメラの映像と一緒で、そのスペックが持っている分でしたらば、ある程度は戻ってきます。

大田氏:例えば、一番最初のフィルムスキャンでチャート合わせると、雲のようなディテールは消えてしまっています。RAWでしたら戻ってきますか?それとも、その都度、スキャンの時点で収まるような設定が推奨でしょうか?

石井氏:基本は収まるようにですね。なので、スキャンをしていくと、「自動ブラック・ホワイト無効」というのが出てきたりします。一回取り直したほうがいいのではないか?という場合は、一回止めていただいて、そこでもう一回、自動ブラック、自動ホワイトを取り直すというのが、いいかなと思います。

フィルム撮影ではリファレンスとなるチャート(グレーカードプラスなど)を撮影します

16mmフィルムのスキャニングは2Kの解像度に対応

小林基己氏:Cintel Scanner 2はどのような解像度でスキャンができますか?

石井氏:フィルムの全体を4,096×3,072というイメージセンサーが持っているフルサイズでスキャンして、あとでお客様の目的のサイズに切り出して使って頂く形になります。35mmフィルムは3,840ピクセルの4K相当、16mmフィルムは1,930ピクセルの2K相当になります。

小林基己氏:16mmの部分だけを切り出すと、約2K相当になるということですね。

石井氏:16mmフィルムを4Kでスキャンしたいというお話を頂くのですが、Cintel Scannerでは2K相当でスキャンが可能です。4Kにしたい場合は、DaVinci Resolvには解像度を補完するような超解像の技術があるので、そちらで対応する方法を提案しています。

Cintel Scanner 2はフィルム全体をスキャンして、後で16mmの画面サイズだけを切り出します

小林基己氏:画面サイズのみをトリミングした状態で取り込むということはしないのですね。

石井氏:対応しません。RAWデータは、基本的にイメージセンサーの情報をそのまま読み出して記録します。

あと、Cintel Scannerは、ソフトウェアアップデートでHDR(ハイダイナミックレンジ)スキャンのサポートを追加しました。iPhoneのHDR撮影みたいな形で、アンダーとオーバーの状態でスキャンを行い、1枚に合成してダイナミックレンジを稼ぐことが可能です。2個のデータは、DaVinci Resolve上で自動的にHDRとして1本の映像になります。

小林基己氏:2パスのHDRスキャンは、Blackmagic DesignのURSAなどのカメラのRAWデータと比較して、幅が広いですか?それともそれと変わらないぐらいですか?

石井氏:2パススキャンは、2回取ることによって最高で2ステップぐらい上がります。ただし、フィルム、露光、現像条件によって効果が変わってきます。あまり効果のでないフィルムもあれば、大きくストップ数があがるフィルムもあります。

ポジフィルムでテストしたユーザー様によれば、暗部のノイズ感みたいなものは減ったと報告された方もいらっしゃいました。

大田氏:2パス目のスキャンで、画像のズレって起こることはありませんか?

石井氏:いまのところは起きていません。

大田氏:いやらしい話になりますが、スタビライゼーション機能を外した状態でHDRスキャンしてもずれないですか?

石井氏:ずれないと思います。スタビライゼーション機能も、基本的にはフレームを分析しています。だから、スタビライゼーション機能をオフにしても、2パススキャンでも位置は解析していると思います。

大田氏:HDRは、スキャン時間が倍になると考えてよいでしょうか?

石井氏:巻き戻してスキャンするので時間がかかります。しかし、情報量は豊富です。

酒井氏:Cintel Scanner本体にはHDMI出力がありまして、モニターで確認をすることが可能ですが、HDMIのプレビューにLUTみたいなのありますか?

石井氏:当てられません。ただし、ネガポジ変換はかかります。LUTを当てるのであれば、弊社のTeranex Miniを買っていただいて、そこにLUTを仕込んでいただくという方法をご提案できます。Video Assistでもできます。

小林英彦氏:モニターで確認できる画面を、パソコンからSDI出力できますか?

石井氏:出力はCintel Scanner本体のHDMIのみです。

左から、カラリスト大田氏、筆者、Blackmagic Design石井氏

100フィートならば3万円以内で現像とデジタル化が可能

最後に、集まって頂いたスタッフにフィルム撮影やCintel Scanner 2の感想を語って頂きました。4回に渡って紹介しましたネガフィルムを使ったMV現場レポートの締めくくりとして紹介します。

■小林基己氏の感想

フィルムを映像として見られるのは、フィルムスキャンが上がったこの段階になってからです。ハイライトとかもっと飛んで情報が無いかなとかと思っていたのですが、暗部から明るいところにかけてぜんぜん収まっている。まったくやらかしちゃっている感がありませんでした。もっとフィルムはドキドキするものだと思っていました(笑)。

ARRI ARRIFLEX 16SR2もだいぶ昔使ってクラシックカメラの印象があったのですが、思っていたよりも使い易かったです。

フィルム撮影の時代のカメラマンは撮影現場でちょっとしたカリスマ的な存在でした。しかし、今はみんなで撮影結果を即モニターで共有できて、いろんな人が意見を言える(笑)。カメラマンだけが画を管理する人ではなくなってかつてのカリスマ性は薄くなってきてますね。

私がフィルム撮影していた時でもビジコン無しの撮影は、殆どありませんでした。今回のMV撮影では、周りの人はモニターが無いため、スキャンした映像を見るまでどんな画郭で撮っているのかわからなかったと思います。

フィルムスキャンの結果は、想像以上に綺麗ですね。16mmのフィルム感が出なかったらどうしようと思うぐらいです。いわゆるRAWの画に近い。Logっぽい感じです。かなりラチュードもあるのですね。

ただ、皆さんが思っているフィルムのトーンというのは、ネガフィルムのスキャンよりもポジフィルムなのかなと思ってしまうところもありました。

■大田氏の感想

普通にフィルムスキャナーを導入しようとするならば、数千万円とかでは足りないような世界でした。そこからすると、Cintel Scannerは手軽にデジタル化を可能にしたのですけれども、同時に日本ではフィルム需要が減ってしまったのは悩ましいですね。

フィルムスキャナーはオープンスペースにおくようなものではないですが、Blackmagic Designはデザイン力があって、おしゃれ、コンパクトなので壁にかけて使いたいデザイン的な感じもします。温度管理ができてきちんと空気清浄を取れているところで扱う分にはいいじゃないかなと思います。

フィルム撮影はなかなか敷居が高いですが、過去のフィルムの資産を持っているとことも多いと思います。アーカイブ資産をもっている現場で、フィルムのデジタル化には有用な機材ではないかと思います。

■筆者の感想

Cintel Scanner 2は、従来のフィルムスキャナーと比較すると桁が1つ違いますね。ただ、Cintel Scanner 2は、画止まりに差があるのは確かです。私が思うには、画止まりの機構のために何千万かけるよりも、少し動いても良いから約300万円でスタビライゼーション機能を使って画止まりを実現してくれたのは大歓迎です。

フィルム撮影は高いと思われるかもしれませんが、16mmネガフィルムの100フィートに限定すれば、フィルム代が約7,500円、現像代が約1万円、スキャン代が約1万円。合計3万円以内で100フィートのデジタル化までいけます。改めて今回の16mmフィルムの画は本当にキレイな仕上がりでした。また、作品上、思い出やノスタルジックさを強調して表現する際には、8mmフィルムが粒子が荒い特性もあり、その選択も良いかなと思います。


Vol.03 [Film Shooting Rhapsody] Vol.01
[Film Shooting Rhapsody:メイキングストーリー編]Vol.04 16mmネガフィルムをCintel Scanner 2でデジタル化