日本語動画が削除されたので、BBC版に差し替えました。コロナウイルス が蔓延するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。2020年2月18日に本船に入った神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎医師が投稿した動画が話題になっています。
結論から言えば、岩田医師は一日で追い出されてしまいました。岩田医師には、元々ダイヤモンド・プリンセスの感染者が増えていくのを見聞きしていて、感染症対策がうまくいっていないのではないかという懸念があったといいます。
岩田医師の元には、ダイヤモンド・プリンセスの内にいる人から「怖い」といういくつかの助けを求めるメッセージが送られて来ていました。
そこで岩田医師は様々な伝手を使って、2月18日に船内に入ることになります。そこで見た感染症対策はあまりに酷いものでした。
アフリカのエボラや、中国のSARSなど色々な感染症に立ち向かって来た岩田医師ですが、これまで自分が感染する恐怖は感じたことが無いと言います。なぜなら、自分や他人がエボラやSARSに罹らないようにする方法や、施設をどのようにすれば施設内で感染が広がらないかは熟知しているから。
しかし、ダイヤモンド・プリンセスの中は心の底から怖いと思ったといいます。これは自分が感染してもしょうがないんじゃないかと本気で思うほどだったということ。
感染症対策の鉄則として、ウイルスがいるかもしれない危ないレッドゾーンと、ウイルスが全くいないグリーンゾーンに分けるのが常識です。レッドゾーンではPPEという防護服を付け、グリーンゾーンでは何もしなくて良いときちっと区別することでウイルスから身を守るのが鉄則です。
しかし、ダイヤモンド・プリンセスの中はレッドもグリーンもぐちゃぐちゃで、どこが危なくてどこが安全なのか全く区別がつかないといいます。ウイルスは目に見えないため、しっかりとした区分けが大切になりますが、ダイヤモンド・プリンセスではどこの手すりやどこの絨毯が危ないのかの区別が分からないまま、防護服を付けている人もいればマスクだけの人もいたり混在してしまっています。
岩田医師は中で働く人から「いやー、我々も新型コロナ感染ってしまうかもなぁ」と話しているのを聞いて驚いたといいます。通常、医療従事者の身を守るのは大前提で、自分たちの感染のリスクをほったらかしにして患者さんや一般の方々に立ち向かうのはルール違反。環境感染学会が船に入って数日で出て行った気持ちもよくわかるといいます。なぜなら、感染症のプロだったらあの環境にいたら怖くてたまらないから。
驚くべきことに、岩田医師はダイヤモンド・プリンセスに入ってしまった自分が感染した可能性を考慮し、診療を休んで家族とも合わずに自らを部屋に隔離しているといいます。
レッドゾーンとグリーンゾーンが分けられていないと、防護服やマスクや手袋があったとしても、何の意味もないといいます。
自らの安全が保証できない時に他の人の安全は守れない。
船内には常駐のプロの感染症対策医はおらず、時々やってくる感染症対策医もいるが、仕切っているのは厚生労働省の官僚で、意見を聞いてもらえないということ。岩田医師も厚労省のトップの人に話をしたものの、ものすごく嫌な顔をされ聞く耳を持つ気がないとのこと。「何でお前こんなとこいるんだ」と非常に冷たい態度を取られたといいます。
岩田医師は夕方の会議で提言することになっていましたが、「厚生省の上の人でお前の言動にとてもムカついている人がいる」ということで、会議に出られなくなってしまいました。
ダイヤモンド・プリンセス内の医療従事者も感染のリスクが大きい状態にいます。それを防ぐこともできますが、その方法すら知らされずに自分たちをリスク下に置いているという状態。
さらに、医療従事者たちは帰ると自分たちの病院で仕事をするので、今度はそこから院内感染が拡大してしまいかねない状況です。
これはアフリカや中国と比べても酷い感染対策。
岩田医師はまさかここまで酷いとは思いもしなかったといいます。
さらに岩田医師は海外の国際学会などから日本に提言を促して貰えるように英語版の動画も公開、「これほどまでに酷いとは思わなかった」などの声が寄せられています。
2003年のSARSの時に中国に行っていた岩田医師。その時ですらもう少しまともな情報が入っており、ダイヤモンド・プリンセスよりも遥かに楽だったといいます。
中国が今回の武漢でどれだけ透明な情報公開をしているかは分かりませんが、ダイヤモンド・プリンセスにおける日本の情報公開はほとんど何もないような状態だといいます。
今回のダイヤモンド・プリンセスはまずい対応であったことは間違いありませんが、それを隠せばもっと恥ずかしいことになるといいます。
船内で働く人たちの言動を見ると、「赤信号 皆で渡れば 怖くない」ならぬ、「新コロナ 皆で罹れば 怖くない」のような状態に感じます。岩田医師には内情を説明した動画を公開してくれて感謝します。
【2020/2/18 11:35 追記】
岩田医師のこの動画を見た厚生労働副大臣でクルーズ船対応の責任者の橋本岳さん(橋本龍太郎元首相の次男)がTwitterで下記のようなツイートを投稿し物議を醸しています。
お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません。
— はしもとがく(橋本岳) (@ga9_h) February 19, 2020
この投稿には、
なぜ、ただ事ではなくなっている感染症蔓延地域に感染症専門家が存在せずの状態で対応しているのか全く理解できないです。明解な説明をお願いします。
— Can’t survive (@wtksk) February 19, 2020
えーと。現場に感染のプロがいないとか安全地帯を作ってないほうが驚愕なんだけど。
検疫官が感染して、稀にみるウイルスの培養所になったの事実だよ。(たしかに外国籍の船舶ってのは?だけど)今の現場の責任者といっしょに会見やるべき。それで任せられるかは国民が決める。
— HAYATO (@HayatoKagura) February 19, 2020
あのー、驚きを禁じ得ないのは、船内がカオスになって、思いっきりフルスイングの人災になってるのに、いまだにメンツを必死で守ろうとしている、あなたのツイートの方です。
あなたが今日現場に岩田さん他専門家を連れて行きなさいよ。
仕事ちゃんとしなさいよ。— フラットマン (@flatman1031) February 19, 2020
あれだけ船内で感染が拡がり、そればかりか医師や役人にも感染したということは、船内での隔離作業が失敗していることに他なりません。
乗客・乗員の生命を考えるのなら感染症の専門家の指摘を真摯に受け止めるべきではないですか?
もう手遅れかもしれませんが。— きんどうさん (@senjyunsan) February 19, 2020
など驚きのコメントが寄せられています。
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