航空会社たるANAが、ロボットを開発し、アート展を鑑賞する実験を実施……なにが起きているのでしょうか。同社が提案する「新しい移動手段」の実証とのことですが、そこには肉体をともなわない、新しい「移動」のカタチがありました。

ANAがロボットでお花見…どういうこと?

ANA HD(ホールディングス)が2020年2月17日(月)から28日(金)まで、日本橋三井ホール(東京都中央区)にて、同社が手掛けるアバターロボット「ニューミー(newme)」でアート展を鑑賞するという、実証実験を行います。これに先駆け17日の営業開始前に、報道陣にその様子が公開されました。

アバター」とは「化身」といった意味で、たとえば仮想空間における、操作者の分身たるキャラクターのことなどを意味する言葉です。

ANA HDが開発した「ニューミー」は、カメラヤマイクといった装備はもちろん、衝突防止センサーや首振り機能などを備えた、折りたたみも可能な「コミュニケーションアバターロボット」といい、遠隔操作するロボットが受け取った感覚を操縦者にフィードバックして、操縦者はその「感覚」を疑似体験できるとしています。パソコンを経由して遠くにいる相手と「テレビ電話」のように話すことも可能です。

ANA HDはアバターロボットを、「体の移動をともなわずとも意識をその土地に移動できる『新しい移動手段』」として考えているといい、「ニューミー」はその先駆けと位置付けているそうです。

ANAのアバターロボット越しに「疑似体験」するのは「日本一早いお花見」

この「ニューミー」を用いた実証実験は、映像製作会社のネイキッド東京都渋谷区)が企画、演出、制作を務める、花がテーマの体感アート展「FLOWERS BY NAKED 2020 ー桜ー」にて実施されます。同展は今回が5回目の開催で、プロジェクションマッピングなどの映像技術と、オブジェ、生け花、音楽などを交えて五感で楽しめるものといい、「日本一早いお花見」をうたっています。

「この遠隔体験で、これまでイベントに参加できなかったお客様が参加できます。今回の実験は、いわばリアルとバーチャルの融合で、技術が進歩すると、これらの境目がどんどんなくなっていくでしょう。これが新しいエンターテインメントの可能性を開いていくと思います」(ネイキッド 済田 篤さん)

ANA HDは2019年12月に、先述の「ニューミー」を用いた世界初というアバター専用ギフトショップを、今回の会場にほど近い「コレド室町3」に期間限定でオープンしています。この日本橋エリアにて同社は、三井不動産と共同でアバター導入を推進する「アバター都市実装共同事業」を展開しており、2020年内には、このエリアにアバター100体を配置する計画です。

ANA HDの、アバターによる体感型アート展鑑賞実証実験の様子(2020年2月17日、乗りものニュース編集部撮影)。