世界に宗教は無数に存在するが、それらの宗教は、おおざっぱに言って他界派と転生派のどちらかに分けられる。
他界派の代表はキリスト教イスラム教だ。黄泉の国を伝える神道も他界派と言っていいだろう。仏教の中では浄土教もその一つといえる。一方で転生派は原始仏教や禅宗、ヒンドゥー教などのインド思想が該当する。

他界派と転生派のそれぞれの信者数や規模は分かりかねるが、ラノベやアニメの世界では転生派が圧倒的に多い。「教えて!goo」でも「ラノベやコミック、アニメで異世界転生ものが急激に増えている気がするのですが」という質問が寄せられているが、今回はその理由について考えてみる。

■他界と転生は「人生が一度きりとするかしないか」の違い

誰に聞くべきか悩んだ結果、今回は心に残る家族葬というサービスを運営している葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。葬儀は、宗教によって形式やマナーが異なる。数多くの葬儀をこなしてきたとのことで何かしらのヒントが得られるかもしれない。

「他界派は人生一度きりという考え方の傾向があります。つまりかけがいのない人生だからこそ、その人生での行いをよくして『死後は天国へ』というのが伝統的な考え方です。一方で転生派は生まれ変わるという考え方を持っています。生前の行いを良くして『来世ではその魂をより進化させて生まれ変わろう』という考え方です」(葬儀アドバイザー)

他界派と転生派は相容れないのだろうか。

「人生を一度きりとするかしないかという考え方の違いがありますので、あまり交わりません」(葬儀アドバイザー)

■今と昔の異世界ものの違い

異世界転生ものの歴史は古いが、今と昔で大きく異なるのが、異世界から戻ろうとするか否かだろう。今も昔も異世界転生のきっかけはふとしたことだったが、昔はそこから現実に戻ろうとした。しかし今は戻ろうとしない。なぜなら今の異世界転生ものは、異世界での生活のほうが快適だったり、強力な能力を持っていたり、なぜか非モテがモテになっていたりするからだ。

「今と昔の異世界転生ものの違いと関係しているかどうかはわかりませんが、昔よりも若い方の信仰心が希薄化しているとは思います。神や仏を信じなければ、その神や仏が説く死後の世界についても考えることがあまりないでしょうから、そうなると面白いかどうか、都合が良いかどうかという基準で、自分だけのオンリーワンの死後の世界を考えるのかもしれません」(葬儀アドバイザー)

■社会の変化が若者の死生観を変え、それが原因で異世界転生ものがブームとなった?

失われた10年と呼ばれる1990年代以降の日本は、若者を中心に所得が減少し続けてきた。労働運動や市民運動は低調で、生活レベルは上がる気配すら無く、社会そのものは変えられないという諦念がこびりついてしまった。しかも少子高齢化や年金制度の破綻がそれらに追い討ちをかけ、格差は広がり、固定化される一方だ。

このような状態で明日という未来に希望を感じろという方が無理である。それ故、せめて自分の好きなことや憧れていることだけに囲まれて生きていきたいと願うのも無理はない。つまりそういった社会環境による若者の死生観の変化が、異世界転生もののブームを支えているといっても決して的外れではないだろう。

●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。

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教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

ラノベやアニメで異世界転生ものが増えている理由を考えたら至極当然なことだった