2月の第1週、統一教会世界平和統一家庭連合)は韓国最大のコンベンションセンターにおいて「ワールドサミット2020(World Summit 2020)」と銘打った国際イベントを開催、聖地・清平に教団が所有する2万5千人収容のホールで教祖夫妻の生誕記念式典や合同結婚式などを開いた。

 これらの大規模教団イベントに、前国連事務総長や全世界から現職元職の国家首脳が集結、韓国の文在寅大統領、米トランプ大統領北朝鮮金正恩委員長が祝賀のメッセージを寄せた。日本からは政界を引退した元政治家が数人参列、元総理大臣安倍首相側近議員が式典後に韓鶴子総裁とともに北朝鮮を訪れる計画があったことも明らかとなった。

教団式典への祝賀メッセージ。米トランプ大統領(左上)、韓国・文在寅大統領(左下)、北朝鮮金正恩委員長(右)(PeaceTVより)

◆世界中のVVIP集結も新型コロナウイルス騒動で相次いだキャンセル
 今回、教団が行ったのは以下のイベントだ。

ワールドサミット2020(World Summit 2020)』、「世界平和頂上連合」(ISCP)設立大会、「世界平和議員連合」(IAPP)や「平和と開発のための宗教者協議会」(IAPD)、国際平和経済開発協会(IAED)、国際平和学術協会(IAAP)などの各分化会、世界平和青年学生連合(IYSP)総会(2/3~4)、『韓鶴子自叙伝出版記念式典』(2/4)、『鮮鶴平和賞受賞式』(2/5)以上、会場はKINTEX。

『文鮮明教祖生誕100周年・韓鶴子総裁生誕77周年・真の父母成婚60周年式典』(2/6)『国際合同祝福式(2/7)』以上、会場は清心平和ワールドセンター

 教団はこれらのイベントに全世界からVVIPが参加するとしていたものの、新型コロナウイルスの影響で参加予定だったアフリカ主要各国の首脳が訪韓をキャンセルし、現役の国家首脳の参加はカンボジアやツバル王国といった数国のみ。VVIPとして参加が確認できたのは以下の現職元職の国家首脳。

潘基文(前国連事務総長)
ニュート・ギングリッチ(共和党 アメリカ、元下院議長)
フン・セン(カンボジア首相)
ジミー・モラレス(グアテマラ前大統領
デーヴェー・ガウダ(インド元首相)
ヘンリー・バンティオミャンマー大統領
ブリジ・ラフィニ(ニジェール共和国〈大統領制〉の首相(首相は内政担当)
レニー・ロブレト(フィリピン大統領
ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ(ポルトガル元首相、欧州連合元欧州委員会委員長
李柱栄(国会副議長・韓国)
グッドラック・ジョナサン(ナイジェリア元大統領
スティーブン・ハーパー(カナダ元首相)
フェリペ・ゴンサレススペイン元首相)
ドミニク・ドビルパンフランス元首相)
カール・ビルト(スウェーデン元首相)
エンダ・ケニーアイルランド元首相)
エンリコ・レッタ(イタリア元首相)
オセアニア、ツバル(大統領夫妻)

 その他にブルキファナソ、ハイチネパール、ニカラグア、パキスタンパキスタンの現職元職の国家首脳が紹介された。

 第4回鮮鶴平和賞受賞式ではセネガルマッキー・サル大統領らが受賞、潘基文前国連事務総長には創設者特別賞が授与された。

北朝鮮金正恩委員長と米トランプ大統領文在寅大統領から祝賀メッセージ
 今回の式典では米韓及び北朝鮮首脳と教団との緊密ぶりも顕示された。世界日報創刊30周年式典では韓国の文在寅大統領からの祝賀映像が流され、教祖夫妻の生誕式典においては、アメリカドナルド・トランプ大統領夫妻からの祝賀メッセージが読み上げられ、ディック・チェイニー米元副大統領によるビデオメッセージも上映された。

 同式典では1月30日北朝鮮金正恩委員長から委任を受けた金英哲副委員長による祝賀メッセージが紹介、「男性の象徴バラ100本と女性の象徴百合77本」で拵えた花輪が披露された。司会を務めた尹鍈鎬(ユン・ヨンホ)世界宣教本部事務総長兼総裁秘書室副室長は平壌での平和サミット開催に言及した。
 現在の教団の覇権を握る総裁秘書室において鄭元周(チョンウォンジュ)総裁秘書室長とヘゲモニー争いを繰り広げる尹鍈鎬は、韓鶴子の養子として韓尹鍈(ハン・ユンホ)となる計画を立てているとされる。

◆晩節を汚す日本の元政治家たち
 
 では日本からは誰がVVIPとしてこれらの教団イベントに参加したのか。
 World Summit 2020の「世界平和頂上連合」(ISCP=International Summit Council for Peace)の総会には伊達忠一前参院議長が出席したものの、壇上からスピーチを行った際に韓鶴子を「真(まこと)の母」と呼称すべき箇所で「しんの母」と読んでしまう失態。鮮鶴平和賞受賞式と成婚式典には大野功統元防衛庁長官が参列、韓鶴子総裁の自叙伝発刊記念式典では柳本卓治前参議院議員が同自叙伝日本版の贈呈式を行った。

 この3人の自民党出身教団御用達元政治家に加え、今回は新顔として成婚式典に民主党小沢グループ武山百合子元衆議員議員(国際親善交流協会Friends Global理事長)が登場、梶栗正義国際勝共連合会長・UPF会長とともに「真の父母」への供物を納めた。 

 韓鶴子の自叙伝『人類の涙を拭う平和の母』は本来であれば昨年11月に発刊予定だったが、記述内容が気に入らなかった韓鶴子が“自叙伝”の書き直しを命じたため発刊が遅れたという。

韓鶴子詣でに勤しむ元政治家たち。伊達忠一前参院議長(左上)、柳本卓治元参院議員(右上)、大野功統元長官(左下)、武山百合子元衆院議員(右下)(PeaceTVより)

◆日米元首脳が韓国での式典に参加予定?
 今回の一連の式典には参加を取りやめた”大物”の存在も噂されていた。関係筋によると、アメリカからジョージ・W・ブッシュ大統領、日本から福田康夫総理大臣が来賓として出席することが教団内部で伝わっていたという。

 1974年5月に文鮮明教祖が東京・帝国ホテルで開いた『希望の日晩餐会』では安倍晋三の祖父・岸信介元首相が名誉実行委員長を務め、安倍晋三の父親・安倍晋太郎や当時大蔵大臣だった福田赳夫ら40人の自民党国会議員が来賓として出席した。福田はスピーチで「アジアは今、偉大な指導者 を得ることができました。その指導者こそ、そこにおられる文鮮明先生です」と発言。
 ジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領夫妻1995年9月に、世界平和女性連合(WFWP)が東京ドームで開いた創設3周年大会でスピーチを行うなど、教団と緊密だった。共に父親が教団と関係が深かった福田康夫元総理とジョージ・W・ブッシュ大統領。両者が今回の韓国での教団イベントに参加予定との情報は果たして事実だったのか。

 他に日本からは北村経夫参議院議員の式典参加が予定されていたとされる。北村議員は本連載の第1回で触れたように安倍首相が直々に統一教会へ後援を依頼して同教団の組織票8万票の上乗せによって当選した政治家だ。

◆元首相と安倍首相側近が韓鶴子と訪朝計画?
 さらに一連の韓国での教団イベント終了後には、福田康夫元総理と北村議員をはじめ各国のVVIPを引き連れた韓鶴子総裁が北朝鮮を訪問し金正恩委員長と会談することが計画されていたという。
 ところが新型コロナウイルスの影響北朝鮮外国人の訪朝を禁じたことにより北京~平壌の航空機ルートが閉鎖、韓鶴子一行の北朝鮮訪問は取りやめになった。そのこととの関連は不明だが、福田元総理と北村議員は訪韓自体行っていない模様で、一連の式典の中継映像でもその姿を確認することはできなかった

 ジョージ・W・ブッシュ大統領についても、父親の第41代アメリカ合衆国大統領ジョージ・H・W・ブッシュが前述の通り、教団の御用達だったことから統一教会イベントへの出席予定があっても不自然ではないが、ジョージ・W・ブッシュ大統領が訪朝するとは考えにくい。アメリカ合衆国大統領時代の2002年1月29日に行った一般教書演説で、ジョージ・W・ブッシュイランイラクとともに北朝鮮を「悪の枢軸」と非難していたからだ。

 では福田元総理と北村経夫議員による訪韓及び訪朝の予定はあったのか?
 300億円から100億円に減額された昨年の日本からの“献金ノルマ”が達成できず、馘首(クビ)の対象だった日本の徳野英治会長は、福田元総理と北村議員を“ブッキング”した成果で降格の危機を免れたとされる。

 福田元総理と北村議員の事務所に質問書を送ったところ、福田康夫事務所からは即日回答があり、福田元総理本人の弁として「全く聞いたことがない」と関係を全面否定。事務所も「問い合わせを受けたことは一度もございません」と教団サイドからの接触自体を否定した。北村事務所からは期限までに回答は得られなかったが、電話で照会した際、秘書が「北村は日程がびっしり詰まっていたので、日本におりました」と話している。

 本連載で報じたように、北朝鮮金正恩委員長から韓鶴子総裁へは昨年の時点で既に招待状が届いており、今年1月、韓国の複数メディアは韓鶴子総裁が世界平和国会議員連合IAPPの100人の各国国会議員を連れて北朝鮮を訪問する計画の存在を改めて報じていた。
〈参照:安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第14回>|HBOL国会議員の“統一教会”イベントへの出席に、弁護士団体が再び要望書。取りやめた議員はいたか?<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第19回>|HBOL

 今回は“流れた”韓鶴子訪朝団、次回計画時に日本から誰が同行するのか。悪化する日朝関係の”懸け橋”として、「安倍晋三首相―金正恩委員長」会談を統一教会がお膳立てする可能性もある。(文中敬省略)

<取材・文/鈴木エイトジャーナリスト)>

【鈴木エイト
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

教団式典への祝賀メッセージ。米トランプ大統領(左上)、韓国・文在寅大統領(左下)、北朝鮮・金正恩委員長(右)(PeaceTVより)