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 人は自分が信じたいものしか信じない。どんなに科学的根拠を積み上げて説得しても、信念や偏見の前では無力であることが、これまでの研究で明らかとなっているが、新たなる研究ではそれが裏付けられる形となった。

 『Human Communication Research』に掲載された論文によると、我々は、意見の分かれる話題を議論する時、自分が信じている考えを正当化するために、動かしがたい事実があるにもかかわらず、それを歪めて解釈し、自分に有利になるように記憶するという。

 さまざまな話題が人から人へ伝わっていく過程で、それぞれの偏見や主観が加わり、話の中の数字がすり替えられていくことが明らかになった。

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無意識に自分の考えが有利になるよう数字をすり替え

 米オハイオ大学の情報伝達学部が行った研究では、4つの議論の多い社会的話題をとりあげ、被験者たちにその統計的な数字を覚えているか、訊いてみた。

 すると人は、無意識のうちに意味もなく、その数字を自分の見解に合うように、頭の中ですり変えてしまうことがわかった。

 例えば、2007年から2014年の間に、アメリカの移民の数が110万人"減った"という事実を示しても、移民に反感をもっている被験者は、その事実を無意識のうちに歪めてしまう。

 2007年は1,280万人、2014年は1,170万人という数字をちゃんと示しているにも関わらず、彼らは正反対の数字を記憶に留めているのだ。

 その結果、2007年よりも2014年のほうがメキシコ移民の数は増えていると、多くの人が思い込んでいるのだ。

人々は自分で、間違った情報を発生させているのです。それは外部の情報源ではなく、自らが生み出したものです

 オハイオ州立大学の情報伝達の助教授ジェイソンコロネル氏は言う。

誤った情報は偏見と共に広がっていく

 研究者たちは、こうした誤まった情報が、社会の中でどのように広まるのかを研究している。

 研究で被験者たちは、メキシコ移民の数について真実を聞かされた後で、2007年と2014年の移民の数について、自分が覚えていることを書かされた。

 こうした数字は、別の人に伝わり、またほかの人に広まっていき、さまざまな会話を通してその情報が伝わっていく。

 更にやっかいなのは、情報(数字)が第三者に伝われば伝わるほど、それを伝えた前の人がもつ偏見が情報と共に拡散されていくのだ。

 伝言ゲームのように、最初のほうは真実が伝わっているのに、後の段階ではいつの間にか誤まった情報になっていき、そちらのほうが真実として広がってしまうのは懸念すべきことだ。

問題は、誤った情報をあなたがシェアしているということなのです。自分の頭の中にある、いいかげんに覚えている情報をろくに精査しないでまわりに伝えることは慎みましょう。シェアするのなら、きちんと情報を確認してください。そうじゃないとあなた自身が間違った情報源になるだけです。(ジェイソンコロネル氏)

References:albawaba / theladders/ written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52287732.html
 

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