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 アメリカでは一部地域でハイイロオオカミタイリクオオカミ)が絶滅危惧種に指定されており、人間の手によって繁殖させようとする「狼の再導入」が行われている

 そんな中、悲劇がカリフォルニア州で起こった。1匹のハイイロオオカミが群れから離れてしまい、必死に仲間を探していた途中で、死亡しているのが発見されたのだ。

 この狼は8712マイル(約14020km)もの距離をたった1匹で歩き回り、最後に孤独な死を迎えたようだ。

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The mystery of the celebrated Shasta wolf pack that vanished from California

2018年1月、群れから外れたメスのハイイロオオカミ

 カリフォルニア州魚類野生生物局(California Department of Fish and Wildlife CDFW)は、2017年10月にハイイロオオカミの個体数を調査していた生物学者により追跡調査用の首輪をつけられたOR-54と呼ばれるメスのハイイロオオカミが、今年2月5日カリフォルニア州シャスタ郡で死骸になっているのを発見されたことを明かした。

 OR-54は、2016年にオレゴン州で生まれ、推定年齢3~4歳とされている。

 OR-54の父親でOR-7と呼ばれていたハイイロオオカミは、90年ぶりの2011年にカリフォルニア州で最初に確認された野生のハイイロオオカミで、初めてその地に戻って繁殖を続けた貴重な1頭とされてきた。

 カリフォルニア州の土地が、一旦絶滅しかけたハイイロオオカミの個体数に希望を与えたことで、専門家らはOR-54にも繁殖の期待を抱いていた。

 現在、カリフォルニア州で確認されている限りでは、ハイイロオオカミは12頭にも満たないからだ。

 しかし、OR-54は群れから外れてしまった。2018年2月にCDFWは「OR-54は、繁殖相手もしくは他の群れを探し、新たな土地を旅していると思われます」と声明を発表していた。

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USO/iStock

孤独に14000km以上を旅し続けたOR-54


 OR-54は、その後オレゴン州やネバダ州を旅し、ほとんどの時間をカリフォルニア州北東部で過ごしていたとみられている。

 CDFWによると、2019年10月~12月の2か月間だけで、OR-54は1013マイル(約1630km)を移動。つまり1日平均13マイル(約21km)の距離を歩き続けていたことがわかったという。

 これらの情報は、OR-54が装着していた追跡用の首輪から判明した。しかし、2019年12月には追跡装置が作動しなくなったとみえて、記録はその直前で止まっていた。

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Jean Landry/iStock

繁殖が期待されていた矢先の悲劇


 2月5日に死骸となって発見されたOR-54が、なぜ元の群れから外れたのかは明らかではない。また、旅の途中で繁殖相手を見つけたのかどうかも不明である。

 OR-54は自然死だったのか、もしくは誰かによって意図的に殺害されたのか、調査が行われているという。

 もともと、ハイイロオオカミは家畜を襲うことから、人間の手によって駆除され続けて来た。しかしその結果、アメリカでは一部地域を除き絶滅危惧種に指定されることになり、現在は米連邦政府と州の絶滅危惧種法により保護されている。

 専門家らは「絶滅危惧種指定のハイイロオオカミが、このような死を迎えたことは、原因が何であれ非常に悲しく壊滅的だ」と語っている。

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RamiroMarquezPhotos/iStock

 いずれにしても仲間を求め、長距離をたった1頭で旅し続けたハイイロオオカミの最期は、あまりにも孤独なものだったようだ。

 なお調査の結果、OR-54が意図的に命を奪われたことが判明すれば、殺害した者には最長1年の禁固刑と罰金10万ドル(約1100万円)が科せられるということだ。

References:wildlifeなど / written by Scarlet / edited by parumo

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http://karapaia.com/archives/52287886.html
 

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