いよいよ東京2020オリンピックパラリンピック大会まであと半年。都内にいるとあらゆる駅が工事中、3月には約半世紀ぶりに山手線新駅「高輪ゲートウェイ駅」が開業します。

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 各地では事前合宿の受け入れも始まり、大会ボランティアは3月に配属が決まるなど、「おもてなし」の取組みも本格化します。

 春に予定されるチケットの追加販売を控えたいま、国民の関心や景気への影響を、株式会社ヴァリューズによる国内スマホユーザーの行動ログから探ってみます。

チケット販売以降の関心は一段落中

 直近2年間に「オリンピック」でキーワード検索したユーザーは、月次で見ると意外にも2018年2月の平昌冬季オリンピック期間が最多の397万人。東京2020チケット1次抽選販売期間の2019年5月がこれに続く349万人で、チケット販売期間を除くとまだ冷静な印象です。

パラリンピック」も同様に平昌パラリンピック期間の2018年3月、チケット1次販売の2019年8月の順でした。2018年9月~12月ボランティア受付も話題になりましたが、チケット販売期間ほどは検索ユーザーが増えていません。2019年はもっぱらチケット販売期間にユーザーが集中し、1次追加販売の8月、2次抽選販売の11月に利用が増えています。

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図表 :「オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーの推移(PC)
 ただ、年間でみると2018年は約1000万人に対し、2019年1370万人と1.4倍にユーザーが増え、じわじわ東京2020へ関心が高まっていることは間違いありません。パラリンピック2次抽選販売が行われた1月もおそらく検索ユーザーを増やしていることでしょう。

個人ブログも健闘。チケット入手の知恵

オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーが実際に閲覧したサイトは、予想通り「東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会サイト」(以下、公式サイト)関連が上位です。

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図表 :「オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーの上位流入サイト(PC、2019年1-12月ブルーは公式サイト関連、黄色はチケット関連、ピンクは個人ブログ、黄緑は動画)
 1位の公式サイトは検索ユーザーのうち55%が利用。2位チケットサイトからチケット購入に必要な11位のID登録サイト、12位JOC日本オリンピック委員会サイト、14位オフィシャルオンラインショップまで、上位15サイト中5サイトを占めました。

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チケット販売やID登録の入口である公式サイト
 3位「Wikipedia」や5位「朝日新聞」で情報収集したユーザー、8位「Olympic Channel」、10位「YouTube」の動画を閲覧したユーザーも多かったようですが、チケット抽選倍率の高さや公式サイトの使い勝手の影響か、意外なサイトも使われていました。

 4位「とくちゃんのお得にス・マイル|チケット情報」や7位「学生マイラーによる海外サッカーチケット攻略ブログ」は、チケット攻略コンテンツです。当選確率の高い申込み枚数やお勧め価格帯など、3次抽選へ向けた指南がいまも更新されています。

 個人ブログも2サイトが上位に。6位「応援.tokyo『○○したい!』あなたを応援」は「ボランティア参加は諦めましたが、私も何か東京オリンピックに関わってみたい!」と考えた主婦がチケット入手情報などを発信しています。

 同じく個人ブログ15位「情報科学屋さんを目指す人のメモ」は、エラー画面や認証がうまくいかないなど多々報道もされた公式サイトでのトラブル対処法を伝授。14位オフィシャルオンラインショップに迫る15.6万ユーザーが利用していて、それだけ操作に困ったユーザーが多かったということかもしれません。

オリンピックへの関心にも男女差が

 併用検索キーワードから見ると、昨年1年間に「オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーの関心は、チケット関連に集中。「申し込み」「予約」「購入」「発表」「抽選結果」のほか、購入に必要な「ID」「登録」「ログイン」で検索したユーザーもいました。

 チケット以外だと、男性は50代で「マラソン」、40歳前後だと「野球」「サッカー」「バスケ」と個別種目に関心が高まりました。ほかに「スタジアム」や「会場」にも興味があるようです。

 40代前半「ボランティア」や50代「聖火ランナー」など、参加意識が垣間見えるキーワードを使っていたのは女性でした。また、パラリンピックについて調べたのは40代女性が中心です。

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図表 :「オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーの併用キーワード(2019年1-12月、PC)
 2018年に同じオリパラ関連の検索キーワードを使ったユーザーの併用キーワード平昌オリンピックパラリンピックが中心。種目キーワード2018年は冬季種目の「フィギュア」「カーリング」が目立っていました。

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図表:「オリンピック」「パラリンピック」「オリパラ」で検索したユーザーの併用キーワード(2018年1月-12月、PC)
オリンピック」に次いで多く使われた「東京オリンピック」で検索したユーザー2018年の89.8万人から2019年293万人に3.3倍も増え、昨年1年間で関心が東京にシフトしたことを確認できます。

公式サイトもチケット販売に集中

 公式サイト及びチケットは、2018年にのべ574.6万人だったユーザー2019年はのべ3359.6万人と、5.8倍に急増。キーワード検索ユーザー同様、1次抽選販売申込期間がこれまでのところのピークで、911万人が利用しています。

 抽選結果が公表された6月も516万人が利用。その後1次の追加販売が行われた8月、2次抽選販売の11月はやはり利用が増加しました。

 チケット販売期間以外だと2019年9月~10月12月は利用が減るものの、2018年に比べると関心は高まっていることがわかります2018年は大会ボランティア応募受付期間9月~12月に利用が増えました。

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図表:公式サイトユーザー数と1人あたりページビュー(PC+スマートフォン)
TOKYO 2020 ID」はチケット購入に必要なID、「My TOKYO 2020」はID登録後のポータル。公式サイトTOKYO 2020 ID」とチケット販売サイトは販売期間にわかりやすく利用が増える一方で、「My TOKYO 2020」はピークの5月でも300万人程度と比較的利用が少ないようです。

ショップやMyページは伸び悩み

 プレイベントで提示すると特典がもらえる「TOKYO 2020 PASS」やおすすめグッズなどのコンテンツを提供していますが、まだ対応プレイベント自体が少ない(1月時点では2つ)せいでしょうか。オフィシャルオンラインショップはさらにユーザーが少なく、ピークの2019年5月でも100万人に届きませんでした。

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My TOKYO 2020やオンラインショップは比較的ユーザーが少ない
 男女別だとやや男性ユーザーの方が女性を上回りますが、大きな差異や変化は見られません。男性は2018年の6.1倍、女性は5.6倍公式サイトを利用しました。

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図表:公式サイトユーザー数推移(PC+スマートフォン、男女別)

経済効果は32兆円。8kテレビに商機?

 東京都2017年東京オリンピックパラリンピックによる2013年2030年の経済波及効果を32兆円(全国)と試算。開催地決定から開催までのインフラ整備や大会運営費、家計支出などの「直接的効果」5.2兆円と、インバウンド増、設備等の再利用、スポーツ振興や市民参加等による経済活性化といった「レガシー効果」27.1兆円が見込まれています。

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図表:東京都による2013-30年の経済波及効果(東京都「大会開催に伴う経済波及効果」より)
「直接的効果」の家計支出には、観戦や付随する旅費・飲食費などのほか、テレビや関連グッズスポンサー製品の販売などが期待されているわけですが、みなさんはご予定ありますか?

 8k放送による超高画質・超臨場感中継は東京2020の目玉のひとつで、対応テレビ普及を後押しするといわれるものの、この数年間テレビの国内販売台数は漸減傾向。ラグビーワールドカップの影響で2019年下期は増税後も堅調という説もありますが、思惑通り普及は進むのでしょうか。

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図表:テレビの販売台数と1台あたり平均単価(経済産業省生産動態統計調査より)
 ソニーBRAVIA」、シャープ「AQUOS」、パナソニックVIERA」、LG「SIGNATURE」といった主要なテレビブランドサイトユーザー数からは、いまのところ増税前の駆け込みもラグビーワールドカップの影響も感じられませんでした。

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図表:主要なテレビブランドサイトユーザー数と月次テレビ販売台数(PC+スマートフォンのログと生産動態統計調査より作成)
 ただ、「東京2020オリンピックパラリンピック公式テレビ」として自社製品購入者を対象にした観戦チケットプレゼントキャンペーンを実施したワールドワイドパートナーパナソニックキャンペーンサイトだけは、開始の2019年3月と結果発表の12月に利用が急増しました。現在は3月31日までの購入者を対象にした第2弾キャンペーンを実施中なので、この数か月では動きがあるかもしれません。

スポーツ・イベント好きはどう動く?

 観戦に多大な関心を寄せる公式サイトユーザーは「直接的効果」の主要な担い手といえます。公式サイトユーザーが併用していて、各サイトにおけるユーザーシェア(含有率)が高いサイトを確認してみましょう。

 公式サイトユーザーはやはりスポーツが大好き。対象期間中日本中をわかせた1位「日本ラグビーフットボール協会」サイトの30%、3位「JFA」や4位「Jリーグ」ではユーザーの22%を占め、とくにサッカーラグビーに関心がありそうです。おそらくこれら種目の観戦にも積極的と考えられます。7位埼玉県や17位横浜市自治体サイトが見られているのは、いずれもサッカー会場を擁する影響かもしれません。

 2位「RUNNET」はランナー向けに大会出場やラン記録管理、通販、走行距離に応じポイントが貯められるポータルサイト。自ら運動好きと見られ、グッズへの投資意欲も高そうな印象です。5位Visa東京2020オフィシャル決済テクノロジースポンサー。チケット決済手段を独占した結果、会員が増えたのかどうか気になるところです。

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図表:公式サイトユーザーの含有率上位サイト(PC、2019年10-12月ブルースポーツ関連、ピンクイベント・レジャー・グルメ、黄緑は公共機関。公式サイト関連を除く上位)
 そして注目は、6位イベント予約サイト「Peatix」、8位「TravelNote」、9位「Let’s Enjoy TOKYO」など、全般にイベント、レジャーやグルメ、旅行に関するサイトにおける公式サイトユーザー存在感です。

 想起されるのは、オリンピックパラリンピックラグビーサッカーといったゲーム観戦やランイベントをきっかけとして、積極的に周辺のレジャーやグルメ情報を探し、イベントを満喫するタイプ。消費増税対策のキャッシュレス還元施策が終わる6月以降も、公式サイトユーザーは景気を下支えしてくれるかもしれません。

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 2019年ラグビーワールドカップには40万人の訪日外国人客が訪れてゲーム観戦者は旅費・飲食費・観戦費などひとり平均38.5万円も消費してくれたそうで、キリンビールや英国パブ「HUB」「82」の売上にも大いに貢献しました。

 春の追加チケット販売の公表や代表選抜など、今後はプレイベントが続き、街の風景そしてテレワークなど大会運営に付随する施策を通じオリンピックパラリンピックを意識する機会も増えます。逆に混雑を避けて海外旅行を計画するひとも多く海外旅行代金は高騰しているようですが、それもまた経済効果といっていいでしょう。

 景気への影響も、ここからの半年間が本番なのかもしれません。まずは目先の新型コロナウィルス問題が一刻もはやく収束へ向かうことを祈るばかりです。

TEXT清水響子

【清水響子】

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している

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